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靴の知識と #KuToo

仕事で痛いパンプスやハイヒールを強要するな!的運動 #KuToo がTwitterを中心に巻きおこっております。確かに痛い思いをして仕事をするもんじゃない。これは私自身もずっと足にトラブルを抱えていた身(そしてそれが全身に回ってくるまであっという間)ゆえによくわかります。

なんですけど。ね。

ちょっとその前に、パンプスや靴の正しい選び方しています?って思ったりしたわけですよ。

靴とは「甲」で留めるもの

靴と言ってもいろいろあるんですが、基本的に靴というものは「かかとの回転(人によって内回転外回転があり、これはあって普通)によって歪んだ歩き方を補正する」ために履くという一面があります。もちろん、「地面にあるトゲや岩から足の裏を守る」とかの機能や「服に合わせてドレスアップする」側面もあるわけですが。

で、ね。

靴は甲の部分で固定することで、「あしゆびを動かし、地面を蹴り、歩けるようにする」「かかとの回転によりずれて脱げていく靴を押さえつける」事ができます。

と考えると、「甲部分が大きく開いており、あしゆびとかかとだけ覆われてる」パンプスというものは、そもそも靴の本来の機能の一つが失われてるわけです。ぶっちゃけ、サンダルのもう少ししっかりしてるもの。
(注:サンダルの定義は「つま先がオープンなもの」。ミュールはサンダルの一種)

そりゃあ、足が痛くなるわけですよ。

パンプスにもぺたんこヒールはある

もう一つ、「パンプス=ヒールが高い」という思い込みがあります。が、パンプスの定義にはヒールの高さはなく、実際問題として、ヒールが低い(1~2センチ)パンプスも市販されています。

……なんですけど、なぜか #KuToo 被害者のみなさんが口を揃えて「私も痛い目にあった!」パンプスって、ヒールが5センチ以上あったりするのよね。

そりゃあ、足が痛くなるわけですよ。

本来のパンプスの目的

パンプスという靴は、もともと礼装用・正装用の靴でした。要は着飾ったりするときに履く靴であり、たくさん歩くとかずっと立ちっぱなしとかという用途は想定していない形状なのです。

……冠婚葬祭で立ちっぱなしはよくある?

もともと日本から生まれた靴ではないので仕方ないのですが、欧米では式典やパーティではちゃんと椅子が用意されているのです。立食パーティなどもありますが、そういう場所でも疲れたら座れるように椅子が用意されているのが普通。

ついでにいうと、パンプスは会場内でのみ履く傾向が強かったのです。部屋でも靴で暮らす欧米人でも、家から履いてくる人は少なかった(過去形。今は家から履いてくるようですが、徒歩移動がそこまで長くないからだそうな)靴でございます。

つまり。

家から職場まで2~3km歩き、そのまま8時間以上履きっぱなしで仕事し、家に帰るまで2~3km歩こうが履きっぱなしのパンプスっていう、現代の日本のオフィススタイルは、本来のパンプスが持つ用途外の使用方法をしているのでございます。

そりゃあ、足が痛くなるわけですよ。

オーダーメイドシューズは高い?

足が痛い状態で仕事をしていても、効率など上がるわけがありません。下手すれば、私のように身体の歪みから生じる病気になったりしてしまいます。医療費が3割負担とはいえ、この人の医療費は月1万を超えています。

この医療費がなくなれば、靴なんかバンバン買えるわけですよ!

