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まもなくゴールデンWEEK

「黄金週間」と言わずに「ゴールデン・ウィーク」というのが一般的ですが、我が国独自のものというところから察せられるように、これは和製英語です。

Witionaryという辞書サイトでweekを引くと、「derived termsこれに由来する表現」の項に「Golden Week」が載っていて、日本語からの借用であると明記されています。

「Borrowed from Japanese ゴールデンウィーク (Gōruden Wīku), equivalent to golden +‎ week.
(日本語「ゴールデンウィーク」から借用され、「金の」+「週」に相当する)」

今回はweekを出発点として話を進めていきましょう。

英語week

始まり・終わりが固定されている「週」

日曜日、あるいは月曜日始まりでもいいですが、そこからの7日のまとまりであり、例えば「4月の第1週」などと言うときの「週」です。

「He will leave in the first week of April.
彼は 4 月の第 1 週に出発するだろう
What day of the week is it (today)?
=What is the day of the week?
きょうは何曜日ですか」
(研究社新英和中辞典)

「Now that their children have grown up she joins Paddy in London every other week.
(彼らの子供達が大人になったので、彼女はパディにロンドンで隔週で会っている)」
(Collins COBUILD Advanced Learner’s Dictionary)

任意の日から7日間

どの曜日であるかに関わらず、そこから7日間もやはりa weekです。

「Most books are available to be borrowed for one week and will renew automatically on the library system each night, if not required by another borrower.(中略)
Items that are required by other library users will stop renewing and you will receive an email requesting you return it within a week(後略).
(大部分の書籍は1週間貸出ということで利用可能であり、図書館システム上で毎夜自動的に期間延長されます。(中略)
他の図書館利用者からリクエストがあった品目は期間延長が停止され、あなたは、1週間以内にそれを返却するように要請する電子メールを受け取ることになります(後略)。」
University of Birminghamのサイトより)

人が図書館から本を借りる日は日曜日(あるいは月曜日)に決まっているわけではもちろんなく、「1週間以内」に返すのも起算の日は決まった曜日であるはずはありません。

ですから、ここでのweekは先程の「固定されている週」ではありません。

7日ではないweek

「固定されている週」7日間の内、「就業日」「稼働日」、あるいは「平日」は一般的に5日であることが多いと思いますが、その5日でweekと言ってしまう場合のことです。

「I have no time to spare during the week.
週日は全然暇がない」
(研究社新英和中辞典)

つまり、weekdayと言う時の感覚です。

「週日,平日,ウィークデー
(◆日曜日以外の6日間をさす場合と,土・日曜日以外の5日間をさす場合がある);
〔~s;副詞的に〕((米))平日に,ウィークデーに
open weekdays
(店などを)ウィークデーに開く」

催しなど、何か特徴のある「週間」

「ゴールデン・ウィーク」などと言う時の「週間」ということになります。

「Easter week
イースター週間
Road Safety Week
交通安全週間」
(小学館プログレッシブ英和中辞典)

「Passion Week」というのがあり、「受難週,聖週(Holy Week)(◇復活祭の前週)」(同)のことですが、ここでの「受難」とは…

「2 キリスト教用語。イエス=キリストが十字架にかけられて受けた苦難。」
(小学館デジタル大辞泉)

キリスト教徒がその苦難に思いを致す、という週間であるようです。

ちょっとしたオモシロ表現

『Eight Days a Week』はthe Beatlesザ・ビートルズが西暦1964年/昭和39年に発表した曲です。

定義上、a weekはseven daysから構成されている訳で、それがeight daysになることはあり得ない…と、無粋に解説する必要もないと思いますが、それほど「毎日、毎日」なんだということを表現しているところが「ちょっとしたオモシロ」です。

