見出し画像

熊本市「市政だより」の『熊本の漱石4コマ』まとめました(2023.5-2024.4月号)

 熊本市より「熊本市の漱石の知名度を上げたいんです」とのご相談を受け、夏目漱石4コマ『先生と僕~夏目漱石を囲む人々〜』の中から熊本に関するエピソードを中心に選び、カラーにして「熊本市 市政だより」に連載することとなりました。

 2年間24回の予定で無事2年目に入りましたので、1年分の12回をまとめてみました。
※「熊本と漱石」の知名度を上げるのが目的のため、広報に掲載後ネット上への掲載については問題ないとのこと。

 正直なところ「元の漫画はもうあるのだからちょちょいと色を塗ればいいか〜」などと気楽に思っていたのですが……いかんせん古い漫画なもので、結局線画をほぼ描き直してから色を塗っています。

 当時は「こう描かなきゃ」と思っていたことが、今見ると囚われすぎて絵としてまずいことに気がついていないということは往々にしてございます。
かといって当時の絵の雰囲気を変えすぎてもよくない。なんだこの構図と思ってもそこは変えない……などなど、元の漫画の雰囲気を残しつつ、違和感の減った画面になっていればよいな!と思います。

 市の広報となると漫画に興味がない人の目にも入るので、台詞回しについては、刺激がありそうな用語や言い回しをマイルドに変更しました。あちらから要望があったり私の方で修正したり。事実が曲がらない範囲で読む対象に合わせて調整するのも作者の仕事のうちですね。
 補足文章も、漱石を知らない熊本市の人が読むことを前提に手を加えています。

 この4コマを読んで、熊本と漱石の関係をちょっとだけ知っていただければ嬉しいです。
(元データは解像度高めに作ってるので、連載終わったらどっかでパネル展とかやってもいいんですよ熊本市さーん!(笑))

森の都と呼ばれる熊本。その由来は、第五高等学校の講師として熊本にやってきた漱石が、市街へと続く下り坂から街を見渡し「熊本は森の都だなあ」とつぶやいた…といわれていることからだそうです。
お見合いし婚約した漱石と鏡子。ところが次の赴任先が熊本に。漱石は東京から遠い土地になるので破談にしてもよいと手紙を出しましたが東京でなくとも良いとの返事が。漱石は熊本で新婚生活を送ることになりました。
江戸っ子気質の面倒見のよさを持つ漱石は気軽に「うん」とは言わないけれど、引き受けたらとことん面倒を見るタイプ。熊本にいる間は家に友人を住まわせたり生徒が押しかけたり住まわせたり、女中がいたり犬や猫がいたり、そして子供が増えて…と賑やかでした。
熊本で撮影された夏目家の集合写真にはちょこんと座った子犬が写っています。写真では可愛いのですが、この犬はあまりに吠えるし噛みつくために「夏目家の獅子犬」と呼ばれていたそうです。残念ながら名前は不明です。
長谷川禎一郎は学生時代からの漱石の友人の一人で、漱石より先に五高に赴任していました。熊本時代の漱石のことを色々語り残してくれたおかげで当時の些細な日常を知ることができます。
漱石はお酒は嫌いじゃないが弱いタイプのようで、お猪口一杯を小鳥が水を飲むようにちびちびやっていたそうです。文豪といえば酒を飲んで暴れるイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、実は漱石も森鴎外も芥川龍之介も「下戸の甘党」だったりします。
当時の熊本第五高等学校はナンバースクールと呼ばれる各地のエリートが集まる高校の一つでした。そのため漱石が熊本に来る前に赴任していた松山中学校の優秀な生徒は五高に進学してくるので、このようなエピソードが残っています。
教える方だって下調べをしてきているんだから、教わる方だってちゃんと下調べしてくるべき!という主張の夏目先生です。たしかにそれはそうなのですが。なんだかんだいって、五高の生徒は礼儀正しいと気に入っていたようです。
後日、叱る回数が減ったので「忠告したおかげだわ」と思っていたら、「最近間違わなくなったんだよ」と。個人授業の甲斐もあり、生徒の出来がよくなったみたいです。ちなみに鏡子は漱石の十歳下なので、生徒たちと同じような年頃です。
今では考えられないような、時代を感じるエピソードです。怖い先生であると同時に、こういう一面もあるところが夏目先生の魅力だと思います。ちなみに生活に困っていた湯浅は、一時期漱石の家で書生として面倒を見てもらっていました。
物理学者・随筆家として名を残す寺田寅彦が初めて漱石の家を訪ねたのは、第五高等学校の生徒だったころ。試験の点が足りない級友の進級をお願いに来て、ついでに興味があった俳句のことを尋ねてみたところ親切に教えてくれ……二人の師弟関係はここから始まりました。
この時代、貧しいが勉学に励む若者を家に住まわせ、代わりに雑用などをしてもらうことがありました。書生を希望した寅彦ですが、先生の奥さんに挨拶しない、雑用しない、引越しの手伝いしない、先生の言うこと聞かない、そんな寅彦に果たして書生が務まったのかどうか…。

一年後、連載が終了しましたらまた13~24回分をまとめますのでお待ちください。
出典は以下をご参考ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?