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スゥアンクゥアンスゥイウォン

ふた月前に切った髪が少し伸びた。
癖のないまっすぐな髪に
生まれてそう時間がたっていない日が当たると
疑いもなく春を感じる。

ある日、わけあって名乗れないがと言いながら
使いらしき者がやってきた。
聞き慣れた声に和んでいたら
早々にお帰りになってしまった。
さりげなく触れたつもりであったけれど
などと思っていたら使いらしき者は振り返り
嗅ぎなれたにおいを漂わせてうふふとお笑いになって
ふたたび背を向けてお帰りになった。
なんとゆうか懐かしみのある風来坊のようなお方。
がしっと手でも握ればよかったかと
今になって思うけれども。

使いらしき者は薄い青色の敷布をまとっていて
花のようなにおいがした。
こまやかに小枝を揺らし円らかな花芽まで膨らませる。
使いらしき者たちを迎えながらひと節ひと節に
わたしも人々も生きているのだなと思った。
なんすてきなことでしあわせなのだろう。
それが日常の風景で何でもない日々で
思うことをしたりしない日があったりして
微睡んだり乱れたり頑なな姿で生きているのだけれど
どうなのだろう、古の人たちはこのすてきな趣に
どんな思いを抱いて生きていたのだろう。
これから後を生きる人たちも
今を生きているわたしたちの日々に
思いを馳せたりするのだろうか。


スゥアン クゥアン スゥイ ウォン・.・…・



スゥアン クゥアン スゥイ ウォン。

話せるはずもないのにポルトガル語のように
声に出してみた。ちょっとおしゃれで気持ちよくて
おまけにぽかぽかする。
また声に出してみる。
スゥアン クゥアン スゥイ ウォン。
また声に出してみる。
今度は歌うように、踊るように。
スゥアン クゥアン スゥイ ウォン。
     
     . ・.♪・…・.・♪..・…・

スゥアン クゥアン スゥイ ウォン・.・♪..・…・

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