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「コミュニケーション」の一言で片付けてほしくない話

自分は企業法務を15年以上担当し、少し管理監督者もやったことのある社会人です。特に上司から部下の「コミュニケーション」にばかり焦点が当てられた書籍・ブログ等が散見されますが、上司も部下も経験した立場からすると、部下側の「コミュニケーション」の視点が抜け落ちている(省略されている)のがとても気になっています。

「コミュニケーション」は便利な言葉だと思います。
でも簡単に使ってる人が多すぎないか?自分の考える「コミュニケーション」の意図が相手にしっかりと伝わってるか?
日頃感じているコミュニケーションのあり方について書いてみます。


コミュニケーションを細分化してみる

コミュニケーションを大別すると以下のようになるそうです。

「言語」と「非言語」
更にこれを細分化すると、
言語は「伝える力」「聴く力」
非言語は「伝える力」「読み解く力」
になるとのこと。
これは実体験としても納得のいくところですので引用させていただきました。
詳しい内容は上記記事をご覧ください。

「伝える力」について

伝える力が取り沙汰される例としては、上司から部下に対する目標設定や、日々の業務指示があげられると思います。
 あいまいな指示であれば、部下は何をしなければならないのかがわかりません。なので自分が指示を出す立場(又は組織横断的な業務を主動する立場で他部署の協力を仰がなければならない状況)であれば、以下のことを必ず意識して伝えるようにしています。
①なぜこの仕事が必要なのか
②なぜアナタ/部署に頼むのか
③成果物/成すべきは何か
④期限

大抵の本や書籍は、上司から伝える場面にしか触れていません。おかしくないですか。部下だって上司や周囲に「伝える」場面はありますよね。
 目標設定をする際は、会社が一方的に組織目標を定めたりもするので、それを管理監督者が個々人に割り当てる方法や、会社によってはボトムアップ形式で個々人が組織に対する目標設定をする、なんてこともあるかもしれません。
 部下自身が目標を示されてどう感じるのか、その仕事を通してどう成長したいか、成長ビジョンが描けないのであればアドバイスが欲しいなど、しっかりと自分視点で上司に対し説明を求める場面というのは生じ得るものかと思います。

日々の業務にしても同様です。業務指示は毎日のように行われますので、業務報告をしっかり行う。これも「コミュニケーション」であり、報告を通して自分の業務遂行状況を「伝える」必要があります。日報、週報などといった形でやっているところもあろうかと思います。
 にもかかわらず、「どうせ読んでないだろう」と安易に考えたり、報告を行うことが目的となってしまい、「伝える」ための情報精査の手を抜くのは、いちビジネスパーソンとしていかがなものかと思います。

「聴く力」について

よく「傾聴力」という表現がされていると思います。
こちらも主に上司が部下の意見を引き出す、といった趣旨で使われることが多いと思います。コーチングが混在してないか?と思う場面もちらほら。

一方で部下の傾聴力について述べられる書籍などは、少なくとも自分は知りません(もしあればご紹介いただければと思います。読んでみたい)。
聴く力というのは、「伝えられたこと」について、それをしっかりと聴くこと。であれば、これも上司と部下どちらにも必要な能力なはずです。
 ですので、コミュニケーションは「伝える力」だけでも「聴く力」だけでも成立せず、伝える力と聴く力が両方ないといけない、それも当事者全員に、ということになります(この場では知的障がい者の方とのコミュニケーションは一旦除きます。)。

「読み解く力」について

伝える行動と聴く行動ができていても、まだコミュニケーション成立には足りないものがあります。
今度は「言ったことを正確に理解する力=読み解く力」が必要となります。

コミュニケーションは、自分の言いたいことだけを言えばそれでよいというものではなく、お互いの立場、社会の常識、得ている情報量、伝えてよい情報量(インサイダーやトップシークレットなものなど伝えられないものもある)などにより、伝える力・内容が変わります。
 上司の指示にしても、部下の相談にしても、相手に伝える際に、「相手にちゃんと伝わるように」話さなければなりません。なので上司だ部下だは関係なく、万人皆持っていなければならない考え方であると思います。

コミュニケーションの成立は「相手に伝わる」ことが必須条件

常々、双方向性が問われる共通の必須スキルであるコミュニケーション能力が、なぜか上司から部下に対するコミュニケーションという使われ方で終わっている点が、不思議に思っていました。
 自分が管理監督者になって初めてわかりましたが、部下は上司をスーパーマンみたいに扱う傾向があります(会社側変わっても、少なくとも自分が関わった人らはそういう振る舞いが見られます)。
 上司をCCに入れたメールを1件送る場合に、あなたと同じことを部下10人が行ってたら、上司は10件見なきゃいけないですよね。みんなが5件送ったら50件、10件送ったら100件。そんなの瞬時に見れるわけないでしょ、ということが、部下視点だと理解できてない方がかなりいます。

よくメール+電話はいる/いらない論争をXで見ますが、自分は「いる」派です。少なくともメールを送ったことが相手に「伝わる」行為には違いありません。伝わればメールもちゃんと読んでくれます(たぶん)。

コミュニケーション能力は、「伝わるように伝える」「ちゃんと聴く」「言ってることを読み解いて理解する」が全てセットになった高度なスキルであると思います。上司・部下の立場によらず皆備えるべき必須のヒューマンスキルと言えるんじゃないでしょうか?

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