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東京日記7

 隣は足広げおじさん、向かい側も人が多くて外の景色が目に入らない。こういうときはスマートフォンでSNSやら何やらをチェックしたくなるのだが、左ポケットに入ってあるそれを取ろうとすると、どうしても足広げおじさんの右足に触れてしまいそうになるから取れない。足広げおじさんはスマートフォンでどうやらゲームをしているらしい。どうやら耳にはワイヤレスイヤホンを装着しているらしい。私調べによると、メガネ装着率とワイヤレスイヤホン装着率は今拮抗している。数年前、ペットの数で猫が犬を越えたらしいが、数年経てばワイヤレスイヤホンはメガネを越えるのではないか。
 ロングシートの右端にいる私の左隣は足広げおじさんに占拠されているから、自然私の意識は右の踊り場にいく。あの空間を踊り場というかどうかは知らないがあの空間を踊り場と表現する気持ちは汲んでいただけるんじゃないかと思う。
 寝るのはもったいない気がするが、寝ないで何があるといって、今の武蔵野線には何もない、というか、ありすぎて邪魔になっているから邪魔なものを全て遮断するには寝ないまでも目を閉じるしかない。それに、これまで足を踏み入れたことのない場所を移動している興奮のため、寝付くことは不可能に思われた。降車する武蔵浦和が終着駅ではないため、寝過ごしてはならぬという緊張感もあった。
 結果、私は一駅すぎるごとに踊り場の扉上部の路線図に目を遣りながら、目指す武蔵浦和に近づいていく電車の外観を想像することになった。
 南越谷の次が東川口で、その次が東浦和だ。
一見すると越谷の南側が川口の東側と隣接しているのか、と思うのだが、それならば果たして川口の東側と浦和の東側が隣接し得るのだろうか。越谷と川口と浦和はどういう位置関係になっているんだろうか。スマートフォンを広げられる環境になったら、埼玉の地図を検索しようと思ったのだが、まだ検索はしていない。

続く
※続かないかもしれない

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