美味しさと値段と価値の話。

僕は高級レストランで食べる料理も赤提灯のつまみもコンビニの弁当も好きです。多くの人がシーンに合わせて食べるものを選んでいますし、その時の都合に合わせて決めているはずです。

僕は料理の仕事をしているので、美味しさというものを研究しています。その中で面白いのが、多くの人は味の比較をするときに値段が明らかに違う商品と美味しさで比較検討しやすい傾向にあるという事です。

これは当たり前のことなので批判するわけではありません。僕も同じような比較を料理以外だとよくしてしまいます。これはその物に対しての知識が乏しいからだと思っており、特にファッションなどの領域に関しては全くわかりません。

これは僕の所感なのですが、10年前のコンビニスイーツは今ほど美味しくなかったと思います。だからこそ美味しいものを食べたい時は人気店にわざわざ足を運ぶ人がいたと思います。これはもちろん今でもいると思いますし、僕も時々行くお店があります。

これが意味することは、コンビニのお菓子はどんなに近くにあっても美味しさで満足できないから美味しい人気店に買いに行こう。という感じです。料理人の中でもコンビニのお菓子はまずい、そんなの食べてるのは本当の味がわかっていない。といった話はよくありました。

コンビニのお菓子の美味しさと近くで買えるという利便性が、人気店の美味しさとわざわざ遠くにいかなければ食べられないという不便さに負けていたからです。

美味しさ単体が利便性を超えるだけの価値を産んでいるということですね。値段が高くなって不便でも買いに行く価値を見出せるお店は残っていける。どんなに便利でも美味しくなければ人はアクションを変えません。

しかしミシュラン3つ星がわざわざ旅をしてまでいきたくなる、という評価からも分かるように、人に移動をさせてまで食べさせたいと思わせることは本当に大変です。僕自身レストラン時代は集客に苦労してましたし、美味しさだけで集客ができる料理(お店)は全体の数%しかないと僕は感じています。

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新しい料理人の働き方から、個人でどう生きていくか、どう価値を生みだしていくかを色々な視点で書き綴ります。月3~4回ほどの更新なので、定期購読がお勧めです。

曜日や時間、場所に捕らわれずに料理を自由に表現するためにレストランを辞めた料理人の働き方を変えていく奮闘記。 これから増えていくだろう料理…

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