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グローバルでも通じる経営管理体制構築へ、海外経理の視点

こんにちは、テラドローンで海外経理として連結決算を担当している水野です。私のファーストキャリアは日系証券会社の証券マンでした。その後カナダへの1年間の留学を経て、フランスに親会社を持つゲームパブリッシャーの日本法人で英文経理を担当している中で、親会社が日本法人かつグローバルに展開している会社で連結決算業務や計数管理を行いたいと思いテラドローンに転職し、現在1人目の連結会計担当として働いています。

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これらの経験から、連結決算の重要性とその複雑さを実感しました。連結決算についての書籍やウェブの情報は数多くありますが、実務に基づいた体験記事はnoteでも少ないように思います。そこで今回、未経験ながら試行錯誤を重ねて突き進んだこの怒濤の1年間の実体験をベースに『連結決算業務』『海外子会社との連携』の2つに焦点を当てたnoteを書くことにしました。実際に直面した課題とその解決方法について整理していますので、この記事が少しでもグローバル展開を考えている人の役に立てれば嬉しい限りです。

グローバル展開の経理視点

近年、政府もスタートアップの海外進出を後押ししていますが、KPMGの考察資料でも明らかなようにグローバル企業の経営管理体制の構築は大きな壁となっています。

https://kpmg.com/jp/ja/home/insights/2023/10/overseas-expansion-startup.html

グローバル展開を目指す企業にとって、経理面での大きな課題が2点あります。

1つ目は海外子会社を含む連結決算業務です。親会社と子会社の財務データを統合し連結財務諸表を作成することが主な業務ですが、現地通貨から日本円への換算、それぞれの現地会計基準の把握、税制対応など、さまざまな要件があります。

2つ目は、海外子会社との連携です。言語の壁やそれぞれの国ごとの国民性はもちろん、遠隔拠点であるため、どうしてもリアルタイムで情報を把握するボトルネックになります。数値データを期日通りに収集・統合できるかどうかが重要になります。

このように連結決算業務と海外子会社との連携は、グローバル展開における経理の大きな鍵となります。

テラドローンの経営管理部内で私が実施してきたこと

テラドローンの経営管理体制も、ここ1年でグローバル対応ができるよう経営管理部長統括の下、それぞれのメンバーの専門性を活かし、急速に組織を強化してきました。

海外経理として私が特に入社してからテラドローンで取り組んできたことは、以下の業務です。

・連結会計業務
(各海外子会社からの連結パッケージの回収&連結精算表の作成)
・既存グループアカウンティングポリシーの確認・更新
・勘定科目マッピングの正確性の確認、グループ勘定科目の選定・更新
・海外子会社管理
(海外子会社経理担当や現地会計事務所とのコミュニケーション)
・内部統制の強化/統一化のサポート

その他経営管理チームで取り組んでいること
・M&A前のDD(Due Diligence)実施

・買収後の管理体制維持・構築(PMI: Post Merger Integration) 

連結決算業務について

概要

ここではまず初めにテラドローンでの連結決算業務の流れについて簡単に説明できればと思います。

1. 各子会社への連結パッケージの配布、正しい数値の回収

連結決算の最初のステップは、各子会社から財務データを集めることです。このために、私たちは連結パッケージを子会社に配布して、必要な数値を回収します。連結パッケージとは、親会社が各子会社から入手するデータ収集のためのフォーマットで連結決算の正確性を高めるうえで必要不可欠なツールになります。主な構成は、現地会計ソフトから出力した貸借対照表・損益計算書、現地勘定科目からグループ勘定科目への変換を行うために必要なマッピング表、マッピング後の貸借対照表・損益計算書、内部取引管理表になります。

■連結パッケージの作成の流れ

パッケージ作成のマニュアル

2. 連結単純合算

連結パッケージで集められたデータを基に、グループ全体の数値を単純合算し、グループ全体の大まかな数値を把握します。ここでのポイントは現地通貨から日本円への変換です。テラドローンはスタートアップの中でも、様々な国・地域に子会社が点在しているため、様々な通貨を計算上扱う必要があります。

3. 連結修正仕訳

言わずもがな連結決算の醍醐味ともいえるパートです。

法人単体の会計とは違い、企業グループの会計では、個々ではなく、親会社+グループ会社を1つの大きな会社として捉えるため、グループ間の取引(内部取引)とそこから発生する利益(未実現利益)を正確に把握し、適切に消去することが求められます。また、グループ内での増資(みなし取得仕訳)や株式の追加取得などの資本取引、PPA(Purchase Price Allocation)を含むのれんに関する仕訳処理、持分法適用会社に対する持分法処理、段階取得処理、さらに、子会社の数値取込が月ズレしていることで生じる未達取引の処理やTransfer Adjustment(為替換算調整勘定)の処理など数々のテクニカルな会計論点の適切な会計処理も求められます。

外部の会計士の先生からのダブルチェックを受けながら処理をしていますが、ここまで経験できる企業はないのではないかと思わざるを得ないボリューム&難易度です。正直インプットだけでもかなりやりがいがあります。

4. 取締役会、決算短信での報告

連結精算表作成後、得られた情報を基に、毎月の取締役会で報告します。この報告は、グループ全体の財務状況と業績を外部に開示するための重要な手段です。

テラドローンでの連結決算業務財務諸表作成の流れ

直面した壁について

私がテラドローンに入社したタイミングでは、連結決算業務はアウトソース先の会計士の先生が対応され始めたばかりで、ちょうどこれから連結決算を立ち上げていくフェーズでした。海外からの情報が当時かなり少なかったこともあり、海外子会社の経理担当とコミュニケーションを取るところや外部の会計士の先生と今後どのように進めていくかすり合わせを行うところからスタートしました。

