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雪国における年末年始のディスアドバンテージとその解決法について


0.はじめに

2023年がもうすぐ終わるので、年末時事ネタを書きます。
年末年始に連休が取れる方は、この時期に長期旅行を計画する方もいるでしょう。
しかし雪国、とりわけ豪雪地帯に住む方は、雪のせいで思うように出かけられないこともあると思います。たとえ連休序盤の天気がよくとも、帰ってきたときに雪が積もっている可能性があるからです。
筆者も数年前の年末に実家帰省、その後帰ったら雪のせいで自宅の駐車場が雪で埋め尽くされていました。やむを得ず少し遠くの駐車場に停め、雪かきしてから車を入れるはめに。
このときはバスか鉄道で帰ればよかったかな、という後悔の念とともに、
「マジで雪ふざけんな」
という義憤に駆られました。

こういうわけで、雪国に住む人は年末年始において、
「長期旅行に出かけづらい」
というディスアドバンテージを負うことになります。
旅行好きな人は、それだけの理由で故郷を捨てて雪の少ない所に移住する人もいるかもしれません(まあ、雪が嫌いなだけかもしれませんが)。
そうなると、ますます雪の少ない太平洋側に人口が一極集中しそうな気がします。
それはそれで問題なので、今回は、このディスアドバンテージをどう捉えるかについて考えていきます。


1.家で過ごし、人混みを避ける

そもそも、年末年始は家で過ごすという解決法です。どこにも出かけない。家で過ごすなら、住む所がどこだろうと旅行アドバンテージは関係ありません(雪かきはしなくちゃいけませんけれど)。
まとめ買いで物資を備えておけば、吹雪で交通がマヒしても、買い物に行かざるを得ないという最悪の状況は避けられます。

毎年、ニュースで年末年始の交通混雑が報じられる度に私は、
「うわぁ・・・。やだなあ」
と感じます。
まあ、混んでるのは高速バス、特急、新幹線、飛行機だけで路線バスや普通列車は通常通りかもしれません。が、乗り換えでどのみち大きい駅を経由しなければならない場合、その混雑を見なければなりません。
筆者のように人混みを見るだけで嫌悪感をもよおす人はそれだけで辛いでしょう。
それを避けるために、巣籠もりをするという方法です。
まあ手っ取り早いですが、これはこれで退屈になりがちなので、別の手を考えておく必要がありますね。


2.徒歩で行ける所にだけ行く

「乗り物が混雑するなら、乗り物に乗らなければいいじゃない」
という考え方のもと、年末年始はヒューマンスケールの旅で妥協する方法。

旅の醍醐味のひとつに「非日常性」があります。これは通常、自宅から離れれば離れるほど感じやすいです。なぜなら、地域が変わると、気候、建物、食べ物、文化、風土など様々なものも変わり、それが新鮮に映るからです。
そういう意味では、徒歩で行ける範囲で「非日常」を実感することはやや難しいかもしれません。

しかし、あくまで難しいだけであって、不可能なわけではありません。行ったことがない店に入るもよし、ちょっと遠い公園に行くのもよし、隣町まで歩くのもよし。
遠くに行くだけが旅ではないのです。むしろ、身体感覚に根差した「旅」をするなら、最強の移動手段は「間違いなく」徒歩です。これは断言します。
なぜなら、徒歩こそ移動の基本だからです。大地を踏みしめることができるのは徒歩だけです。後は宙に浮いたり、箱の中に押し込められたり、とにかくリアルな身体感覚から遠い方法しかありません(自転車は徒歩に近いけど地面に接するのは足ではなくタイヤ)。
「地方自治は民主主義の学校」という言葉がありますけれども、筆者はこれに倣い、
「徒歩移動は(身体に根差した)旅の学校」
と主張しておきます。


3.普通列車や路線バスで近くを巡る

それでも徒歩だと移動範囲が狭すぎる、と思う方におすすめしたいのがこれ。普通列車や路線バスを使いこなし、お出かけしてみましょう。
ポイントは、特急や新幹線が停まる駅、大きなバスターミナルで乗降しないこと。そこは混むので、上手く回避しましょう。

そもそも、最寄り駅の近くにある駅や、市内の路線バスに通勤通学以外の目的で乗ったことのある人は少ないのではないか、と思います。
北海道でいえば、札幌駅に降りたことのある人はたくさんいるでしょうが、苗穂駅や稲穂駅に用がないのに降りた、という人はほとんどいないでしょう。これらの駅は、観光用の駅というより、通勤通学、あるいは通院のための駅であることが多いからです。
青森県でいえば、津軽新城駅や油川駅、筒井駅。これらは全て新青森駅又は青森駅の隣駅ですが、地元利用者以外で降りたことがある青森県民はどのくらいいるでしょうか。
おそらく、あまりいないと思われます。弘前のひとつ北にある撫牛子(ないじょうし)駅も同様ですね。

バスも同じです。
たとえば、札幌市豊平区の地下鉄福住駅から北広島市の柏陽台団地にバスが出ていますが、団地住民以外で終点まで乗る人はまずいないでしょう。つまり、そこは住民以外未知の領域というわけです。
このように、同じ市内でも行ったことがない、なじみがない所はたくさんあります。駅の北口はよく知ってるが、南口は全然知らない、というのもよくあるでしょう。
実は年末年始は、こうした

