フリーランス新法と下請法の比較

※この記事は2024年4月12日公表のパブコメにかかっている施行令案、施行規則案、指針案、考え方案に基づいています。パブコメにより変動する可能性があります。

適用対象

大雑把にいうと、

委託する業務の類型は同じ(製造委託、情報成果物作成委託、役務提供委託※修理委託は含まれていないが差異にならない)。

一方で、役務提供委託は自家使用も対象になる点が異なる。

文言上は、
下請法が
再委託:「事業者が業として行う…目的物…の…を委託すること」
自家使用:「事業者がその使用する…の…を委託すること」
のようなフォーマットで書き分けているのに対し、
FL法は
「事業者がその事業のために他の事業者に…を委託すること」
とひっくるめて規定している。

最も悩ましいのはFL法が対象にするいわゆるフリーランスである「特定受託事業者」の定義である。

2条の定義での「個人であって、従業員を使用しないもの」はわかる。
一方でもう1つの類型である「法人であって、一の代表者以外に他の役員(…)がなく、かつ、従業員を使用しないもの」に関しては、「考え方」では以下のように規定している。

「従業員を使用」とは、①1週間の所定労働時間が20時間以上であり、かつ、②継続して31日以上雇用されることが見込まれる労働者(…)を雇用することを言う。…
なお、事業に同居親族のみを使用している場合には、「従業員を使用」に該当しない。

特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方(案)

こんなの委託側からはわかるわけがないし、契約期間中に変動することはある。したがって、結局のところ法人を相手に契約する際は、明らかに代表者以外の従業員とわかる人物と名刺交換や連絡をしていなければ(連絡窓口を外注していると困るが)、FL法の対象であると考えて動かざるを得ない。

下請法の適用取引については過去にも記事にした。

義務

支払期日が「受領日から60日以内」など共通していることも多いが、大きな違いは、

  • 下請法は委託時の交付書面(3条書面)が原則紙であるのに対し、
    FL法は(これも3条書面)電磁的方法(電子メールその他の電気通信、電子ファイルを記録したメディア)が明示的に規定されている(ただし書面交付を求められたら応じなければならない)。
    というように原則と例外が逆になっている。

  • FL法では記録(下請法5条書面)の作成義務がない。

  • FL法では遅延利息の法定がない。

  • フリーランス等への委託が再委託の場合で、委託者が他の事業者から前金などを受領している場合は、その支払日から30日以内に支払わなければならない(4条3項)。(訂正)60日の期限を超えて、他の事業者から前受金などを受領する日から30日以内を支払期日とすることができる、という元請に配慮したものであった。

  • 継続的業務委託契約の解除・非更新をしようとする場合は30日以上前に、書面、FAX、電子メール等で予告しなければならない。解除の理由を求められた場合は開示しなければならない。(16条)
    ただし厚労省令案4条2号では、再委託の場合であって元委託者との契約の全部または一部が解除されたことにより再委託の大部分が不要となった場合を予告が困難な例外の場合としている。(いいのか?)

  • FL法は委託者が直接募集する場合は的確な募集情報の表示が必要であり、虚偽や誤解を生じさせる表示をしてはならない。(12条)
    これについては指針が示されている。募集情報の記載に注意が必要になる。3条書面相当の記載が必要なうえ、業務の内容は「業務委託において求められる成果物の内容又は役務提供の内容、業務に必要な能力又は資格、検収基準、不良品の取扱いに関する定め、成果物の知的財産権の許諾・譲渡の範囲、違約金に関する定め」などかなり細かく記載することが求められている。

  • FL法は受託者が妊娠、出産、育児、介護をすることに配慮しなければならない。(13条)
    これについては指針が示されている。6ヶ月以上の契約期間になる業務委託(基本契約に基づく場合は基本契約の契約期間)を対象に、従業員からの申出に対するのと同等の対応が必要になる。
    (この定め方だと基本契約は解除してスポットの委託契約に切り替えるところが増えそうである)
    ただ「育児のためこれまでよりも短い時間で業務を行うこととなった特定受託事業者について、就業時間の短縮により減少した業務量に相当する報酬を減額すること」は「不利益な取扱いに該当しないと認められる例」として挙げられている。

  • FL法は委託者が受託者からのハラスメント相談に応じる措置を講じなければならない。(14条)
    これについては指針が示されている。概ねハラスメント窓口、体制が整備されていればそれを利用可能にすればよさそうである。ただ、「特定業務委託事業者と元委託事業者との間の契約において、元委託事業者も特定受託業務従事者に対するハラスメント対策を行う旨を規定しておくこと」や「重層的な業務委託にかかる契約であって多数の契約当事者が存在する場合…ハラスメント対策を効果的に行うことができると認められる事業者に対し、直接的又は間接的に協力を求めること(契約や覚書においてハラスメント対策にかかる内容を盛り込むことを含む)」とは・・・各社で追加条項や書面の取り交わしが発生するかもしれない。

書面記載事項の比較

FL新法では有償支給の定めがないが、資金移動業による支払いも可能なようだが、概ね同じであるので下請法3条書面の対応をクリアしていれば追加の対応はない。

FL新法での再委託時の記載事項(規則6条)

  • 再委託である旨

  • 元委託者の商号等

  • 元委託業務の対価の支払期日

禁止行為

なぜか割引困難な手形の交付がない?


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