原価率の奴隷にならない為に。

今朝読んだこのnoteがきっかけで原価率についてのツイートをしました。

ご自身でお商売をされている方はわかる部分が多いと思うのですが、原価率はとても重要でとても難しい値です。原価率が高い=原価がかかっってる!良い商品だ!と言うのは間違いではないのですが、それが全て正しいかと言うとそうではありません。

お商売をする上で、全体の数字を理解する事がとても大切なのですが、その中でも原価率は特に難しく、それについて少しでも僕の理解を伝えられればと思います。


スーパーでの買い物でみんな経験している。


原価率とは、売上に対する原価の比率を表したものです。

原価とは、商品やサービスを生み出す際に必要になった仕入れ費用や製造費用のことを指します。これは飲食店やアパレルの素材を仕入れて加工するタイプのものもあれば、スーパーなどの仕入れてそのまま売るタイプのものもあります。前者は25〜30%が定説とされており、後者は70%ほどと言われています。

例えばAというスーパーとBというスーパーがあり、同じ商品でも価格が違います。これはそれぞれの戦略のもとに違うのですが、販売価格に対しての原価は同じ量を仕入れているならばそこまで変わりません。(色んな要素がありますがここでは割愛)

100円で仕入れたものを130円で売るか150円で売るかの違いはあれど、原価(100円)に差はないという話です。

しかしこれが業務用スーパーなどで、事業者側が大量に発注をかける場合は話が変わってきます。10個しか買わないのと1000個買うのではスケールメリットが出るからです。10個しか買わないなら1個100円だけど、1000個買ってくれるなら1個90円で納品できます!みたいなことは当たり前にあります。(小学生の数学の問題みたいであれですが、、、)

この場合原価は10円下がる(10%)わけで、これは原価が低いのではなく下がったという事です。これは1000個仕入れられる企業努力です。だからこそ、原価率という数字だけでは商品の良し悪しは測りにくいのです。

飲食店でも同じで、毎回100gで販売している人参と10kg箱の人参では価格が変わります。(これは100gに小分けする事業者側の手数料が乗るからです)なので、同じ素材を使っていても仕入れの仕方で原価率はいとも簡単に変わる(低くなる)のです。

これを原価率が低いから安くて粗悪な素材を使っている!というのは変な話です。特に飲食もアパレルもですが、製造に対する技術力というものが素材に加味されます。

よく例で話すのですが、ピーコックで買ってきた素材で料理を作るとします。原価が同じ、作り手はプロとアマ。仕上がりは当然プロの方が美味しいです。これを同じ価格で販売するでしょうか???

同じ価格にはならないと思います。そこには技術料という価値が乗っているからです。アマは自信がなく100円の素材で作ったものを300円で販売するかもしれませんが、プロは500円で販売するかもしれません。

この場合、アマの原価率は33%でプロは20%です。原価率の低いプロの商品が粗悪か?という議論は意味をなしません。何度も言いますが原価率はいとも簡単に変わるもので、そこには複雑な考えがあります。そして事業者は原価率を整える為に事業をしていません。

人件費や家賃、その他経費も鑑みて、その上で原価率を考えますし、最終的な目的は、その商品を手にとったお客様の満足度です。変な話50%原価をかけたとしてもお客様が満足しなければ意味はなく、10%でもお客様が感動すればそれは価値があります。

その中でそれぞれの業界内での目安や風習があり、なんとなく30%と言われている部分や、ビジネス構造上30%以上になると経営が厳しくなるという部分もあります。しかしこの30%という数字に囚われる必要もなく、物を作らない事業の場合(サービス提供のような)主にかかるのは人件費です。そもそも原価、原材料費という概念もない事業もあるので、結局はそのビジネスモデルで最終的な収益と費用のバランスを取れる状態で、顧客が満足する物を生み出すという至極簡単な話です。

年間数千万台と作られるiphoneのパーツと、年間数台しか作らない商品の同じパーツがあったとして、同じ価格なわけがないのです。

事業者の努力によって原価は変わり、原価率も変わる。なので企業が原価率を公表したとしても、その数字から判断できる事は事業全体としての数字のバランスだけであり、原材料のクオリティーを判断する材料にはなりません。

私たちは原価30%しっかりかけて良い商品を作っています!という企業があったとしても、同じ素材を25%で仕入れられるように努力して製造数を増やし、使っている企業もあるという事を知る必要があるのです。


手に入らない素材は高価になりやすい。


今までの話は、同じ素材が大量に手に入る場合の話です。これとは別で、希少価値が高く、そもそも量を確保できない素材というものもあります。この場合はどの事業者も優遇される事なく同じ価格で仕入れることになるので(傾斜は若干かかりますが)販売価格で原価率は変わります。

これは事業者側が価格設定をして、この素材の原価率をどれくらいにするかを調整します。この場合は原価率が高い方がコスパが良いと判断できます。しかしここにも先ほどの技術料の概念があるので、結局は顧客の満足度です。高級な素材が安く食べられたとしても、それが美味しくなければ意味がないからです。

だからこそ原価率での会話は意味をなしません。一皿にかかった費用ではなく、そこから得られた満足度で話をする方が健全です。

全てのビジネスに言えるのですが、大枠どうしてもかかってしまう費用が決まります。飲食店ならば、ほとんどの場合が労働集約型なので、人件費は多くなってしまいがち。そして店舗の広さと売り上げ規模がほぼfixで連動するので、家賃の比率も決まってしまいます。この収益構造を打破する事はとても難しく、飲食店を開業するならこのルールの中で戦わねばならない、くらいのものです。(現在は様々な戦い方で突き抜けることもできますが)

野球をやっているのに、サッカーのルールで勝負したいと言われても意味不明ですからね。なので、どのビジネスを始めるか?はこの収益構造も理解した上で始めないと数字の改善は難しくなります。

原価率0%で飲食店はできないので。

家賃50万円で20席の飲食店で回転しない場合、客単価×客数×営業日数で売り上げが決まり、客単価が1万円なら1日20万円、25日営業で500万です。家賃比率は10%。20席しかない店に1日500人は来れません。ルールの中で戦うしかなくなります。

しかし、このルールの枠の外で戦える場合、飲食店だとしても家賃比率を下げたり人件費率を下げたりする事は可能です。生産効率をあげたり、販売数を増やす事が出来、売り上げを伸ばし続けられるなら、ほとんどの数字は改善していけるのです。家賃が50万だとしても1000万円売り上げがあれば家賃比率は5%まで下がります。

作る事と届ける事。この両軸を改善し続ける事で事業は成長し、数字は変化していく。原価率もその中で大きく変わっていくでしょう。その中で原価率を掛けるのか、掛けざるを得ないのか、下げるのか、下げる事が出来ないのか、様々な選択肢が生まれる。そしてそれを顧客の満足度と従業員の満足度のバランスが取れるところを見定めて価格を決め、利益を産出する。

利益が出る=儲かる事は悪いことではありません。儲ける事=顧客満足度になれば良いのです。顧客を無視して儲けようとしては絶対に上手くいきません。自分たちの価値提供がしっかりとできると思うところで価格を決め、それによって原価率も決まる。というのが正しい価値の作り方なのではないでしょうか?


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