「行こうと思えば行けるのに、めんどくさいから行ったことがない」

所に行く絶好のチャンス
でもあるんですね。特に雪国の場合、GWやお盆は雪の心配がないため、遠くに出かけたくなるでしょう。そういうときには「近くより遠く」になりやすく、近場は敬遠されがちです。
だからこそ、冬は自宅近くの「未知の領域」へ冒険に出かけるのもありだと思います。「雪のせいで思うように出かけられない」と聞くと、あたかも致命的なマイナス要素に思えて、故郷を呪いたくなる人もいることでしょう。しかしこれは見方を変えれば、
「夏は遠くへ、冬は近くへ」

という風に、季節で旅先の距離設定を上手に使い分けている、ともいうことができるのです。

考えてみてください。
雪が少ない地域に住む人は年末年始の大雪を恐れる必要がなく、移動手段をフル活用すればいくらでも遠くへ行けます。雪国民にとっては羨ましく見えるかもしれません。
しかし、そのせいで彼らが地元より「遠くのどこか」ばかりに行くとしたらどうでしょうか。地元の店も景色もろくすっぽ知らないのに、遠くにばかり足を伸ばすのは、ある意味貧しいことではないでしょうか。なぜなら彼らは、
「そこに住んでいるだけ」
というベッドタウンへの揶揄と同じ批判を受けかねないからです。

地元を味わってから、遠くへ行けばいい。
私も散々北海道を旅してから、やっと青森へ足を踏み入れました。なぜか。
北海道もろくに知らないのにいきなり本州上陸は軽薄な売国奴みたいで嫌だし、飛行機を使えば東京にひとっ飛びできるとはいえ、いきなりそれをやると最寄り県の青森を一瞥もくれずスルーしてしまい、それは壁抜けバグみたいなある種のチート技のように感じ、やりたくなかったからです。
まあそれは筆者の余談ですが、とにかく
「近場をしっかり固めてから先に進む」
ことは意識しておいても良いと思います。


4.ローカル神社に行ってみる

正月といえば初詣を思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、「初詣が終詣」になってしまう人もいると思います。後はせいぜい受験や大会シーズンの参拝くらいで、ほぼ神社に行かない人が大勢だと考えられます。
まあ、神社に行く行かないは自由なので別にいいんですが、それでも普段から神様なんて信じていないのに、
「都合のいいときだけ神頼み」
という態度には首を傾げざるを得ない、というのもまた素朴な実感です。
神頼みをするのであれば、普段からの「詣」もやりませんか?というお話ですね。

だから、年末年始に毎日、面倒なら隔日でも良いですが、とにかく神社に行く習慣をつけるのもひとつの選択肢ではないかと思います。
筆者も今年車を廃車にした関係で出発時刻が早くなり、朝の参拝が日課だった時期がありました。最近は雪の関係で見送っているのもありますが、時間的余裕と動機が結びつけば、正月とか大事な時期とかは関係なく、いつでも参拝へ行ける状態です。
まあ私はご利益目当てというよりかは昔出会った人を思い出すために神社へ行く、という側面が強いかもしれません。黄金時代の仲間や旅先の面白かった人など、いろんな人を思い浮かべて参拝しますね。

年末年始に地元の神社に通いつめるなら、遠くへ出かける必要はなく、旅行ディスアドバンテージも負わずに済みます。
地元の神社ばかりでは飽きるというならば、住宅街にある小さい神社に参拝してみるのも手です。街を歩くと以外な所に神社があります。大抵は小さい神社で、簡易的な鳥居とお賽銭箱があるだけで、社務所も特にありません。
知名度が低く、観光地化されているわけでもないため、ローカルな色彩が強く、ヘタに大きな神社より神聖な気分が味わえると思います。

日光東照宮や伊勢神宮、明治神宮など有名な寺社仏閣は観光地化され過ぎて風情が失われている側面もあると聞きます。京都は特にオーバーツーリズムの弊害がひどく、鳥居が単なる「映えスポット」になっている、ポイ捨てがひどいとか(神社とは)。
ニーチェに言われますね、
「神は死んだ」
と。


5.おわりに

というわけで、
「雪国、年末年始に遠くへ行けない問題」
への私なりの答えでした。
まあ、
「雪かきや交通障害が悪夢のような辛さ」
という根本的な問題は解決されていません。それでも、
「雪のせいで遠くへ行けない!だからウチの地域は大っ嫌いだ!ちくしょうめぇー!」
というニコニコ動画でお馴染みの「あの方」のような強烈な不満は、多少抑制できると思います。
雪国の方々は年末年始こそ、地域を自らの黄金の足で回って「地元力」をつけ、定期参拝で「霊的パワー」を身に宿し、冬が明けたらその蓄えた力を開放し、旅路へと向かう。
と、いうのも粋があって良いかもしれません。
「◯◯(豪雪地帯)は住む所じゃない」
という不名誉な物言いを跳ね返す
「雪国民魂」を発揮したいものです。
それでは、風邪に気をつけて良い年末年始を!

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