直面した大きな壁の1つは、各グループ会社がある国々特有の商慣習と会計処理をキャッチアップすることでした。例えば、ヨーロッパにおけるHoliday Allowance(祝日手当)やオランダのCapital Contribution(資本貢献)といった、地域特有の会計処理の把握は、連結パッケージの回収やアカウンティングポリシーの更新に直結関わってきます。

このような複雑な会計処理に対応、理解するため、マッピングシートを作成しました。マッピングシートは、グループ勘定科目への変換を行うための、会計上の辞書のようなものです。進める上で、現地の会計事務所やスタッフと何度も会議を行い、コミュニケーションの際の言語の違いが大きな障壁となっていることがわかりました。例えばUniflyの子会社の財務諸表にはデンマーク語のものもあり、マッピングを行うために翻訳ソフトを使って翻訳することもありました。

マッピングシートのサンプル

また、あらゆる会社を様々な手法でM&Aしているテラドローン特有の会計処理のキャッチアップも大きな壁の1つでした。例えば、Uniflyの段階取得は支配獲得や減損処理、またTranslation Adjustment(TA)や内部取引の把握など、テクニカルな課題に直面した時は、外部の専門家に確認しながら進めることもありました。

また余談ですが、実は仕訳の管理含め連結精算表の作成はシステムではなくExcelを使っています。スタートアップ企業ならではの難しさにも立ち向かいながら外部の会計士と連携しつつ、数十個のタブで管理しています。これを私たちは愛着を込めてマンモスExcelと呼んでいます笑

海外子会社との連携について

グローバルに展開するテラドローンでは、全グループ会社の数値とビジネスの透明性を高めることが重要な課題でした。取締役会資料の海外動向部分・予実差異分析の更新時には子会社の会計ソフトに潜り込み、仕訳の正確性の確認まで、現場の動きを把握するところからはじめました。情報が集まることで、子会社会計の透明化を進め、資金繰りの実態を把握し、増資のタイミングやCF(キャッシュフロー)の資料を作ることができるようになりました。また、チームの子会社管理担当との連携や会計監査の補助など、多岐にわたる業務を遂行してきました。

海外子会社との連携での課題

特に困難だったのは、社内の現状把握からスタートし、何もわからない状態からどのように進めるかを考えることでした。現状把握のために、積極的に子会社担当者に連絡を取り、密に連携を図ることを心がけました。初めの挨拶をビデオ会議で行い、相互の信頼関係を築くことが重要であると学びました。また、過去の情報を遡り、その当時のことを知っている人物や上司にも相談しながら紐解いていく作業が多かったです。

実現できたこと

最初は完全にアウトソースされていた連結業務も、いまでは1営業日で締めることができるまで効率化しました。外部の会計士のダブルチェックを受けながらも連結業務の一部を内製化するというバランスの重要性を学ぶきっかけとなりました。特に、先程も記載しましたが、減損やTAなどのテクニカルな連結論点に関しては、外部の専門家との連携が不可欠です。

入社当時は、子会社とコミュニケーションを取っていた担当者が子会社から数値を回収していましたが、いまでは数値報告のフォーマット化して、予実比較資料や内部取引のリスト、滞留債権の資料など、決まったスケジュールで提出してもらう体制を強化しました。各子会社とのコミュニケーションや、情報収集を大幅に効率化できました。

グローバルな職場では、国民性の違いやコミュニケーションのスタイルの多様性に適応することが求められます。日本人のように時間に正確な国は少なく、以前の職場ではメールの返信が3週間後に来ることもありました。この経験から、国民性(ダイバーシティ)を把握して、逆算して計画を立てることの重要性を学びました。

最後に

このように様々なタスクを1年間という短期間で駆け抜けてきました。
連結決算業務と海外子会社との連携は、テラドローンのようなグローバルに展開する企業にとって、複雑で挑戦的な業務です。しかし、このプロセスを通じて、グループ全体の財務状況を正確に把握し、外部に信頼性の高い情報を提供することが可能になります。これは、グローバル市場での成功を支えるための重要なステップです。

もちろんまだまだ粗もあり最終目標である『グローバルプラットフォームの完全構築』には程遠いですが、今後もグローバル統一の連結会計ソフトの導入プロジェクトやIFRS(国際財務報告基準)での開示への転換など様々なやりがいのあるタスクの可能性を秘めているのがここテラドローンです。私はテラドローンに入社し、1人目の連結会計担当として働いていることを誇りに思っています。この記事に目を通して下さった経理の方やグローバル展開を目指している方などにとって実務ではこのように連結しているのか!など何か響くものがあれば幸いです。ご覧いただき、ありがとうございました!

先日プレスリリースが公表されましたが、アメリカのAloft社の株式を追加取得し持分法適用になりました。テラドローンの魅力の1つはグローバルを常に意識し目まぐるしいスピード感で経営陣が失敗を恐れずにビジネスを拡大していることだと思います。尊敬できる先輩方と共に自己研鑽し日々刺激的な毎日を過ごしています。

最後になりますが、テラドローンではグローバルで挑戦したい意欲のある方を募集しています。ぜひ共感される方いましたら一緒にグローバルプラットフォームの完全構築を実現しましょう!



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