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アナログ(のよう)なサービスはなくならない

世の中にはたくさんのサービスがあり、日々便利になっていますが、時々、何故こんな中途半端にアナログなんだろう、とか何故ネット完結にしないのだろう、と感じることはないでしょうか。

今回は認知機能の側面から考察したいと思います。加齢に伴い、カード払いや振り込みを嫌がったり、マンションの玄関の鍵を開けることはできてもエントランスの扉を遠隔で開けることができなくなります。認知機能の低下の一つの記憶力の低下により、目の前で行われていることは判断できても、目の前で行われていないことを想像して判断することが難しくなってくるのです。

目の前で自分が手に取ったものをレジでお金を払うという行為はすべて自分が見ているところで行われることから、一旦覚えておくという行為がいりません。また、リアルのものを見て買えば、想像したものと違う、や注文トラブル(記入・入力場所を間違える、数を間違える)も起こりません。ネットでの買い物では、手にするまでに時間がかかるので一旦覚えておくという行為が発生します。別に高齢者でなくても宅配の荷物が届いたときに、あれ?何か頼んだかな?と思うことはないでしょうか。認知機能が低下してくるとその『覚えておく』という行為が難しくなり、通販で注文したものを自分が注文したものではないと言い張るようなことになったりします。生協を利用している高齢者は多いですが、注文方法を見ていると、まず買いたいものを全部紙に書きだして、それらを眺めで吟味し、吟味した内容を注文書にうつしていきます。そしてその手書きの紙をよく見えるところに張り出し、1週間後に来るものを何度も目にすることで購入したものを忘れないという工夫をされています。それでも猫の砂10kgが10袋も届いてしまった、などの注文に関するトラブルはよく聞きます。

マンションのエントランスのカギの開錠ができるためには、自分はマンションに住んでいて、共用の大きな玄関があり、お客さんを家の中に入れるにはまずその大きな玄関のカギを開けてあげて、その後自分の部屋のカギを開けてあげないと入れないということを覚えておかなくてはいけません。ピンポンがなったら、玄関まで行き玄関の鍵を開ける(アナログのカギをひねって開錠する)ことはできても、どこについてるか分からないカギを遠隔で開ける(ボタンを押す)というのは認知機能が低下してくると難しくなってきます。ピンポンがなったら家のカギを開けるというのは、玄関の外に人がいる気配がして、「○○さーん開けてくださーい」というやりとりもできるので、何をすればよいかが分かりやすいのです。来訪者が画面に映っても、それがエントランスの映像なのか玄関前の映像なのか分からなければ使いこなすことはできず、うさんくさいセールスであっても結局玄関のカギを開けてしまうのです。

体が不自由になってきたら、ネットのサービスを駆使すれば快適な生活が送れるのではないかと想像するかもしれませんが、ネットなどの遠隔のサービスを使いこなすには、それを一定期間覚えておく能力がなければ、届いたものにびっくりしたり、通帳を見て「知らない引き落としがある!」と焦ったりしてしまい、うまく使いこなせなくなってしまうのです。

そのような症状が出てきたら、キャッシュカードを解約する、公共料金の支払い以外引き落としにしないというように管理する量を減らすという工夫が必要です。物の量と同じで、記憶する容量が減れば、管理する量を減らすということが原則です。何も考えないとサービスはどんどん複雑になっていくものです。意識してシンプルにしていくことが大切です。また、リアルでつながっている商店の人にお買い物を頼むなど近所のネットワークを強固にしておくことも役に立ちます。

マンションのエントランスを開錠できなくなった方はマンション管理人さんが常駐しているマンションでしたので、事情を話し、エントランスは管理人さんに開錠してもらうことにしていました。大型マンションだったためか、そのような対応をしているおうちは何件かあると話されてました。マンションに住まれる場合はバリアフリーだけでなく管理人さんがどこまで対応してくれるのかの確認もしておいたほうがいいと思います。

一方、サービス提供する側は、高齢者もターゲットとしている場合、完全にネット完結にするのではなく、ネット完結であってもよりリアルに近い状態を再現(手に取るように購入できる工夫)、や顔見知りの担当者が画面に出てきて会話しながら注文、やネットを使うためのサポート(ワクチン予約お助け隊のようなサポート、生協の注文であれば配達員が注文のサポートもするサービス)、などアナログに近いサービスが求められると思います。


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