【100円】プラトン『国家』第5巻の要約

哲学する高等遊民です。大学院ではギリシア哲学を主に研究していました。

プラトン『国家』は、史上最大の哲学者プラトンの主著と言われる著作です

非常に重要な作品なのですが、少々長いし難しい。(岩波文庫で上下巻。900頁ほどです)

このnoteでは、『国家』の内容をおよそ10分の1に縮めて、議論だけ丁寧に追っています

こちらのnoteを読めば、『国家』第5巻の議論の内容は9割ほどはカバーできます


全10冊になりますので、マガジンでまとめ買いされることをおすすめします



第1巻の無料部分で、

・『国家』はどんな作品か?
・『国家』を読む意義

などを簡単に説明してます

全10巻あるうちの、第5巻の要約です。私の要約の手間賃として、100円を頂ければ幸いです。

プラトン『国家』の購入を検討される方はこちらからどうぞ↓



プラトン『国家』第5巻要約


アデイマントスの放免拒否(一~二):「友のものは皆のもの」が正しい事に説明をして

様々な国制とその性質の人間を挙げようとするソクラテスをよそに、ポレマルコスがアデイマントスを掴んで何か話しかける。

「放免しようか?」と囁くのを聴いたソクラテスが何かと尋ねると、妻子共有の仕方について説明して欲しい、妻子の問題は国家の存続に直接かかわり、国家のあり方を全面的に左右するものと思うからとアデイマントスは言い、グラウコンもトラシュマコスもそれに賛成する。

ソクラテスはこの議論が大変になり、さらに議論を呼び起こすのがわかっていたために敢えて避け、「適度を超えないだけの議論」をするつもりだった(450B)。しかしグラウコンがこの言葉を捕まえ、「この議論は全生涯をかけるのが適度だ」と返し、妻子の共有はどのようになされるべきか、幼い者たちの養育はどうなるのかについての議論を恐れるソクラテスを励ます(450C)。

ソクラテスは「真理を逸し、最もつまずいてはならない事柄について自分ばかりか親しい人たちまでも巻き添えにしてしまう」のではないかと慎重な態度を見せる。さらに「過失で人殺しとなるほうが、善や正義について人を誤らせるよりもまだ罪が軽い」とさえ言う(451A)。

しかしグラウコンの説得に折れ、議論を開始する。妻子共有は実現可能であり最善なのか?


第一の浪(三~六):男女平等の教育 当時は男だけが教育・戦争・経営をしていた。プラトンは変わったことを言っている。

ソクラテスはグラウコンに問う、「番犬で牝犬の方は家の中で子育てをし、牡犬が骨折り仕事を一切引き受けるべきだと思うか」グラウコンは全ての仕事を同じように分担せねばならないと答える。ならば同じ目的(=守護)のために使うならば男女問わず同等の教育を与えねばならないとする(451E)。つまり体育と音楽文芸を女子にも課し、戦争に関する教育も受けることになる。

そこで最も奇妙に見える光景は男女とも裸になって体育をしている情景である。ただし見た目のおかしさを冷やかすだけの「気のきいた連中」を退ける。

「悪いもの以外のものをおかしいと考える者は愚か者であり、無知で劣悪なものの姿以外の何らかの光景に目を向けて、それをおかしいと見て物笑いの種にしようとする者は、逆に美しいものの基準を真剣に求めるにあたっても、善いものを基準とせずに別の何かを目標として立てるものだ(452E)」

まずはこれが実現可能かを検討しなければならない。上の意見に対し、

「男と女の自然的素質は異なっている。この国家では各人は自然的素質に適った仕事に専念しなければならない。とすれば男女は自然的素質が異なるにも関わらず同じ教育同じ仕事をしなければならないのか」

と反対者の意見をソクラテス自ら提示する(453B-C)。

返答に困るグラウコンだが、ソクラテスはこれを「反対論のための反対論(454B)」とし、自然的素質の異同がとくに何に関係するのか、この反論は全く考慮に入れていないという。

この反論は禿頭の人と長髪の人とでは自然的素質が異なるから同じ仕事をしてはいけないと言っているようなもので、われわれの意味する自然的素質とは「ただ当の仕事そのものに関係するような種類の相違と異同だけに注意しなければならない」のである。

たとえば医者に向いている人同士は同じ自然的素質をもっているということ。しかるに国の経営に関しても、男女ともに向いている人はいるし、女か男どちらかでなければならないような仕事は何もない。

したがって国家の守護に必要な自然的素質そのものは、女も男も同じであって、ただ一方は比較的強く、一方は比較的弱いという違いがあるだけである(456A)。

とすれば同じ自然的素質には同じ仕事、同じ教育を課すべきであり、男女平等の教育は自然本来のあり方に反することではなく(456B)、実現可能であると証明する。

続いてソクラテスはこれが最善であるかどうかを吟味する。

「一般の国民の中では守護者が最も優れた男たちであり、女たちのうちでも同じである。一国にとって国民が、女も男もできるだけ優れた人間となることよりも善いことはない。」

ゆえに最善であるとグラウコンを同意させる。


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