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読書の記録 菊池寛『真珠夫人』

 昼ドラが、かなり話題になった『真珠夫人』。たわしコロッケの衝撃だけ覚えていたのですが、菊池寛の小説が原作だとは知りませんでした。どうしても、菊池寛とたわしコロッケが結び付かなかったもので。

 テレビドラマの『真珠夫人』は横山めぐみやったんですね。僕はてっきり小沢真珠やと思っていたのですが、小沢真珠が出てたのは『牡丹と薔薇』っていう別の昼ドラでした。こちらは、たわしコロッケではなく財布ステーキでしたね。記憶というのは曖昧なものです。余談ですが、佐野史郎さん演じる冬彦さんが主役のドラマ『ずっとあなたが好きだった』の主題歌を、割と多くの人が松任谷由実さんの「真夏の夜の夢」だと勘違いしているのですが、サザンオールスターズの「涙のキッス」が正解です。「真夏の夜の夢」は、同じ佐野史郎さん、賀来千香子さんが出演する『誰にも言えない』の主題歌です。記憶というのは曖昧なものです。

 ドラマの『真珠夫人』は、原作をベースとしながらも、かなりの脚色が加えられており、もちろん、たわしコロッケも原作にはありません。少し期待しながら読みましたが、最後まで読んでもやっぱり出てきませんでした。

 菊池寛にとって初の通俗小説であり、ご本人いわく「純文学小説よりも難しい」そうなんですが、その境目も記憶と同じくらい曖昧なものなんじゃないかと思うし、時代が変われば純文学が通俗小説に変わるということもあるでしょうし、実際、菊池寛も『真珠夫人』の物語内での文学談義でも、登場人物にそんなことを語らせていました。

 恋人から引き離され、成金のおっさんと結婚することになり、法律さえ男社会を擁護するような世の中に憤り、夫となった成金のおっさん亡き後は、言い寄ってくる男どもを翻弄することに悦びを見出す瑠璃子。成金のおっさんに嫁いでからは、最後は金と男の欲望に屈するのではないかとドキドキしながら読みましたが、そういう展開にはならず、全編通して「ここは越えてはならない」という一線を守っているようにも思いました。川端康成の解説の言葉を借りるなら、それは「通俗作家菊池氏の道徳と節度」だったのでしょう。

#令和4年読書の記録
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