台座となった人へ

「人間には世に出て行く奴と、そいつが出て行くために必要だった奴がいる。お前は世に出て行く奴で、オレはお前を世に出すために出会ったんだ。お前が有名になっても、オレの名前を誰かに言う必要はない。ただ、忘れないで欲しい」

誰とも出会わずに、ひょっこり世間に出てきて名を残す人は皆無だ。
人が生まれるにはまず親がいる。そして生きて行く間に、必ず他人と関わる。
良い、悪いと言うのはあったとしても、少なからず人は誰かに影響を受けたり、与えたりしながら生きていく。

歴史に名を残し英雄と呼ばれる人々は、人間としての魅力にあふれた人であっただろう。
金や地位や名誉で人を従えたとしても、無くなれば驚くほどの速さで誰もいなくなる。

人としての魅力に欠けている人は、否定したくてもしきれず、金を追いかけ名誉を求め地位を欲しがる。
人にとって一番怖いのは孤独だ。
器以上のものを欲しがるものは、人望以外で自分を飾り他人を惹き付け、つなぎとめるために無理をする。
それが無理だとしても、着飾ることの方が自分を磨くよりも楽なことだから逃げる。
そんなものが本当ではないと知りながら、自分に暗示をかけることでごまかす。

人望はなににも勝る武器になる。
ただ当人は気づいていないことが多い。
優しく受け止め、思いやりを持って接する。
言葉にすれば簡単な事。でもそれを当たり前のようにやるのが英雄なんだろう。
そしてその英雄も、名もない誰かの影響を受けているはずだ。
歴史に名を残す人の中はたまたまそんな存在になっただけかもしれない。
年表の中には、名もなき英雄も埋まっている。

語り継がれている人たちの話を、読んだり聞いたりする時に、その台座となり英雄を立たせている人たちのことを思い浮かべてみたい。
意味のない人生などない、きっとそんなつぶやきが聞こえるはずだ。

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