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人類学サロンにて研究発表!〜シルク研究日記#2〜

昨年の秋から大学院でシルクの文化を研究している私ですが、この度Ecological Memes主催の「あいだの探索・実践ラボ」での人類学サロンにて、現時点での研究について発表させていただくことになりました。

<開催概要>
日程:2022年6月23日(木)18:30 - 20:30
会場:オンライン(zoom)
参加費:
・ラボメンバ:無料
・学生・奨学:500円
・一般参加:1000円

大量生産・消費をくりかえす現代のものづくりは、これまでどのように移り変わってきたのか。今後のものづくりにおける「倫理性」とは、一体何なのか。本セッションでは、日本の伝統文化を通してエシカルファッションを発信してきた一般社団法人TSUNAGUの理事であり、現在大学院で蚕糸文化を研究する小澤茉莉と共に、シルクと蚕糸業が近代の科学技術や資本主義と絡まり合ってきた歴史を紐解きながら、人新世時代におけるものづくりと人間の精神性について考えます。

シルクから、大量生産システムとその精神史を考える

大量生産・消費をくりかえす現代のものづくりは、これまでどのように移り変わってきたのか——。近年、SDGsをはじめ「サステナビリティ」や「エシカル」の議論が国内外で盛んであり、なかでも食品や衣類などの大量廃棄問題に注目が集まっていますよね。

その一方で、この問題の背景にある「大量生産システム」はなぜ生まれ、どのように育まれて今日に至ったのか、という議論は少ないように思います。文化人類学の議論でも、「人新世」や「脱人間中心主義」といった概念が注目されていますが、「大量生産システムによって、人間は自然環境を破壊してきた」という文脈が前提として語られていると感じます。

——しかし、このシステム自体を課題設定する前に、長い歴史の中でこの複雑なシステムが生まれた背景を知ることは、未来の「持続可能な」ものづくりを考えるヒントになるのではないか?

そう考えた私は、まず、日本における大量生産システム誕生の鍵である「シルク」の文化、特に幕末から明治時代にかけての蚕糸文化に注目するようになりました。

開国後、海外へシルクを輸出し、たくさんの外貨を獲得してきた日本ですが、特に1872(明治5)年に建設された群馬県の富岡製糸場は、フランス人技術者の協力によって構築された当時の最新型生産システムであり、日本が本格的に生糸を大量生産し始めたきっかけと言えます。

そうしたシステムの存在と同時に、蚕糸文化を捉える上で重要なのは、生産者たちの精神、そしてその変化だと私は考えています。

例えば、日本各地の蚕糸業関連地域で見られる「養蚕信仰」は、蚕の除災や豊作祈願としてだけでなく、蚕と人間の関係性を表しているように思います。

その背景には、「蚕」という生物が神格化されてきた歴史やさまざまなイデオロギーとの絡まり合いがあり、ある意味で養蚕信仰という存在そのものが強化されてきたという側面もあるのですが、詳しくは本セッションでお話したいと思います。

シルクと、ものづくりにおける倫理性

筆者が考えていきたい2つの「エシカル」

さらに、「シルク」を考えることは、今後のものづくりにおける「倫理性」を考えることと表裏一体だと考えています。

これは、蚕という生命ある生き物に対する「倫理」もそうですし、大量の資源を使ってものを作り廃棄するという工業システムに対する「倫理」も含んでいます。

本セッションでは、こうした生命とシステムにおける倫理を再考し、人新世時代におけるものづくりと人間の精神性について考えていこうと思います。

スライド資料が60ページに迫る勢いですが、少しでもシルク、そして日本のものづくりや精神文化に興味を持っていただけるように努めていきたいと思います!ご関心ある方は、下記のリンクから詳細をのぞいてみてくださいね(^^)