コットクラブ vol.49
わたしはわるい犬を知っている。
その名もシュトラナイザーラパウザ。
略してザーラ。
ザーラは人のいやな出来事を餌にしている悪趣味の犬だ。
わたしはザーラに会ったことが何度かある。
ザーラはいつも夜中にやってくる。
1回目に来た時はわたしがとてつもなく苛立っている時だった。
苛立ちすぎて泣きそうになる寸前の時に家のベランダにやってきて
「おまえの腹立っていることを教えろ〜グフフ...」
と窓越しに笑ってきた。
ガラスを1枚挟んでいるということもあり、ザーラの顔が変に反射してとても怖く、わたしは大きな悲鳴をあげた。
ザーラは笑いながら帰っていき、わたしは自分の悲鳴で何に苛立っていたか忘れた。
2回目に来た時は絶望を感じ始めて1週間が経った日の翌日の夜だった。
またベランダにやって来て
「おまえの絶望している気持ちを教えろ〜グフフ...」
と言ってきた。
「なんなんだ!人の不幸を笑うな!」
と部屋から叫んだ。
逆にザーラを困らせようと部屋に招き入れて朝になるまでわたしの絶望感を話した。
どんなに話してもザーラは眠そうな態度一つ取らず、ずっと笑いながらわたしの話を聞いていた。
どんだけ人の嫌な出来事が好きなんだ...とわたしは悔しくなり、ザーラを家に帰した。
その日以降わたしはザーラに会っていないが、悪趣味な犬だからきっと世界中の人に起こったいやな出来事を聞きに回っているのだろう。
ほんといやなやつだな〜と思いながら今日もベランダは覗くようにはしている。
#作文 #ベランダ #ショートショート
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