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『フェルマーの料理』という作品をもっと知ってもらいたい。

みなさんは『てんまんアラカルト』というマンガを知っていますか?(いきなり題名とは違うマンガの話ですみません)

2012年ごろ連載されていたこのマンガを、当時僕は26~7歳で、僕の師匠の下村シェフがこのマンガの監修をされていて、シェフから教えてもらいこのマンガと出合いました。

当時の料理のトレンドを押さえつつ、科学的な解説もありながらのマンガの内容に料理を修行中の身としてとても興奮したのを覚えています。料理マンガにもさまざまな種類があると思うのですが、小林先生のマンガは、プロフェショナルな人間の苦悩や葛藤を丁寧に描写してくれており、料理人の僕自身も感情移入してみる事ができる、素晴らしい作品だと思っています。(サッカーマンガのアオアシも最高です)

そんなマンガの続編にあたるものが今回話の中心となる『フェルマーの料理』です。作品詳細はこちらです。

フェルマーの料理

「数学の道でこの世の真理を見出すような人間に、僕はなれない…」数学者を志し、数学オリンピックを目指すも挫折した数学少年・岳。奨学金は打ち切られ、学食のバイトで学費を稼ぐ無為な日々の中、突然訪れた一人の天才シェフとの出会い。「数学」が「料理」と交わる時、未知のグルメ世界への幕が上がる――!!

料理と数学???と思うかもしれませんが、実は料理と数学は密接な関係があると思っています。

料理とはとても科学的で、数字がとても重要になるケースが多いです。感覚重視で料理を作ることももちろんありますし、料理人のタイプにもよる部分は大きいのですが、料理と数学は切っても切れない関係性にあると僕は感じています。(数学というよりは数学的思考であったり、論理的思考において数学的要素が大切、ということでもあります)

この作品との出合いは、レストラン時代に知り合った浜田 岳文さんに料理の監修のお話を頂いたからです。(当時は単発の依頼でした)

自分の師匠が関わっていたてんまんアラカルトの続編のような物語で、今度は自分が関われることに勝手に運命のようなものを感じ、当時の話の内容に合うようなレシピを考えさせていただきました。



料理を考える難しさ。

料理を考えるときに難しいのは、マンガの主人公の岳は料理の素人であり、技術はそこまでないという部分。僕が単純に良い料理を考えれば成立するわけではない。というところです。

岳は数学的思考によって、通常とは違う発想を生み出し、それによって料理の世界を切り開いていくのですが、料理の素人がいきなり超一流の料理を作れるわけではありません。なので、岳の状況を理解しながらも、数学的思考を用いて新しい発想の料理を生み出す。という作業になり、ここが一番難しく、楽しい部分でもあります。

僕自身は、感覚的発想と論理的発想の両方のアプローチから料理を考えます。どちらかというと感覚優位なのですが、感覚優位で考えた料理にも論理的説明をできるようにしたかったり、自分が生み出したおいしさを論理的に理解したいが為に言語化することを常々してきました。

野菜のカットのサイズにも、火入れにも、組み合わせにも、あらゆる部分に意図があり、それを持って料理を作り上げる。

これはほとんどの料理人がそうだと思うのですが、これを明確に言語化するという作業は多くの人がしているわけではないと理解しています。感覚的に、直感的にそうするべきだと見えているから作れる。という人が多いように思います。(なので教えるのが苦手だったり、見て覚えろ!という文化があったりすると思います。)

僕は、自分が理解したいから続けてきたことが、スタッフに伝えるすべになり(細かくて伝えきれないことが多々ありますがw)お客様に伝えるすべになり、自分自身を理解することに一役買ってくれています。


料理人の苦悩や葛藤

マンガの内容に話を戻しますが、フェルマーの料理というマンガは、料理の裏に隠れている多くの意図や物語を余すことなく伝えてくれるような、そんなマンガです。

新しい料理を生み出すことはとても大変で難しいことです。かのブリアサヴァランもこのような言葉を残していますね。

「新しい一皿の料理の発見は、人類の幸福にとって、一つの星の発見よりも、より有効なものである」


それくらい難しく価値のあることだと言われています。(ありがたいですね)

フェルマーの料理に出てくる海は、自分の生み出す料理で、料理の歴史を俺以前と以後に分断する。という野望があります。これは途轍もない野望ですが、それくらい新しい味わい、おいしさを生み出すことに執着し、己を高みへと誘おうとしています。

ちょっと言葉で説明するのが難しいので、ぜひマンガを読んでもらいたいのです!!!



