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読書の記録 筒井康隆『文学部唯野教授』

文学部の唯野教授は大学には内緒にしてペンネームで作家活動をしています。学部内では作家なんて低俗なことをやる輩は教授なんぞではないという空気があり、ばれないようにばれないように唯野教授は細心の注意を払っているんですが、学生のなかにも唯野教授があの野田耽二だと気付いたものがいたりして。

大学の内幕について取材もしつつ、けっこう生々しい教授間のやりとりなんかも再現されてるみたいですが、どこまでがリアルなのか。いや、そんなものは特別重要なことではないのかも。そういう世界だと思って読めばそんなアホなと冷静になる、しかし、これが案外真実なのだとしたら狂ってるとしか言いようがない。

唯野教授の授業が第一講の「印象批評」から第九構の「ポスト構造主義」まで受講できるのもこの小説の面白いところで、小説を読みながら文学史の勉強までできてしまう。あとがきによると第七講「記号論」の内容が「間違いだ」という批判が出て、それなりに大きな騒動になったらしいんですが、そういうところも含めて全て冗談にしてしまうようなところがあるから筒井康隆さんのことが好きです。

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