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W杯ドイツ戦を振り返る

水曜の夜は興奮してなかなか寝付けなかった人も多かったんじゃないでしょうか。ドイツへの勝利、本当に嬉しかったですね。僕の予想だった「2-2のドロー」はまあまあポジティブなものだったと思うのですが、それを上回る結果に正直驚いています。これまで森保JAPANのネガティブ要因のように(主にネット界隈で)語られることの多かった南野と浅野が結果を出したことにも目頭が熱くなりました。彼らの良さが出るような使い方を(やっと?)してくれた監督采配は称賛されてしかるべきものだと思います。

ただ、内容は僕の予想をかなり下回るものでした。戦前は「5回戦ったら1回勝てるくらいの実力差」と思ってましたが、あれは「10回戦ったら1回勝てる」くらいですね。その1回をこのタイミングで合わせられたことは素晴らしいし喜ばしいけれども、日本が強くなったわけではないというところはうかれずに認識しておきたいところです。

日本の優秀な分析チームによって、ドイツの弱点をきちんと突いた展開になることを期待していましたが、前半冒頭10分は(ネガティブに想定していた)ハイプレスでショートカウンター一本勝負のみ。10分は機能し、オフサイドだったものの1度はチャンスを作りましたが、ドイツが左サイドを張り出させて3バック気味にしてからは完全にプレスを剥がされ、前線が5トップ気味になったことで日本の4バックが数的不利になり残りの35分は見事なまでにボコボコにされることとなりました。正直一失点で済んだのは奇跡で、PK以外でも2~3点とられ、スペイン戦におけるコスタリカになっていても全然おかしくなかったです。ドイツが、らしくない緩慢なプレーをしてくれたことがありがたくてしょうがなかった。

Abemaで解説をしていたケイスケホンダがここらへんをゲーム中にも的確に指摘していて。日本は酒井を中に入れて伊東を右SBにする5バック気味で対応するべきと何度も提案していました(僕もそのとおりだと思いました)。本来は交代しなくてもそういった変化を付けられるチームでないといけなくて、もたもたしてる間にトドメを刺されなかったのは幸運としか言いようがありません。ドイツの左が前に出てくること自体は日本のハイプレス云々以前にある程度予想されていたことで、そこに対してあまりにも無策だったのは「日本の分析チームの優秀さ」に期待した僕としてはかなりがっかりでした。

また、久保ばかりが酷評されていますが、元々彼はコンビネーションで崩すタイプ。同サイドの長友が全く上がれず、田中もミュラーの対応に苦心し続けたあの状況では彼の特徴を出すことは難しかった。ドイツに対して明らかなアンマッチだったので、HTですぐに交代させた判断は素晴らしかったですね。ただ、彼のクオリティが否定されるものではありません。本来のスタメンである守田が出ていたらまた違ったとも思いますし、別の試合でチャンスを与えてほしいなと思います。

話を戻します。日本の分析チームの優秀さで、ドイツの弱点を突いた対応がなされ、ドイツも混乱するものの流石の対応力で一進一退…といった展開を予想していた自分からすると大きく異なる、落胆しかない前半が終わり、正直なところ諦めていました。このチームは(たしか)先制されてから勝ったことがないし、大胆な修正というような対応も苦手。ケイスケホンダの言うとおり3バック気味にするのが常道だけど、これまで散々試して上手くいった試しがない。運よくてお返しPKをもらって同点といったところかなぁと。

ところがご存じの通り、後半から冨安を入れた3バックは奇跡的に大ハマりしました(これまで何回やっても上手くいかなかったのに…)。本調子ではなかったであろう冨安も板倉も、かなり足止まってはいたもののなんとか踏ん張ってくれましたが、危ないシーンは後半も山ほど。無失点で済んだのはラッキーとしか言いようがありませんし、もちろん遠藤が鬼神の形相で獅子奮迅の活躍をしてくれたことが大きかったのは言うまでもありません。

少し対戦相手のドイツのことも書いておくと、ドイツのスタメンは想定したものとは異なりました。想定よりもベテラン重用といった感じで、ミュラーもギュンドアンもスタメンだったのには驚きましたね。最近の若いチームではなく、安定感のあるベテランを使ってきたのは前回大会の失敗を繰り返さないために慎重さを優先させたんでしょう。前半はその戦術が功を奏し、見事に成熟した素晴らしいチームが形成されました。日本は(最初の10分間以外)手も足も出なかったのが正直なところで。しかし、徐々にそういったベテランのスタミナも切れ、今後のターンオーバーの懸念もあり、メンバーが若返っていくと共に修正力のような部分が下がっていったように見えました。本来であれば、若いメンバーの勢いで圧倒し、ベテランが〆るようなことを予定していたんだろうと思うのですが、それができなかったほどに前回大会のトラウマが重かったんでしょうね。後半、W杯経験のない比較的若い選手が躍動した日本と反比例していったのは皮肉でしかありませんでした。

日本にとってロシアW杯と違ってとても大きいのは、このビッグサプライズを起こしたのがW杯未経験の若手が多いということです。ゴールを決めた堂安、浅野、そこに大きく関与した三笘、南野、板倉、いずれも20代のW杯初出場ばかり。ロシアW杯がベテラン中心だったことで今回は特にオフェンス面で未経験が多いですが、だからこそこうやって勝ったことでの勢いの付き方といった面ではかなり分があります。さらに、今や代表の柱と言っていい絶対的な存在である守田が不在なままドイツに勝てたことは本当に大きい。おそらく次節、万全の状態でプレーしてくれると思うのですが、遠藤と守田が組んで鎌田もいる中盤はどのチームとやっても遜色ないことになると思います。ここは完全に日本のストロングポイント。何度も言いますが、それが揃ってない中でドイツに勝てたのは本当に大きい。

また長くなってすいません。諸手を挙げて喜べる勝利ではなかったですが、もちろん勝ちは勝ち。常々「勝利を最終目的にするべきではない」と言っている僕ですが、勝つことで得るものはもちろん大きい。なによりも、より長く戦える可能性が増え、経験値を重ねることができるわけですから。ここからの試合も気を抜かず、必ずやベスト16に進出して、次への挑戦権を獲得してもらいたいです。

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