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母を通してみてきた「働く」

私の母は「働くおかあさん」でした。

しばらく会社員をしていましたが、結婚してから、自分のお店を持ちました。いわゆる「個人商店」です。

うちの母、実は大きな病気を持っていて、医師から働くのを禁止されていました。寿命を縮めるから、と。

そういわれたから、会社員で働くといろいろバレちゃうから、自営業をしたのよ、と話してくれたことがあります。いや、医師の忠告、聞いてた?

そんな、よくわからない理由でお店をオープンしたのだけど、地元では知らない人がいない、なかなかの人気店になりました。

でも、時代が進み、店の売り上げに陰りが見え始めます。ある日、卸の会社のおにいさんに、母はこう言われたそうです。

「これからはスーパーの時代が来て、個人商店は立ち行かなくなるよ。悪いことを言わないから、商売替えを考えた方がいい」

母はすんなりと忠告を受け入れ、あっさりと商売替え。そして、その次の商売も、けっこうな人気店になり、結局母が63歳で引退するまで、繁盛していました。

もちろん、上手く行かない時もたくさんありました。とりあえず、商売替えして最初の3年は無休で働いていたなぁ。朝の5時に開店して、夜の21時に店を閉めるのを、365日。繰り返しになるけれど、なかなか大きな病気とともに生きている人なので、健康な人以上の負担があったことでしょう。

でも母は、いつもケロッとしていました。しんどそうにすることはあっても、愚痴は言わない。黙って仕事をしていました。

ある日、母に聞いたことがあります。苦しい時は、どうしているの?と。

そしたら母はこう言いました。

「”真剣に”は考える。でも”深刻に”は考えない。”深刻に考える”になりかけたら、もう今日は終わりと思って、寝る!それだけ。」

超シンプルで驚いたけど、なるほどなぁと唸ったものです。

”真剣に考える”と”深刻に考える”は、まったく異なりますよね。

母の言ってくれたイメージだと、今の自分に出来ることは何か模索し続けるのが”真剣に考える”で、自分はダメだ、自分はダメだからこんな状況なんだと執着したり、自己否定に走るのが”深刻に考える”なのかな。

仕事だから、上手く行かないがあって当たり前。だから常に真剣にやるけど、上手く行かないがあっても深刻には考えない。深刻になってきたと感じたら、もうその日は頭と心、体を休めるべく、寝る。それを「習慣づける」ことが大切、と。

母が背中で見せながら教えてくれたこの価値観は、私の「働く」の土台となっています。

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