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駅前に書店がある町 JR新宿駅

 「JR新宿駅の東口を出たらそこは私の庭」椎名林檎さんの「歌舞伎町の女王」の一節である。あの曲から醸し出されるなんとも艶っぽい雰囲気がとても好きで、リリース当時、この曲が収録されているアルバム『無罪モラトリアム』を聴きまくった。ちょうど大学一年生の頃で、滋賀県北部の故郷を出て一人暮らしをはじめたばかり。歌詞の世界観やジャケ写、椎名林檎さん自身の佇まいにいたるまで全てが都会的で洗練されているように思えた。

 そうやって学生の頃、ずっと憧れていた大遊戯場歌舞伎町に今、私は月に一度から二度、宿泊させてもらっている。都会的というか、都会であることは間違いないが、思ったより洗練されてはおらず、どちらかというと雑多で混沌。条例により派手な看板が皆無の京都暮らしが長いと、どぎついピンクや紫のネオン煌めく町並みは余計に眩しい。知らない女性に声を掛けられてほいほい付いていくと、法外な金額を支払わなければならないから気をつけましょうなどという行政からのアナウンスがうるさい。

 そんな歌舞伎町の入口あたり、靴のABCマートのすぐ近くにあるのが紀伊國屋書店だ。1階から8階まである大型書店。京都は数年前にジュンク堂が閉店してしまい、この規模の書店は無くなってしまった。ジュンク堂だってこんなに大きくはなかったはずだ。紀伊國屋書店新宿本店を見上げるたび、やっぱり新宿って、歌舞伎町ってすげえなって思う。語学工学科学新刊美術工芸デザイン漫画なんでもある。1階から8階まで並んでる本を眺め続けるだけで1日が終わってしまう。あんなけたたましいネオンの輝く性欲剥き出しの遊戯場の入口とは思えない。町だって人が作り住まう場所なんだから、人と同じで表の顔と裏の顔があるものなのだ。
 大遊戯場歌舞伎町はたぶん一生、私の庭にはならないだろうけど、紀伊國屋書店新宿本店のことは庭にしてみたい。
 駅前に書店がある町が好きだ。

蠱惑暇
こわくいとま

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