歌詞の上では恋愛の歌ですが、この題名はこのバンドの当時の多忙さに由来しているとのことです。

『The Beatles - Eight Days A Week』
https://www.youtube.com/watch?v=kle2xHhRHg4

また、「the second Tuesday of the week」という表現もご紹介します。

「週の2つ目の火曜日」ということですが、1つの週に火曜日は1つしかないのでこれも「あり得ない」という点で共通しています。

Farlex Dictionary of Idiomという辞書での定義は以下の通りです。

「A time that does not exist and thus will never come.
(存在せず、したがって決して来ることのない時)」

例文はこう。

「A: "Do you think Samantha will agree to go on a date with Jake?"
B: "Oh sure — on the second Tuesday of the week!"
(Aさん:「ジェイクとデートに出かけることをサマンサが同意すると思うかい?」
Bさん:「ああ、もちろんだとも。週の2つ目の火曜日にすると思うね!」)」(同辞書)

「おととい来やがれ」にちょっと似た「オモシロ」とも言えるでしょう。

ドイツ語Woche

ドイツ語のWocheヴォヘはweekと同源であり、使い方も大体同じです。

「die zweite Woche des März
3月の第2週
eine Woche früher 〈später〉
その1週間前〈後〉に
während der Woche / die Woche über
週日〈平日〉に
die Heilige 〈Stille〉 Woche
受難週」
(小学館プログレッシブ独和辞典)

上から「始まりの固定されている週」「任意の日から7日間」「7日でないweek」「特徴のある週間」の例です。

英語week、ドイツ語Wocheは「変わり」が原義であったのですが、「ぐるりとまわる」ことを元々表す漢字「週」と併せて、いずれも「7」に由来する言葉ではありません。

一方、ラテン語系統の言語における「週」は「7」です。

ラテン語系統の「週」

イタリア語settimanaセッティマーナ、スペイン語semanaセマナ、フランス語semaineスメヌ。どれも、ラテン語septem「7」から派生した形容詞septimanus「7の」に由来する言葉です。

(それぞれの言語で数字の「7」はsetteセッテ、sieteシエテ、septセット)

イタリア語の例

「la prima settimana del mese
第1週
restare al mare una settimana
1週間海で過ごす
settimana lavorativa
就業週日;(店の)営業日
Settimana Santa
〘カト〙聖週(復活祭の前の週)」
(小学館伊和中辞典)

スペイン語の例

「cada dos semanas
2週間ごとに,隔週で
Estuve una semana en Buenos Aires.
僕はブエノスアイレスに1週間滞在した」
semana laboral
週間労働日
La mayoría de los negocios cierran en Semana Santa.
商店の多くは聖週間に店を閉める」
(小学館西和中辞典)

フランス語の例

「au début de la semaine = en début de semaine
週の初めに
prendre une semaine de vacances
1週間の休暇をとる
La boutique est ouverte en semaine.
店は日曜を除き営業している
semaine sainte = grande semaine
聖週間:復活祭に先立つ1週間」
(小学館プログレッシブ仏和辞典)

曜日の名前

曜日の英語名を憶える(=正確につづれる)のは、初学者たる中学生ならずとも、なかなか骨が折れる作業です。

それぞれについて確認していきましょう。

日曜日

これが最も簡単で、「=太陽」に関係するからsunが使われるのだなと誰にでもわかります。

ラテン語の「dies Solis太陽の日」がゲルマン語に翻訳されて、その後変化した言葉です。

同源のオランダ語は「博多どんたく」の語源でもあります。

「どんたくとはオランダ語で日曜日を意味するzondagの訛りである。ぞんたくとも。zonは太陽、dagは日を意味し英語のSunday同様、ラテン語名のひとつdies solisの直訳である。現代オランダ標準語での発音は[zɔndɑx]でゾンダッハに近い。(中略)
オランダ語由来の外来語は多くが江戸時代に使われ出しているがこの語は比較的新しく、明治初期に使われ出した。まだ曜日自体が普及していなかったせいか、日曜日から転じて休日を意味するようにもなった。」
ウィキペディア

月曜日

月曜も同様にラテン語「dies Lunae(天体名)の日」の翻訳です。

ただ、moonと比べてMondayにはoの字が少ないのが気になるところですが、そもそも昔の英語で「月」はmonaとかmoneというようにo1つのつづりだったのです。

