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エッセイ これだから大阪人は

 道頓堀に飛び込む阪神ファンの映像を見て「これだから大阪人は」と眉を顰めた人は多いと思うが、当たり前のことながら、大阪人皆があんな風ではない。おそらく九割九分が、同じ扱いをされて腹を立てている。多くの阪神ファンもさぞご立腹だろうと思う。
 なんとなくできあがっている大阪のイメージといえば、阪神ファンでお笑い好き、維新が好きで、ヒョウ柄を身に纏い、どぎつい関西弁を喋るという感じだろうか。全部に当てはまる大阪人に私は会ったことがないが、全部に当てはまらない大阪人になら会ったことがある。

 昔、FUJIWARAの藤本敏史さんが、木下優樹菜さんとお付き合いされている頃、家の近所のコンビニへジャージ姿で買い物に行った際、週刊誌に写真を撮られ、その場面の藤本さんの台詞として、「おまえら、何、わいのスケのこと、じろじろ見とんじゃ、ワレ?」と書かれていて、「俺、なんぼほどどぎつい関西弁使うねん。スケとかワレとか言うたことないわ!」と言っていた。

 大阪メトロの心斎橋駅を下車し、改札を出ると向かいにパルコがあり、その洗練された佇まいが眩しすぎて私は粉塵となり、この世から消えてしまうんじゃないかと思った。先日京都にオープンした高島屋T8にはそんな危うさを感じなかった。普段から心斎橋に慣れておけば、あの眩しさにも慣れるんだろうか。
 そういえば、高校生の頃、滋賀の北部からアメリカ村へ買い物に行ったときも若者文化の坩堝に呑み込まれ、記憶を喪ってしまったものだが、さすがに今、アメリカ村へ行ってもそういうことは無くなった。

 心斎橋を北上、船場センタービルで安くてかわいい靴を買い、気に入ったので履いて帰ることにした。買った靴の入っていた箱に履いていた靴を入れて持って帰ってきたはずが、いつの間にか、消えている。どうやらどこかに忘れたらしい。ああ、あそこへ行くとやっぱり記憶がどこかへ行ってしまう。

蠱惑暇
こわくいとま

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