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転職エージェント業のモヤモヤするところ

私は転職エージェントの仕事が好きです。転職が決定すれば転職者も、採用企業も、自分も嬉しい三方よしの仕事です。

とはいえ、8年ほど携わってきたなかでモヤモヤする部分も出てきました。当初はまったく気にしていなかったのですが、もしかしたら「採用が決まって初めてお金が発生する」成功報酬というビジネスモデルに心の引っ掛かりの要因があるような気がしてきました。


転職エージェントの仕事は、応募前後で工程が大きく区別されます。
応募前の工程として、企業や求人の魅力を伝えて、応募意思を獲得する活動。
応募後の工程として、面接トレーニングや面接日程調整、評価フィードバックなどの活動です。

つまり何が言いたいかというと、応募前にもたくさん仕事はしているということです。
しかも、どちらかといえば難易度が高いのは応募前工程なんです。

だって、そもそもその企業や求人のことを知らなかった転職活動者に対して、いかにあなたにマッチしていて、かつ企業からも求められているかを訴求して、振り向いてもらわなくてはなりません。この点ではけっこう広告やマーケティングっぽい仕事だとも思います。

具体的な仕事の流れの一例です。
もともと自分となんの接点もなかった転職活動者をビズリーチのデータベース上で発見します。
(レジュメだけを見てマッチ度を判断します。1人の候補を見つけるのに100〜200人以上チェックすることもざら)

次に反応を得られるように文面を工夫してスカウトメールを送ります。
(ビズリーチだと返信率はざっと10〜20%、もし他スカウト媒体だと返信率1〜5%程度)

反応が得られたら面談をします。ここで求人の魅力を伝えて応募意思獲得に取り組みます。
(実際にすぐ応募するのは50%くらいでしょうか。情報収集だけしたいだとか、すでに応募済みだとか、他案件を期待したいとか、返信してくれた動機は意外とさまざまです)

そうしてようやく1人の応募者を選出できるわけです。


私がモヤモヤを自覚したのは、いざ応募者を選出できたこのタイミングで、応募先の企業がこんな対応をするのを見たからでした。

「いまエージェント経由の応募はストップしていて、自社HP経由でのみ応募を受け付けてます。お伝えが遅くなってすみません」

いや、もうそちらの会社の魅力を伝えるためにさんざん活動しているわけなんですが。それでHP経由で応募したところで、うちにはなんの売上にもならないんですが。

転職エージェントとして、すでにサービス提供をしているのに、あくまで成功報酬のビジネスなので、これだと何も金銭を生まないわけなんです。GDP的にも無価値な活動となってしまいます。

いくら採用に向けて意味ある活動をしていたとしても、採用企業側のちょっとした対応一つで労力が無駄になってしまうということは他にもよくあります。

打ち合わせをして求人票も作ったのに、その矢先にすぐに採用中止になったりとか。紹介手数料など契約内容をかなり調整して社内承認も取ったのに、相手企業が契約書への署名と返送を全然してくれなかったりとか。

転職エージェントのビジネスモデルが成功報酬であり、採用決定まではお金がかからない、ひいては無料での活動範囲が広いということが背景にあると思っていて。
先に例に挙げたような企業が特別な悪意を持って活動しているとは一切思わないのですが、うまく気持ちの収まりどころがないです。

無料で動いた(動かされた)だけで何も生み出さなかった、というケースがそれなりにあること。しかも、採用企業側の動き方次第で本来なくせるはずの無駄であるケースがそれなりにあること。これらが、私にとって転職エージェント業のモヤモヤしてしまう側面です。

もちろん、選考に進んで、結果的に採用につながらず縁がなかったというケースすべてを、売上にならなかったからといって無駄だとは全く思いません。
転職活動者にとっては、自身の相場感や企業情報を得る学びや気づきの機会として価値はあったでしょうし。転職エージェントにとっても、採用される人材の理解が深まる機会となります。

なんでしょうね、効率や生産性を高めようと思ったときに、こうした「売上につながらない動き」が一定数排除できない点に、自分でコントロールできない窮屈さを感じてしまうことがあるのです。

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