土曜日

またまた翻訳であり、ラテン語「dies Saturniサートゥルヌスの日」から着想を得ています。

Saturnusサートゥルヌス(いわゆるサターン)はローマ神話における農耕の神であり、我々が「星」と呼んでいる天体にその名が付いてもいます。

古い英語ではsæternesdægというつづりであり、dægが今日のdayに当たります。

前半の要素sæternesのesは「サートゥルヌスの」の「の」を表す部分であると思われますが、時が流れるに連れて取れてしまいました。

金曜日

ラテン語「dies Venerisウェヌスの日」を起点としてご説明します。

Venusウェヌス(いわゆるビーナス)はローマ神話の愛と美の女神であり、我々が「星」と呼んでいる天体にその名が付いてもいます。

ローマの神様の名をそのまま拝借するのではなく、ゲルマン系の人達は自分達により馴染みのある北欧神話に出てくる、ちょっと似たイメージの女神Friggフリッグの名前を採用することにしました。

それがfrigedægであり、やがてFridayというつづりになったわけです。

木曜日

ラテン語「diēs Iovisユーピテルの日」を起点としてご説明します。

Jupiterユーピテル(いわゆるジュピター)はローマ神話の天空の神・主神であり、我々が「星」と呼んでいる天体にその名が付いてもいます。

ゲルマン系の人達は北欧神話の主神Thorトールの名前を採用することにしました。

昔の英語でþurresdægと書き、esはやはり「の」の意味と思われますが、現代英語のThursdayのsに残っています。

「ジョンの」と言うときに「John's」とするのと同じことです。

ところでこのトールは雷の神様ですが、ダイハツの車種にこの名を持つものがあります。

「車名の由来
北欧神話の雷神"THOR"から。"THOR"の意味である「力強く頼りがいがある相棒」に加え、同じ発音で"背が高い"を意味する"TALL"を重ねている。」
ウィキペディア

水曜日

ラテン語「dies Mercuriiメルクリウスの日」を起点としてご説明します。

Mercuriusメルクリウス(いわゆるマーキュリー)はローマ神話における商人・旅人の守護神であり、我々が「星」と呼んでいる天体にその名が付いてもいます。

ゲルマン系の人達は北欧神話の主神Odinオーディンの名前を採用することにしました。

昔の英語でwodnesdægと書き、esはやはり「の」の意味と思われますが、現代英語のWednesdayのesに残っています。

火曜日

ラテン語「diēs Martisマールスの日」を起点としてご説明します。

Marsマールス(いわゆるマーズ)はローマ神話における軍神であり、我々が「火星」と呼んでいる天体にその名が付いてもいます。

ゲルマン系の人達は北欧神話の軍神Tyrテュールの名前を採用することにしました。

昔の英語でtiwesdægと書き、esはやはり「の」の意味と思われますが、現代英語のTuesdayのesに残っています。

再び日曜日

「dies Solis太陽の日」だったはずの日曜日ですが、ラテン語系統の言語では「主(しゅ)の日」という言い回しの子孫に取って代わられています。

イタリア語domenicaドメーニカ、スペイン語domingoドミンゴ、フランス語dimancheディモンシュです。

再び土曜日

「dies Saturniサートゥルヌスの日」だったはずの土曜日ですが、ラテン語系統の言語ではヘブライ語「安息日」に由来する言葉に取って代わられています。

イタリア語sabatoサーバト、スペイン語sábadoサバド、フランス語samediサムディです。

現代英語にはSabbathという同源の単語がありますが、「土曜日」の意味はなく「安息日」のみを表します。

イギリスのバンドBlack Sabbathブラック・サバスはその名をイタリア映画の題名から採ったそうです。

ただし、西暦1963年/昭和38年公開のその映画の原題(イタリア語)は「黒い安息日」を意味する言葉ではなく、『I tre volti della paura』でした。

「恐怖の3つの様相」という題名は、この映画が3つの短篇のオムニバスになっているところから来ていそうです。

そしてその形式に影響されたのが、Quentin Tarantinoクエンティン・タランティーノの映画『Pulp Fictionパルプ・フィクション』です。

「オムニバス形式でロサンゼルスで起こった犯罪エピソードが展開されるが、エピソードごとの時系列はシャッフルされており、最後のエピソードまでみると時間的な順序がわかる、という当時としては珍しい手法が使われている。」
ウィキペディア

お読みいただき、ありがとうございました。ではまた。

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