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「フィルム」という制約とクリエイティビティ

一生懸命フィルムの不便さを無くしデジタルの世界でクリエイティブな表現ができるカメラを作ってきた身としては、最近のフィルムの復活やフィルムカメラの人気は不思議な気持ちである。

一方で、自由度の増したデジタルの中で、どのように撮影の動機を生み、作り出した表現に意味を持たせるのかという点に注目してUXデザインをおこなってきたのも事実である。そこにはある種の苦労や克服すべき課題を設定し、それを乗り越えることで意味や価値を増幅させるストーリーが考えられていた。

一番簡単なのはSNSで人気競争をさせて、嫉妬や悔しさを持たせる方法であるが、こういったものは豊かな表現を生みにくく、最初に人気が出た表現のバリエーションが大量に発生して終わってしまうことが多い。

それに対して「フィルム」という制約は人のクリエイティビティを自然に引き出す体験を内在させている。その特性は制約から解放されたデジカメ時代だからこそ特別な意味を持っているように思う。

撮影枚数が限られている

デジカメとフィルムカメラの一番の違いは撮影枚数である。フィルムは35mm版では24枚から36枚程度の枚数しか撮影できない、他のフォーマットではもっと少ないものもある。

写真は何を撮るかを決めることでもあるので、撮影枚数が限られていることで、一番の大切や好きを考えることができるようになる。

設定がシンプル

フィルムを選んでカメラに詰めてしまえば、ISO感度も色温度(ホワイトバランス)も固定してしまう。発色やトーンなども現像やプリントの要素もあるがモノクロームフィルムを使えばそれで限定してしまう。

残る操作は、シャッター速度と絞り値の組み合わせで、どのように光を取り込むかということと、どこにピントを合わせ、どんなフレーミングとタイミングでシャッターを切るかということしか残らない。

操作できるものが限られているから、自然と被写体を探したり観察する時間が増え、魅力を発見できるようになるのかもしれない。

プリントを手にする

スキャナーを使っていきなりデジタルにする人もいるかもしれないが、多くの人は現像とプリントを同時に依頼するはずだ。

プリントという最終形態を得ることにはスマホで写真を見るのと違う「作品感」がある。プリントは1枚しかないのでスマホの写真をSNSに載せるのとは価値が違って見えるのかもしれない。(焼き増しすればもちろん増える)

クリエイティブは動機・実行と同じように結果が伴うことで感じられるものなので、プリントの満足感はフィルム写真の魅力の一つである。

歴史とストリーがある

フィルムカメラの魅力に興味のある方は沢山の書籍が出ているので読んでみると良い。

フィルムカメラの楽しみは実際に撮ってみるということだけでなく、フィルムカメラがもつ歴史やストーリーの世界が魅力の半分をつくっている。だから「書籍+撮影」がベストUXといえる。

Twitterのタイムラインで大村 祐里子 さんの書籍が話題になっているのでフィルムカメラの記事を書いてみました。まだ手に入れられていませんがちょっと気になっています。(隣のフィルム女子が買ってこないかなww)

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