見出し画像

福島処理水放出に対するチャイナの反応

チャイナ側が(福島)処理水を政治問題化した件について「日本側が事前協議の配慮に欠いたからチャイナがセンセーショナルに反応している」という日本国内の論は戯れ言です。あり得ません。

日本側が事前協議を丁寧に持ちかけようが、無害エビデンス出そうが、今般のチャイナムーブは不可避です。今回の件は、彼らの内政ロジックから発出されたものです。

えーさて、
その大前提の上で、議論はチャイナの内政ロジックの要因分析になってきます。

中共にしては、非科学的な反応であって日本側に淡々と反証されるのは目に見えているわけで、表面的には'珍しく'合理性を強く欠いたムーブだなと思います(日本国内の感情保守が揶揄する'習近平は常にアホ'論とは全く異なる意味ですが)。 強いて習近平指導部に合理性あった上でのムーブだったという分析上の解を求めるとするならば、「党無謬性の罠」にハマった結果なんぢゃないかとも考えられます。
今回は、習近平指導部も対日プロパガンダ戦上で部が悪い負け戦であるにもかかわらず汚染水汚染水反対反対と対内対外喧伝せねばならない様子で、それを受けた一部チャイナ人民も煽られて食品安全パニックになってる。 そんな悪手なババカードをキリ続けなければならない指導部の意図は、と?

2011年3月、福島第一原発事故とそれに対するチャイナ側胡錦濤指導部下のヒステリック反応(まぁ米欧各国も同じようなもんでもあったが)。
2012年11月、第一期習近平指導部発足。

この胡前指導部がやらかした党組織決定無謬性を現指導部も引き受けているから、ってことは強い論拠のひとつです。習指導部発足後のことは習がレトリックな宣伝テクで方針転換も可能なんですけれども、福島事故関連対応ロジックは前指導部から引き継いだ改竄不能な負の遺産になってます。
それでこの負の遺産の上ではあるのだけれども、無駄にババカードをきるのも意味がないので、いろいろと政治メリットを追加トッピングして、ババのマイナスを減殺しているんじゃないかと思ってます。

以下は、上から順に僕が蓋然性高そうだと考える仮説(自分で考えた今んところの想定。他にもいろいろ考えられるかも)。これら各要素仮説の複合としてのアウトプットでもあるでしょう。

1、前指導部の2011反汚染/抗日正統性踏襲仮説(特に実働部隊としてはDNAを受け継いだ王毅が旗振り役) ※まずは基本線。ロジックとしてありうる。

2、他地域外交展開を進展させる中で、また日米同盟と米中対立のコンテキストから、凋落しつつある日本の「力量」について定点観測をしたい。日本に嫌がらせをして反証/反撃されるリスク(日本の国力が落ちてるので反撃広報されるリスクが低くなったことも要素、そもそも日本はお行儀が良すぎるので報復措置をあまりとらない)をふみつつ、そのリターンとして日本側の政治能力評価データ(反応関数。世界広報能力や政治反応速度)を得ようとする研究イベント化仮説。 ※ロジックとしてありうる。OODAループの一環として日本の能力分析に利用している。

新華社を初めとしたトップメディアの反日ムーブ伝聞占有率も異常に高いともいえない。日本側大衆の反応をみたうえで、彼ら宣伝当局が今後プロパガンダ戦術を変えてくるかもしれないが、いまのところはいわゆる「2016限韓令」のような全面的反日プロパガンダはみえない。局所的にとどまっている(合理性を欠くので局所的にせざるを得ない)。局所的反日プロパガンダにとどめることで、嫌がらせイベント開始と終了のコントロールを確保する(やめるカードをハンドリングできることが重要)。やるにはやるが限定的。それに感化された無知蒙昧な愛国中華キッズ/クズ大衆の反日悪戯ムーブ(迷惑電話含む)は黙認。

3、需要の弱さと不動産業界への官製抑圧に端を発した国内経済不調から大衆人民の目をそらす(指導部への批判をかわすための)ミスリード仮説 「日本の処理水放出に関する一連のチャイナ当局側のヒステリック対応(非科学的批判と理解しながらも大衆人民の反日感情煽る、を含む)は、 チャイナ国内景気低迷ニュース/人民意識を矮小化させるためのプロパガンダを主要因とする」仮説 ※これは最も日本でポピュラーな仮説だけども、若干あてはまりが悪いかな、と。確かに大衆レベルで当局主導の一部センセーショナルな煽り(と愛国キッズの黙認)が確認されるのではあるけれども、冷静に経済分析をしチャイナ景気の悪化を認識する上位層から中位層までと、当局の反日ムーブに煽られて情緒的に動いてしまう低位層のプロパガンダターゲティングにズレがある、から。プロパガンダの実行に無理が生じる。塩をパニック買いするような下層人民は発生する一方で、要はチャイナ経済を回していくような経営者やエリートらは、処理水放出は科学的に問題ない、と十分に理解しているということ。

4、政治的ではなく、科学的にも合理的にも真に「処理水放出は悪だ。日本は取るに足らない敵だ」と考える情緒派勢力が党内でそれなりの数になっている仮説 指導部科学志向かつ中層情緒志向仮説 ※本件は外交政策の小さ目の課題のひとつであって党内でそれほど大きな争点であるわけもなく、党内政治闘争云々ではなく、外交当局に一任であるはず。また指導部も情緒派を抑えられないほど脆弱な権力基盤ではない。十分に党内の抑えは効くし、指導部は科学・合理的に動ける。党はそれなりには合理的なので、この仮説はあてはまりがかなり悪いかな、と。

5、単に全員アホ仮説。 ※指導部も党内も軍もみんなアホ。これは無いでしょ。帰無仮説。

とりあえず、なんでもかんでも「独裁者習はアホだから、こんなことやってる」なんていうのは、チャイナ分析の解像度低いことを棚に上げてるだけ。その言論人自身の、勉強不足の怠慢の免罪符になっているだけ。

まぁ、とにもかくにも、この処理水案件に関しては、今回のプロパガンダ戦は日本側がきっちり勝たせてもらいますんで、チャイナさんもせいぜい頑張ってくだされ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?