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「高畠一郎 箏三絃十七絃リサイタル」

10月16日には箏のリサイタルを開催された高畠一郎さん。
伺ったのは11月3日の箏・三絃・十七絃のリサイタルです。
 
演奏曲はいずれも、原曲は昔ながらのお箏の曲。
これらが、高畠さんの手のかかると、古典だけど古典じゃない、とても、音が楽しい「音楽」会でした。

「嵯峨の秋幻想」高畠一郎編作曲2018
原曲は明治に菊末勾当により作曲された箏2面の曲「嵯峨の秋」です。
「嵯峨の秋」は平家物語「小督の局」のお話しが元になっています。
同じモチーフの山田流の曲「小督曲」は、つい先日下野戸亜弓の会で聴いたばかり。
両曲はそもそも全く雰囲気も違う曲です。
その「嵯峨の秋」が「嵯峨の秋幻想」になり、豪華な合奏版になったことで、ますます違う曲になり、その差がとても面白く感じました。
 
「みだれ今様」高畠一郎編作曲2022
江戸時代初期、八橋検校作曲といわれる「みだれ」をモチーフに、箏4面で演奏されました。
4面の箏それぞれの音が、複雑に重なり合い、400年前の「ザ・お箏」な曲が、とても「今様」に生まれ変わりました。
よくありがちな十七絃で奏でるベースの音がない分、とても軽やかな印象を受けました。
 
「千鳥幻想」沢井忠夫編作曲1981
吉沢検校が幕末に作曲した「千鳥の曲」を1981年に沢井忠夫さんが編曲した曲。
箏2面のところを「古典の持つ歴史の重みと風格を現代に行かす試み」として箏と十七絃の二重奏にアレンジされています。
千鳥の曲であって、千鳥の曲ではない。
一段とドラマチックで壮大な情景に、千鳥の群れが大きく賑やかになった感じでした。
 
「中空砧」宮城道雄作曲1953(S28)
1曲だけ、原曲のまま演奏されました。
幕末に光崎検校によって作曲された箏二重奏「五段砧」を、一人で演奏出来ないか、と作曲したとのこと。
「原曲のまま」と書きましたが、「五段砧」を宮城道雄がアレンジしたと思えば、これまでの流れと同列なのが見えてきます。
ここまで、三絃、箏、十七絃を合奏や二重奏で演奏された高畠さんの箏独奏。
箏の音色そのものをしっかりと味わうことが出来ました。
個人的には、全曲の中で一番堪能させていただきました。
 
「編曲尾上の松」高畠一郎編作曲2020
原曲は、作者不明の九州に伝わる地歌古曲に、宮城道雄が1919(大8)年箏の手付けをしてブレイクしたという「尾上の松」
高畠さん編曲版で、とってもゴージャスにフィナーレを飾ります。
箏・三絃・尺八・十七絃、総勢9名での合奏です。
最大のごちそうは、なんと言っても、
三絃solo、地歌箏曲家の藤本昭子さんと、尺八の田辺頌山さん!
高畠さんらしい明るく華やかなアレンジは、終曲を飾るにピッタリです。
 
高畠さんの会は始めて伺いましたが、全曲通して、何しろ陽性。
曲も演奏も、明るく楽しく、元気がもらえます。
古典だと、まじめにもくもくと、というスタイルになりがちですが、「お箏の演奏会って難しそう」という印象を見事に吹き飛ばしてくださいます。
ベテランらしい力みのない演奏は、疲れることなく、見ても聴いても楽しい会でした。
「楽しかった~!」と叫びそうになりながら会場を後にするのは、気持ちのよいものですね。
 
今日もまた、幸せな気分で家路につきました。
 
*「さん」とお呼びするのは、大変失礼であると重々承知しておりますが、「客席からの眺め」では、「先生」方も、「さん」付けで表記させていただいております。何卒ご了承くださいませ。
 
*箏の波では、演奏会情報をご案内しております。是非、生の演奏を聴いてみてください。

 
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会場 ヤマハホール
日時 2022年11月3日(木・祝) 14:00
プログラム
嵯峨の秋幻想 高畠一郎編作曲
 三絃 高畠一郎
 尺八 川瀬庸輔
 1箏 三宅礼子 志村智恵子 竹ノ谷史恵
 2箏 細川真紀 郷司雅子 八木久美子
 十七絃 城ヶ崎美保
みだれ今様 高畠一郎編作曲
 箏Ⅰ 高畠一郎
 箏Ⅱ 郷司雅子
 箏Ⅲ 細川真紀
 箏Ⅳ 城ヶ崎美保
千鳥幻想 沢井忠夫編作曲
 十七絃 高畠一郎
 箏 三宅礼子
中空砧 宮城道雄作曲
 箏独奏 高畠一郎
編曲尾上の松 高畠一郎編作曲
 箏solo 高畠一郎
 三絃solo 藤本昭子
 尺八 田辺頌山
 1箏 三宅礼子 志村智恵子
 2箏 細川真紀 八木久美子
 三絃 郷司雅子
 十七絃 城ヶ崎美保

アンコール
 アイヌの子の踊り(唯是震一「神仙調舞曲」より)
 瀬音(宮城道雄)

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