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恒大集団ショック?

先日の僕の電波芸(@僕が大好きなアベプラ)について、少なくない反響をいただきました。
「チャイナ当局が無策で放置していたというのは"変"ではないですか?」というご質問がありました。限られた番組の時間内で僕がチャイナの背景事情を表現できてなかったのかな、と思いまして短文で補足noteを書いておきます。

恒大集団の個別企業問題に限らず、
チャイナ当局の国内不動産業界に対する態度は、
「(無策的)放置」といってしまうと誤解が生まれると思いますので、多少厳密にいえば…

1つは、目的:改革開放後しばらく経ってから始まり、現在までに数十年蓄積したいつかは処理せねばならない中華不動産業界の不健全な商習慣と、典型的なバブル資産であり明らかに投機目的で過熱した不動産を段階的に調整することは、(江沢民?~)胡錦涛~習近平指導部ともにいつかはやらねばならない課題でした。

2つめは、タイミング:なぜいまだったのか~内政統治(指導部権力の安定化、党内異論を抑え込める水準まで習派が盤石に)、外交(特に米国内政がグダグダ民主党政権でトリッキーなカードをきってこない、警戒するネオトランプのようなビビッドな外交カードを展開する共和党政権が誕生する前に)、コロナ禍(国際物流や人的交流が疫学的に強制断絶。相対的に対外的活動が減少し各国内政課題を優先的に対処した、という意味で)、等々のタイミングをみて、ついぞ習近平指導部は2020年頃から大鉈になる「損切り」を判断している、という流れです。
特にチャイナの指導部は、その「経済」に関する意思決定について、経済学的合理性で決まるというよりも、内政統治と外交の影響が極めて高いです。DIMEの各要素で経済政策(特に大方針・今回のような大鉈政策は。)が決まっていくので、経済学者泣かせであるとも言えます。指導部の経済政策意図を見抜くには内政・軍事・外交・経済まで見ないと謎政策に思えてしまいます。日本とは異なるレベルの戦略的統合性があります(良い悪いではなく)。
ですので、今回の件、当局の「(無策的)放置」というよりも、あらゆるプロコンを想定した上での「大資本企業でも助けない、という政治意思発出」です。

ただし、
3つめ、問題の根源は人民の価値上昇神話崩壊:当局の、この不動産業界の個別企業・個別産業に対する「損切り」対処は、科学的にそれなりには正しいし、このタイミングを逃せばチャイナの産業経済はさらに歪むことになるので、合理的ではあるんですが、デフレへの警戒(と強い対策)がまだまだ弱い、と僕はみます。不動産業界やその他産業(教育産業・ICT産業)への、政策目的は異なるが結果的に強権大鉈を振るったことで、外資の対中投資減少、信用収縮から経済全体が落ち込み、特に中華人民中間層が数十年信じ続けてきた「不動産価値上昇神話」が崩れている可能性があるので、そこが長期デフレへのスタート地点になってしまうかもしれない。

他にも背景・コンテキストはいろいろあるのですが、簡単にいえば、そんなところです。

いずれにしても、今すぐにチャイナの長期デフレを判断するのは時期尚早なので、今後数か月の経済指標に要注意(そうなったら日本経済にも負の影響を与えるから)、というのが、各所の電波芸で語る僕の論です。
少なくとも日本の感情保守界隈で散見される「チャイナ当局は、阿呆なので、無策に放置。独裁者習近平は裸の王様だから。」みたいなことでは無いです。

モリタク先生と初共演電波芸。 めっちゃ面白い

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