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カメラを買う時代から、撮り方を買う時代に。「ガイドカタログとミラーレス」

カメラ売り場にいくとさまざまなカタログが置かれています。カメラのカタログというと表紙にカメラが大きく写っているものが一般的ですが、最近ではカメラを使っているシーンや人物が描かれた表紙のものも増えてきました。

さらにページをめくった中身でもカメラそのもののカタログではなく「撮影ガイド」の形式の中に、さりげなく(?)カメラやレンズの情報を入れていく形態へとさらに進化してきています。

もちろんメーカーも、撮影ガイドとは別にカメラそのもののカタログをきちんと用意していますが、もしかしたらガイドの方を先に手に取り購入するユーザーもいるのではないかと考えました。

機能や性能ではなく、そのカメラを使うとどんな写真が撮れるのか、どんな楽しい体験ができるのか、自分をどんなスタイルのイメージに変えてくれるのかを素早く知る方法として、このようなカタログに思わず手を伸ばすという訳です。

間接から直接へ。想像から体験へ。

カメラを買うということは、カメラのデザインやスペックを見て、そこからどんな使い勝手や写真が撮れるのかを想像しワクワクすることであり、また撮影するときも様々な設定の数値から写真の仕上がりを想像してシャッターを押し、写真が出来上がるまでドキドキして待つというのがフィルム時代のカメラの楽しさの一つだったと思います。

つまりほとんどのステップで「間接情報による想像力」が求められており、それが写真にある種の楽しさ、ゲーム性(ギャンブル性)を与えていたのかもしれません。

このような間接的な情報から想像力を膨らませて楽しむことは、万人にできることではありませんので、より多くの顧客にカメラを売るためには、より直接的な情報に置き換え、誰でも特別な知識や経験を必要とせず体験できるようにすることが求められていました。

その欲求を実現するのに、最適だったのが「カメラのデジタル化」であり「液晶モニタやEVFを使った撮影スタイル」だったのです。

そしてそれをさらに進めたのが、撮影ガイドのカタログなのだと考えることができます。

一眼レフからミラーレスへの転換は必然の流れ

フィルムカメラにおいて間接情報から「正確」に結果を想像する能力には知識や経験が必要であり、ある意味でプロカメラマンはそこを保障することが存在価値の一部だったと言えます。

スポーツや報道、ブライダルなど二度と無い瞬間を、「確実に」写真に残すことに価値があったのです。(もちろん芸術性という面の価値も重要です)

ところが、デジタル技術によって、撮影に対する不確実性はかなりの部分が無くなり、写真が撮れたかどうかだけでなく、どのような写真になったか、なるのかということが直接的に分かるようになったのです。

そのことだけを考えると楽しみが減ったようですが、実際には低いリスクでより多くの表現を楽しむことができるようになりました。
現在の写真は「新たな表現」や「新たな被写体」「新たな瞬間」を競い合う時代になったと言えます。

オリンパスの「アートフィルター」は、撮影前に液晶モニターやEVFに効果が表示されることで、特別な知識がなくても、直感的なセンスだけで確実に強い表現を使いこなすことができる。想像ではなく創造するための機能になっている。
(画像はオリンパスPENサイトより引用 画像にリンクあり)

最近、ニコンとキヤノンからフルサイズのミラーレス機が相次いで発表されましたが、小型化やレンズ設計の自由度の話題ばかりで、「写真表現の拡大」についてはあまり触れられていないのが私としては少し不満です。

現在はまだ、一眼レフとミラーレスが「同等」というイメージで扱いたいのでしょうが、10年後のポテンシャルでみればあらゆる面でミラーレスの方が上位になることは間違いありません。

ニコン、キヤノンのミラーレスは、これまで一眼レフしか知らなかった人たちにミラーレス体験をさせてしまいます。
カメラ雑誌の投稿で入選するようなレベルの人たちがミラーレスを使うということです。

カメラそのものではなく、どんな写真表現が楽しめて、どんな撮影スタイルが体験できるのかを求め始めているユーザーが、ミラーレスを体験したとき、写真表現にどんな変化が起きどんな経験を語ってくれるのでしょうか。発売される日か楽しみです。

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