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投資家のヨットはどこにある?

ゆうちょ銀行が、不適切な手続きで、高齢者に投資信託を販売していたのだそうだ。この問題は、約230ある直営店のうちのおよそ9割の店舗で発覚していて、社内ルールへの抵触は、1万5千件以上にのぼるのだとか。

漏れ聞くところによると、ゆうちょ銀行はそれで、購入手数料を3パーセント取っていて、おまけに販売員おすすめのアクティブファンドに至っては、信託報酬が年3パーセントというのだから、開いた口が塞がらない。

高齢者は、ゆうちょ銀行に近づかない、近づけさせない、それが賢明であろう。



フレッド・シュエッド・ジュニア著「投資家のヨットはどこにある?」は、1940年に初版が出た本だが、書いてあることは、現代でも十分通じる名著だ。決して風化しない普遍的な内容であり、別の見方をすれば、それだけ人のやっていることは、今も昔も変わらない(ゆうちょ銀行の問題でも明らかだ)とも言える。



本の冒頭、ウォール街の地図とともに、一つのジョークが紹介される。こんなジョークだ。

おのぼりさんの一行が、ニューヨークのウォール街を見学させてもらっていた。
ガイドが、ハドソン川に停泊してある、すばらしいヨットの数々を指さして言った。

「ごらんください。あそこに並ぶヨットは、みな銀行家やブローカーのものですよ」

気のきかない田舎者はこう聞いた。

「お客のヨットはどこにある?」

投資家のリターンは未知数だが、それに伴う手数料は毎回かかり、その時点で業者の儲けは確実であることを皮肉っているわけだ。

それでも現在は、昔に比べたら、コストはかなり良心的になってきているのではないだろうか。たとえば、バンガード社の商品であるVOOやVTIは、経費率が0.03パーセントという驚異的な数字だ。

そういった点から考えると、ゆうちょ銀行は、バンガード社の爪の垢を煎じて飲むぐらいでは、とても足らないだろう。そんな悲観的な気分も、本書を読めば、すこしは気が晴れるような気もする。

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