フェルマーの料理がドラマになる。

そしてこのマンガがこの秋ドラマ化します!!!これをお伝えしたくこの文章を書いていると言っても過言ではありません。本当にすごいことだと思っています。やばい!すごい!w

原作もやっと12話なので、こちらもペースアップしてやっていくと思います!

僕の中で料理ドラマの記憶に新しいのはグランメゾン東京です。あの岸田シェフが監修されたということで、業界でもかなり話題になっていました。僕もドラマの内容についていろいろな角度から素晴らしさについて勝手に文章にしていました。

今回のフェルマーの料理は原作があり、マンガを元にしたドラマになるので、グランメゾン東京とは違う切り口で料理の世界を伝えていくことになると思っています。

それでも料理の奥深さや面白さ、料理人の葛藤なども描かれると思いますし、その一部に僕が関わらせてもらえるということは光栄だという以外にありません。

今はレストランから離れていますが、岳という主人公の思考と僕の思考はかなり近いと勝手に思っていますし、数学的思考を料理に用いる。という部分を僕の感覚を持って表現していければと思います。

実際のドラマがスタートするまでにはまだ時間がありますので、まずは原作を読んでいただいて、テンションを上げてもらえたらと思います🔥

演者の方達も、めちゃくちゃ真剣に料理と向き合って下さっていて、僕の技術指導なんていらないくらいだなと思いつつも、作品の完成度をできる限り上げられるように僕も努力を惜しまずにやれればなと思います。

何が言いたいのか分からなくなってきましたが、とにかくフェルマーの料理という作品を多くの方に知ってもらいたい。そして料理の素晴らしさや料理人の想いを知ってもらいたい。

コロナを経て、料理の世界やお菓子の世界など、多くの変化がありました。若い人たちがこの仕事を選びにくくなっているとも思います。長時間労働や金銭面などでも苦労も少なくありません(これはどの業界もそうだと思いますが)

それでも僕は料理に救われて、料理で生きています。おいしさを生み出すことでしか自分を表現できず、おいしさで人と関わっています。食の素晴らしさや、料理人の素晴らしさ、おいしさを通して人と関わる時間の尊さなど、僕はこの作品を通して、今の自分にできる業界への貢献をできたらなと思っています。

少しでも多くの方に見てもらいたいと思っています。料理に興味のある人や、マンガが好きな人、高橋文哉さんや志尊淳さんのファンの方、どんなに小さな切り口だとしても、この作品に触れていただける人を増やして、この作品のファンを増やしたいと思っています。僕がこの作品の大ファンだからこそ。

こんなに素晴らしい作品を生み出してくれた小林先生が尊すぎます、、、。

ドラマが始まってからまた色々と書くと思いますが、まずはとにかくマンガを読んでみてください!!!!!!!!!!

最後にドラマのプロデューサのこの言葉を持って締めたいと思います。

プロデューサー・中西真央
私はこのドラマを見てくださった方が、「この世に無駄なことはない」ということを改めて感じていただけたら良いなと思っています。

とにかく生産性やタイムパフォーマンスが求められてしまう今日、なにかに打ちこむことで時間を失うことのリスクを恐れてしまう瞬間が増えているのではないかと思います。例えば、ファスト映画、ファスト教養のようなファストになにかを摂取することが流行ったり、数学の世界に関しても“三角関数不要論”がたびたび話題になったりと、時間を無駄にする可能性を少しでも回避することが合理的であるというような風潮が強くなっているように感じています。

でも、私は一生懸命打ち込んだことが、たとえそのときに報われなくても、成長した事実は確実に自分の中に残ると信じたいです。
この物語の主人公は、数学の道では挫折したものの、数学を究めたからこそ、気がつかないうちに究極のレシピを授かっていました。

かつて全力で打ち込んだことがきっかけになり、新しい世界に飛び込んでいく中で周囲にも希望を与えていく、そんな主人公のストーリーで日本中に元気を与えられたらと思っています。
高橋文哉さん、志尊 淳さんに本気の料理の世界を演じていただくのを楽しみにしております。
岳と海が出会うことで生まれる化学反応を楽しんでいただけたら幸いです。よろしくお願いします。

https://www.tbs.co.jp/fermat_tbs2023/archive/20230803/#ch



皆様の優しさに救われてます泣