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夢の記録術

1、前日からの準備

布団に入り、「今夜は必ず夢を覚える」と強く念じます。寝る直前まで、意気込むことはやめないでください。
実はこれが一番大切なことで、夢を”意識する”ことが何より重要なのです。
また、寝しなに甘いものやチーズ、揚げ物を大量に食べないように。胃に負担がかかり、バイトの夢のような現実的で疲れる夢や悪夢を見やすくなります。

2、起床時

できれば目覚ましは使用せず、自然に起床することが好ましいです。
大概の人は、朝の目覚ましの音にびっくりして折角見た夢を忘却してしまいます。寝坊ができないなど、やむなく目覚ましを使わなくてはならない人はできるだけ早く寝るなどの努力をしましょう。
いくら眠たくても、2度寝には注意してください。また夢を見ることもありますが、大抵1度目に見た夢を忘れてしまいます。どうしても二度寝をしたい場合は、枕元にメモを置くなどし、2度寝に突入する前に必ず記録をとっておいてください。(私は枕元に置いたティシュ箱にメモをしていました)
キーワードだけでも書いておくと、夢を思い出す時にだいぶ役に立ちます。

3、さあ、本格的に夢日記をつけましょう

夢から覚めた後も、すぐに起き上がったりせずしばらく目を閉じてゆっくりしましょう。寝返りを打っただけで全て忘れてしまうこともあるので、寝姿も極力変えないようにしてください。
そのまま顔の向きを変えず、目をつむり、夢の内容を思い出すことだけに注力してください。
ここで2度寝をしてしまったら全てが終わります。
寝ぼけたまま日記をつけるのも素敵なことです。オートマチックに身を委ね、半分夢の中にいる状態でペンを走らせると、起きている時には想像もつかないような不思議な文章が出来上がることもあります。
夢は極めて忘却しやすいので、とにかく忘れないうちに記録をとることが重要になります。

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夢というものは、自分自身が語りべでもあり、鑑賞者もまた自分だけという、この世で1番極私的な創作物だと思います。
私は生きていて何もいいことがなかった頃、毎日夢日記をつけ、寝るだけで増殖を続けるこの創作物を読み返してはほくそ笑んでいました。

現実が退屈な時こそ、この世とは別にあるもう一つの”夢”という無限の世界に頼って生きることの楽しみを見出すことが人として腐らず生き残っていくための処世術のような気がしてならず、私の実際の現実からの逃避行をこの「夢の本」に書き記しました。

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お陰様で、この自身の10年間の夢日記の一部を纏めた「夢の本」(2017年)といういかれたミニコミは、とうとう4版となりました。読んでくださった皆さまのおかげです。本当にありがとうございます。
気づいたら在庫がなくなっており、本屋さんからの注文もたまっていたのでなけなしの貯金から500冊追加で発注してきました。

毎回、同人誌の印刷を頼む時は一生在庫を背負う覚悟で発注します。それは自分自身を賭ける博打のようでもあり、同人誌をつくる一人一人の生活がかかった切実な戦いです。
こんないい歳して、ボロ布のような服を着てネコ餌のような食事をし、生活を犠牲にしてまで本作りごっこに熱をあげるなという世間の声が聞こえてくるような気がしますが(ただの幻聴)、一度やってしまうともう作らなかった頃の世界に戻れないというのが同人誌という世界だったのでした。
アイディア、構成、話を考えること、描くこと、装丁、金の計算、委託の依頼、全部ができる同人誌作りは本当に面白いです。貯金を全部印刷費に投げて、売り上げが回収できるまで心臓を痛めて唸ったりしていますが、実はあれも自らすすんでやってのことです。

それでもやっぱり、今回の増産にはいくらか不安がありました。いくら何でも、知らない他人の夢が延々と描いてある本なんてもうこれ以上は売れない。この本にしては頑張った方だ、もう限界だろう。趣味とは言えど、自分の家に何百冊も在庫を抱えるのはいやだ…今絶版にすべきなんじゃないか?
そう自問自答を続け、3日ほど布団の中で天井を凝視しながら考え込み、どうにか自分を諦めさせようとしたところで、私はあることに気づいたのでした。

《無名の私がこの本を絶版にしたところで、言葉通りこの本がこの世から絶えるだけだ。私が書いた筆跡も、あの机に向かった時間も、夢を記録することしか楽しみが無かったあのひどい時期も、この世に一切を残さず泡のように消えるだけだ。こんなものを描いた人間がいたことも、こんな本を置く本屋があったという不思議な事実も、在ったことも生きたことも。すべて一瞬の時代の地層に挟まれていなくなって、あっという間に忘れられてしまうんだろうな》

そして、私に諦める道はないのだと思ったのでした。そんな再販分が明日届く!

夢の本
https://koyubiya.thebase.in/items/5974756

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