オーダーシューズやオーダーインソールが高い高いと言っても、医療費3ヶ月分がチャラになるなら余裕で買えます(インソールだけなら1ヶ月分もしないし)。確かにオーダーシューズやインソールの値段だけ見たら高く見えますが、その分別のところで補填できれば問題はなくなるわけです。もっと言えば、仕事の効率が上がって給料が上がれば、高い靴の値段などチャラになる……と言いたいんですけど、残念なことに現在の日本では給料がなかなか上がらないわけで。むしろ仕事がバリバリデキる人ほど薄給だったりするわけでして。

悲しい世の中です。

そんなオーダーメイドシューズですが、決して優秀ではありません。というのも、靴だけで補正ができる範囲が限定されるからです。特にパンプスやサンダルハイヒール系のような甲を固定させない履物の場合、自分の足形をとって合わせても、足首の回転や扁平足、外反母趾などの影響で靴ずれや足の裏の痛みが発生してしまいます。

それよりは、インソールをオーダーしたほうがマシです。インソールはインソールで、どんな靴にも入れられるわけはないという問題点もありますが、オーダーインソールを作るときには足のサイズや足癖(回転とかね)をチェックする(はず)なので、足の痛みが発生しやすい癖は改善されやすくなります。

というか、補装具用途でない限り、靴のオーダーはあんまりおすすめしません。特にパンプスは。というのも、オーダーしようが市販品を買ってこようが、靴が足に馴染むまでに2週間程度かかるのです。馴染む前に長距離歩いたらどうなるか。

そりゃあ、足が痛くなるわけですよ!

ちなみに、インソールであっても、1週間程度は違和感があるものだと思ってください。インソールをつけて補正をかけると、今まで使っていなかった筋肉を使って歩くようになります。そうなると、使ってない筋肉が筋肉痛を起こすのは必死でありまして。さらに身体のバランスのとり方も変わるので足以外の筋肉が痛くなることもままありまして……。

そりゃあ、全身痛くなっても仕方がない。

「オーダーメイドシューズが合わない」 #KuToo の皆さんは、靴慣らし2週間の期間をちゃんとおいていたのか、気になって仕方がありません。おろしたての新品でいきなり8時間+α履き続けてたりしてませんよね?

(シューフィッターさんに「それは足の痛みどころか吐き気とか頭痛とか全身筋肉痛とか出てもおかしくないですね。今まで出なかったとしたら、全身の筋肉バランスが整っているか、たまたまゆるいブカブカ靴を履いていたかのどっちかです」と言われた人)

自分は甲高?いいえ違います。

私自身、実は足サイズは23.5EEEEだと長いこと思っておりました。ゆえに、パンプスがそもそも入らない、履けるパンプスなどないと、市販品に足を通しては思っておりました。っていうか、25.5ですら入らないってどういうことよ。

しかし、オーダーインソールを作る目的でシューフィッターさんに足の計測をしてもらったところ「24.5E」であると。ついでにいうとかかとが細めなので靴が脱げやすいタイプだと言われました。

シューフィッターさんいわく。

・靴はかかとに合わせ、指先は靴の中でグーパーができる程度余裕がある
・かかとが潰れたら靴の補正効果がなくなる(スニーカーであっても靴べらを使うのが正解)
・デザインによって長距離歩けるように作られた靴、短時間(せいぜい1時間程度)歩けるくらいの靴がある
・あしゆび関節下で固定せず甲の中心部分で固定できる靴が長距離歩くための靴
・足サイズは日や時間によって違うから、痛くなったり緩んできたりしたらその都度甲部分を締めなおせる紐やマジックテープ式がおすすめ
・(特に革靴は)足に馴染むまでに2~3週間かかる。痛くなったら予備の靴に履き替え徐々になじませるのがポイント
・フィッティングのときにかかとに指を入れて履く人がいるが、かかとの破損だけでなく「あしゆびを足先に入れすぎて痛みを感じて「あっていない」と思ってる人が多い(足先が尖ってる靴と、パンプスで多いらしい)ので靴べらを借りてフィティングしよう
ワイズ(甲幅)が広い靴は長い時間履いていても楽に感じるのだが、足がちゃんと固定されていないケースが多く、そこから扁平足や外反母趾につながりやすいので、(足休め用の予備としては優秀だが)普段遣いとしてはおすすめしない

