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褞袍の思い出

 新潮文庫から出た、満州国演義 第二巻を読んだ。
 第二巻では、関東軍が暴走して、五族協和による満州国の建国へと突き進んでいく。
 まあ、そのような話の本筋とは全く関係なく、ここでは、俺が少し気になったことを書いていきたい。
 ちなみに、第一巻のときのテキストはこちらから。https://note.mu/kouichikougo/n/n355ac0dd4e39
 作中、登場人物の日本人は、帰宅して風呂に入り、上がると、浴衣を着て、その上に褞袍を羽織る。褞袍。読めるだろうか。「どてら」だ。
 当然といえばそれまでなのだが、現代っ子の俺にとっては、そんなことが新鮮な驚きなのだ。
 褞袍は、関西地方では丹前という。もっと裾が短いと半纏、袖なしだと、ちゃんちゃんこという呼び名になる。
 褞袍が妙に気になりだした俺は、一着、アマゾンで注文することにした。

 届いた褞袍に袖を通した、その瞬間だった。記憶の中に眠っていた過去が、鮮明に蘇った。
 幼い時分、祖母の家に泊まった時、これを掛け布団代わりにかけて寝ていたのだ。袖がついているのが面白くて、そこにわけもなく腕を入れたり出したりしながら眠りについた。そんなことを、ありありと思い出した。
 
 俺は、新品の褞袍にくるまれながら、同時に、呆然としながら、幼き頃の思い出にも包まれた。

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