【資料】竹内紅蓮「故郷を憶ふ」『少國民』14年2号(明治35年1月)

故郷を憶ふ (唱歌)

             紅 蓮

ゆうべの空は雨とならん
 窓の寒梅かんばいいまだ咲かず
  朝北あさきたさむきたびのいたみ
   雲の往來ゆきゝものをおもふ

あゝしなさかるこしにおはす
 父母君やはらからぎみ
  うからやからのあいその
   うらぶれいでゝここ四年よとせ

未だ學ならず魯鈍ろどんなりや
 ひとれられず頑固ぐわんこなりや
  我にかはりむごき社會しやかい
   恨むは遂に愚かなりや

床の鏡に向はんには
 あまりのつらきわが朝形あさかた
  故郷くによ、めでたくかへる日待ち

   文にやさしきこゝろあはれ

  ○

いかはかり雪や白からん有磯濱ありそはま
     東にたかき大蓮華小蓮華

◇○

【引用者注】児童雑誌『少國民』の主筆、竹内紅蓮が、故郷富山(越中)に思いをはせて詠んだ唱歌。明治35年に『少國民』主筆を降板しており、その時の心境がうかがえる。

有磯濱は富山湾の浜辺。大蓮華は白馬岳。

竹内紅蓮については本編「7_巌谷と久留島の来訪」を参照。

(2016-08-20 21:25:18)

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