まー、いっぱい言われました。

ちなみに甲の部分で留めるってどういうことよ?と言われそうなので書いておくと、このヘッダー写真のインソールに書いてあるブランドロゴラベルの足先側くらいの位置だそうです。

「それより先が広いから甲高なの私は!」

……えっとね。

扁平足だったり外反母趾だったりして、足裏の筋肉が弱まるとペターって広がって、足が痛むので。足裏(特にあしゆび)の筋肉を鍛え、靴で両サイド押さえつけるように支えてアーチを作ってあげると、足は痛くなくなるそうでございます。筋肉が付けば。

#KuToo なみなさんに言いたいこと

基本的に私自身は仕事用で必要もなくパンプスを履かせるということには反対でございます。なにせ一番最初の会社がタイトスカート制服+パンプス・ヒール3cm以上っていう意味不明な会社だったからね。もっとも私の所属部署が機器修理部門だった関係もあって、「タイトスカートとパンプスで屋根裏に登れるか!」と思っていたら上司もそう思っていたらしく、自前のパンツスーツ+ローファーに変わりましたが。大半の女性社員がプログラマーなこの会社初の女性修理部門配属なので、一悶着あったりしましたが、理解のあるダンディな上司に恵まれたので助かった一面はあります。

というわけで、罵倒とか「パンプスがどれだけ苦痛か味わってから文句言え!」じゃなくてさ

まず、相談を求めません?
苦痛を与えないと理解してもらえない?それ、どれだけ鬼しかいない職場なんですか。そんな職場は労基行きで問題なくありません?

あと、「痛い思いを体験したら」といいますけど、「別に痛くないじゃん?痛いとか言ってる #KuToo の人たちがおかしいんじゃね?」とか言われるケース、考えたことありませんか?
足のアーチがしっかりしてて、サイズやワイズが適切なパンプスを短時間履く場合、痛みを感じないケースが多いのです。また、自分の足よりワイズが広いパンプスの場合、人によっては「長時間履いていても他の靴より楽」と言い出すケースが考えられます。

というか、実はすでに言われてる。

苦痛を理解してもらうのは重要です。でも、痛い思いを体験したら考えが変わるというのは、それ「体罰を与えたらいい子になる」と同レベルな話です。そして、体罰を与えても人は変わらないように、パンプスを履いて痛い思いをしたところで #KuToo の人を憎むことはあっても、絶対パンプス!の空気は変わらないと思うのです。むしろ「こんなクソ生意気な女どもはパンプスの苦痛で言うことを聞かせるべきだ!」とか「その昔の中国は纏足と言って足を締め付け痛みを堪えることが美徳だった」とかのクソリプとの対立で、良い方向に進むとは思えません。

あと、「自分が苦痛」もいいんですけど「足の健康面」の問題の指摘を挙げていきませんか?足の健康面の問題は男性用の革靴にもあります。特に男どもはかかと潰して歩くからね。そういうのに慣れっこな男どもは玄関においてある人の靴を平気で踏み潰すからね……(実話)。

足の健康面から攻めていくのは、実は医療費削減にも繋がります。メタボ予防にも繋がります。冷え性改善にも不妊抑制にも繋がります。

「不健康になる靴で仕事をしないといけない社会情勢を変えて行こう!働き手が健康に働ける靴で仕事をしよう!」って運動に変えられませんかね?これは「パンプス・ハイヒール」だけでなく、革靴やブーツ、スニーカーなど全部の靴に当てはまります。

……というか、靴で痛い思いしているの、別にパンプスやハイヒールだけじゃないからね?革靴やスニーカー、ブーツでも同じ目に遭う人はいるのよ?

自分の足の正しいサイズと履き方を知らなければ。

今のままだと、単なる男女対立にしかなってないですよ?それじゃ意味なくありません?

それとも、まさか。

自分たちだけの環境が良くなればいいってわけじゃないですよ、ね?

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