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天気不予報士

また、予報を見るのを忘れた。

昼と朝晩の気温差が激しいこの時期、朝早いアルバイトに向かうと半袖ではいられない。眠い目をこすりながらタイムカードを切り、正装に着替える。エプロンの紐をキュッと締めると、身も引き締まる気がする。挨拶は絶対とされていて、それは欠かさない。7時からの業務はまだ人も少ない。客のいない店内は道がスッキリしていて、堂々と歩いて作業場へ向かう。自分の作業場へ着くと、社員とチーフマネージャー(ここからはチーフと呼ぶ)は既に作業をはじめている。ここでも挨拶は忘れない。たまにチーフは機嫌が悪いときがあるが、今日は良いみたいだ。しばらく作業をしていると年上の後輩、年下の後輩と集まってくる。2人ともまだ入って間もないため、教えながらの作業がはじまる。この職場で私はとても気にいられ、頼られている。さながらバイトリーダーのようだ。その後もいつも通り順調に進んだ。全ての作業を終え、タイムカード切り、その日はようやく解放された。

着替えるため、再び更衣室に行くと、そこは朝とはまるで違う場所だった。窓のない閉ざされた空間は、入った瞬間汗が滴る。まるでサウナだった。冷房の効いた部屋で作業していた体はそれに耐えられなかった。急いで更衣室を出、帰路へとついた。が、暑い。中が暑いなら、外はより暑いと気づくべきだった。半袖でも汗が止まらなそうな暑さであるのに、朝に合うように長袖にしてしまった。暑いのと寒いのはどちらかと言えば暑い方が苦手である。

また、予報を見るのを忘れた。

前もこんなことがあった。寒暖差が大きいのはやめて欲しい。調節が難しい。ウザイ。おっと、文句ばかり言っていても何もならない。なるべく家に早く帰ることにした。普段はながらスマホをして帰るのだが、ふと周りに目を向けると、以前よりも木々が青々と生い茂っていた。夏の訪れを感じながら、ハンカチで汗を拭き取る。一目散に家に帰ろうと思ったが、急に思いついた。アイスでも買って帰ろう。その欲望は止まらなかった。家の1番近くのスーパーに寄った。店内に入るだけで涼しさを感じた。多くの種類の中から氷菓を選んだ。店を出て、すぐに開けたい欲は何とか抑え込み、家の前まで来た。時刻は12時40分。実は家を出る時に今日の全ての時間を予想してエアコンが12時30分に自動で作動するようにしておいた。きっと部屋は理想のオアシスになっているだろう。そんな幻想を抱き、片手に抱えたアイスを握って、玄関の鍵を開けた。

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