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本への愛を謳う読書遍歴コミックエッセイ/はるな檸檬「れもん、よむもん!」

ただ、紙に文字が印刷してある
それだけのものに
人生が救われるような瞬間が
何度もあったのだと
大げさでなく
そう思うのです

「れもん、よむもん!」は、著者のはるな檸檬さんがご自身の読書遍歴を紹介するコミックエッセイです。

はるな檸檬さんは、幼い頃から生粋の活字中毒。父親の書斎で本を漁り、学級文庫を片端から制覇、国語の教科書は配られた当日に一気読み。
本書では、そんな著者が影響を受けた本の数々が、その時の瑞々しい感動と共に語られています。
山田詠美の「ラビット病」、吉本ばななの「キッチン」、村上龍の「69」など……心の拠り所になり、原点になった本の数々。
そして、ミステリアスでカッコいい級友のはるなちゃんとの出会いと、彼女との他愛ない日々のこと。
本を愛する全ての人に読んでほしいコミックエッセイです。

この本はこんな人におすすめ

①本をこよなく愛している
②自分は活字中毒だと信じて疑っていない
③今、読書スランプに陥っている

それでは、本作の魅力を紹介していきたいと思います、ぴょん!

*本への愛を謳う一冊

可愛らしく緩いタッチのイラストで描かれていくのは、色々な本と、かけがえのない友達との出会いです。
コミカルな語り口には、ページをめくるたびにくすっと笑ってしまいます。
まるで、本当にはるな檸檬さんとお話しをして、「ああだこうだ」と読書談義をしているかのような気持ちになりました。
その中でも最も「熱」を感じたのが、冒頭の文章も引用させていただいた「生きるために」という章でした。

わたしはね
あの頃読まずには
生きていかれなかった

これは、著者の級友である、はるなちゃん(なんと、偶然にも同じお名前のお友達です)の言葉です。
「本を読む」という行動、「読みたい」という衝動、「読まなきゃ」という使命感にも似た何か。私自身、何故こんなに本に惹かれるのだろう、と思うことがあったのですが、その理由が少しだけ分かったような気がします。
本を愛してやまない全ての方に、配って回りたいほど素敵な一冊です。

*感情を共有する読書遍歴

本書の中の「忘れ物番長」という章でも語られていますが、この本に詰まっているのは著者の「『感情』の記憶」です。これまでどんな本をどのくらい読んで、それらはどんな内容なのか、という読書案内ではありません。
この本を読んだとき、こんなことを思った。こんなふうに感じた。
そんな、ふわふわした「感動」が、この本では手に取るように伝わってきます。
私とはるな檸檬さんの読書遍歴はほとんど重なっていなかったのですが、それでも、ページをめくっている間だけ、感情を共有しているような不思議な高揚感がありました。
本書で紹介されている本の内容なら調べればいくらでも出てくるし、それこそ、実際にその本を手に取って読了してしまえば、「読書ガイド本」はお役御免です。
しかし、この本には、はるな檸檬さんが感じた唯一無二の感動が詰め込まれています。紹介されている本を読み終えた後も、私ははるな檸檬さんと「感情を共有しに」この本を開きたいなと思いました。

ちなみに、「れもん、よむもん!」は文庫本で読むことをおすすめします。なぜなら、本編を読み終えた先に、著者が憧れてやまない山田詠美さんの解説が添えられているからです。この胸アツ展開、見逃せません。

本が好きな気持ち、本への愛を再確認することができる本作、ぜひお読みください、ぴょん!


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