室外機・エコキュート騒音問題 不可解な結末

騒音被害者が弁護士つけて公害審査会に裁定申請した結果、棄却となった案件がある。
裁定書を読むと不可解なことが続出している。


札幌市における室外機等からの振動・低周波音による健康被害原因裁定申請事件(公調委令和3年(ゲ)第17号事件)
https://www.soumu.go.jp/kouchoi/activity/sapporoshi_shindo_teishuuhaon.html


個別案件なので総務省HPで表示する必要はない気がするが、実は、裁定書全文が読める。

結果的には、1回目は調停打切、2回目は原因裁定棄却となった。

・1回目は調停打切

https://www.soumu.go.jp/main_content/000909993.pdf

北海道公害審査会の調停事件(甲11、審問の全趣旨)
申請人らは、平成30年3月、被申請人らを相手方として、北海道公害審
査会に調停を申請した(以下、この申請に係る調停事件を「前件調停事件」という。)。
同年7月18日、北海道公害審査会の調停委員及び北海道庁の職員による現地調査や、騒音、振動の測定調査が実施された。
前件調停事件は、平成31年3月、当事者間に合意が成立する見込みがないと調停委員会が判断したことから、打切りとなった。

・2回目は原因裁定棄却

https://www.soumu.go.jp/kouchoi/activity/sapporoshi_shindo_teishuuhaon.html

札幌市における室外機等からの振動・低周波音による健康被害原因裁定申請事件(公調委令和3年(ゲ)第17号事件)
事件の概要
 令和3年11月26日、北海道札幌市の住民2人から、近隣の住民2人を相手方(被申請人)として原因裁定を求める申請がありました。
 申請の内容は以下のとおりです。申請人らに生じた吐き気、嘔吐、食欲不振、筋肉痛、手足のしびれ、動悸、ふらつき、めまい、不眠は、被申請人ら宅の室外機及びエコキュートから発生する振動と低周波音によるものである、との裁定を求めたものです。

事件の処理経過
 公害等調整委員会は、本申請受付後、北海道公害審査会に対して原因裁定申請の受理について意見照会を行い、受理について特段の支障はないとの回答を受けたので、直ちに裁定委員会を設け、被申請人ら宅の室外機等から発生する振動及び低周波音と申請人らに生じた吐き気等の健康被害との因果関係に関する専門的事項を調査するために必要な専門委員1人を選任するとともに、事務局及び専門委員による現地調査等を実施したほか、1回の審問期日を開催するなど、手続を進めた結果、令和5年10月18日、本件各申請をいずれも棄却するとの裁定を行い、本事件は終結しました。

裁定書において不可解な記述が続出している。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000909993.pdf

・第1 当事者の求める裁定 申請人らに生じた吐き気、嘔吐 、食欲不振、筋肉痛、手足のしびれ、動悸 、ふらつき、めまい及び不眠の症状は、被申請人らの自宅に備え付けられたa製室外機、エコキュートから発生する振動及び低周波音によるものである。

・被害者は加害者がエコキュートを床下に設置していると主張するが、加害者は設置していないと主張

・加害者宅が木造2階建て、道路隔てて斜め側にある、被害者宅の3階が最も強く振動や低周波音を感じる場所と被害者が述べている

・低周波音の感覚閾値は、G特性音圧レベル92dBを下回り、短時間測定においては、本件空調システムの設定温度を最大の29℃とし、風量の設定を強の暖房運転として本件室外機を稼働させた上で測定を実施したところ、1/3オクターブバンドでの分析結果は、申請人宅の3階寝室ではいずれの帯域でも心身に係る苦情に関する参照値を下回っていた

・被申請人宅におけるエコキュートの設置の有無について前記第2の3⑴アのとおり、申請人らは、被申請人宅には床下にエコキュートが設置されており、これがほぼ毎日24時間稼働し、振動及び低周波音を発生させている旨主張する。しかし、申請人らがエコキュートが設置されていることを示す証拠として提出している電力会社の職員との会話(甲4の1)は、その設置の事実を認めるに足るものではなく、北海道公害審査会の現地調査や公調委の現地調査でも、被申請人宅にエコキュートが設置されていることは確認されなかった(甲11、職1)。他に、被申請人宅の床下にエコキュートが設置されているとの主張を裏付ける客観的な証拠はなく、申請人らの主張は推測の域を出ないから、採用することができない。以上によれば、被申請人宅にエコキュートが設置されていることを認めることはできず、申請人らの上記主張は理由がない。

・音は距離減衰するものであるところ、本件室外機近傍における実測値について、同所に設置した騒音計から申請人宅の2階ベランダまでの距離を15.1mとして求めた距離減衰後の推定値と、申請人宅の2階ベランダでの実測値と比較すると、別紙3の「表3-2-3」のとおりとなり、推定値は申請人宅の2階ベランダでの実測値を下回った

・ 申請人らが証拠として提出する札幌市役所による低周波音の測定結果報告書(甲9)及び株式会社gによる騒音・振動レベルの測定結果報告書(甲10)は、測定条件や測定状況も不明であり、これらに基づいて何らかの事実を認定することは困難であって、採用することができない。

・申請人らの主張
職1の17頁の写真40及び41は、給湯器の写真とのことであるが、型番が写されていない。写真に写されているのは、給湯器ではなくガスストーブである。

・検討 本件空調システムの取扱説明書(甲3の4~6)によれば、本件空調シス
テム及び本件室外機は、家庭用のものであり、一般的な戸建住宅に設置することを想定した商品であるといえる。また、前記第2の2⑷のとおり、本件室外機の仕様上の運転音の大きさは、冷房時が49dB、暖房時が50dBであって、格別大きな運転音が生じるものではなく、この点からも一般的な戸建住宅に設置することが適さないとはいえない。

騒音測定は、加害者宅、被害者宅で同時に実施されており、裁定書上に記載ある騒音値は、加害者宅<被害者宅となっている。
加害者がごまかしたか、うまく対応した案件とは思えない。加害者は、言いがかりをつけられたとと思っているはずだ。

(被害者の主張によれば)被害者宅3階での被害が最も深刻であることから、他の要因の可能性を疑うところである。

ただし、参照値に関する別の解釈も存在する。

https://296fd.co.jp/correspondence-of-the-municipality-for-the-low-frequency-sound/

その記事を読んで驚いたのは、低周波音を測定した結果、参照値以下なので問題ないとして終了としている点です。そしてその説明で納得されない場合でも、それ以上の調査や説明は行わず、苦情処理を終了しているという点です。

環境省のサイトによると、参照値以下であっても低周波音が原因である場合も否定できないため、その場合には詳しく調査するように、と書かれています(「低周波音問題に関するQ&A」出典:環境省)。

被害者宅の立会いも行われている、まったく不可解な事案なのである。

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