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”誰か“の日記、のぞいてみませんか?/「日記形式の小説」おすすめ3選!

変わった小説が読みたい!

小説には色々なジャンルがあり、色々な形式があります。書簡体小説などはもはや定番ですが、今回は、「日記形式」の本を三冊紹介していこうと思います。どれも読みやすいのでおすすめです、ぴょん!


*原田マハ著「総理の夫」

原田マハさんといえば、キュレーター(学芸員)の経歴をもち、多くの美術小説を出版しています。しかし、本作は政治がテーマの小説です。映画化も決定しています。

20××年、42歳という若さで内閣総理大臣に就任した相馬凛子。彼女は優れた美貌と正義感をもち、国民から圧倒的な支持を得ています。夫である日和は、鳥類学者でおっとりとした性格ですが、凛子が総理大臣になり、自身もファースト・ジェントルマンとなります。凛子が内閣総理大臣に就任した日から日和が書き始めた日記によって、物語は進んでいきます。

個人的には、この作品は単行本で読むと、より雰囲気が出ると思います。本編で日和が日記帳にしているのは赤い表紙のノートであり、単行本の装丁も赤色になっているからです。日和の日記を盗み読みしているような気持ちで読み進められます。


*アゴタ・クリストフ著「悪童日記」

こちらは、固有名詞を一切使わず、戦争下の小さな田舎町で生き延びる双子の兄弟の生活を描いた物語です。双子の兄弟は、様々な「練習」を行い、戦争を生き延びる術を身に付けていきます。アゴタ・クリストフはハンガリー生まれの亡命作家であり、この物語にも、戦争の色が濃い影を落としています。

物語は、双子の一人称「ぼくら」で語られ、彼らが「真実しか記さない」というルールのもとで綴った日記によって進みます。シリアスなテーマを数多く抱えていますが、固有名詞のないどこか現実味の薄い文章なので、すらすらと読むことができます。海外文学入門にもおすすめです。

しかし、その淡々とした言葉の中に、容赦ない残酷さ、悲壮さが見え隠れしています。一人ずつに全く個性のない「ぼくら」も、戦争によってそうならざるを得なかった哀しい存在に思えてしまいます。そして、ラスト一行の衝撃は凄まじいです。こうさぎ、しばし放心しました。


*辻堂ゆめ著「あの日の交換日記」


交換日記といえば、女子小中学生の間で絶対に一度は流行る遊び。この物語は、入院中の女の子と女性教師、双子の姉と妹、男の子とその母親、交通事故の加害者男性と被害者女性、会社の上司と部下、という一風変わった人々の間で紡がれます。全ての交換日記が繋がった時、ある真相が見えてくる、ミステリーの爽快感と切なくあたたかい感動を同時に味わえる小説です。

辻堂ゆめさんは、このミステリーがすごい!大賞優秀作「いなくなった私へ」でデビューした作家さんです。なので、謎と伏線回収はばっちり。それだけでなく、切なさや重さの中に、あたたかなものが残る物語です。

読み終えた後には、「誰かと交換日記がしたい」と思ってしまいました。
ちなみに、交換日記は日本特有の文化であるとか。アニメや漫画で交換日記というものを知った、という外国の方もいるそうです。


「日記形式」の小説を、全部で三作紹介しました。たまには、一風変わった小説に触れてみるのも、読書の幅が広がるのでおすすめです。

気になる作品があれば、是非チェックしてみて下さい、ぴょん!


(2021年5月9日にはてなブログで公開した記事を、一部加筆修正しました。)

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