はたらく中年ともらえるパン
年明け1月4日、出勤のための電車の乗客はいつもの3割といったところ。
豪快に新聞を広げて立ち読んでいる紳士がいる。もしかするといつもは周りに当たらぬよう折に折り畳んで読む新聞を堂々と車内で広げるというのは、この人の正月明けの楽しみなのかもしれないな、と考えてみたが、床に置かれたカバンが開いていて中に空になったハイボールの缶が入っているのが見えたのでただ気が大きくなってるやつかと思い直す。
年末年始はずっと私の実家にいた。
大学卒業以来会っていなかった友達がやっている焼き鳥屋にいったり、市内のハイキングコースに家族で行ったりした。
友の焼き鳥屋は20年続いていて、こじんまりとアットホームかつすごく繁盛していた。
40代半ば、お客さんからのオーダーをアルバイトと2人であいよあいよとテキパキさばき、時折ゴキュゴキュと水を飲み風呂上がりのような顔をタオルでごしっと拭いて炭火に向かう姿はとても頼もしかった。
あいつは地元で家業を継いだ、あいつは勉強し直して国家資格をとったなど、20代の顔しか思い浮かばない人たちの近況を聞き、皆がんばってるなぁと励まされる気持ちになった。
焼き鳥屋に一緒に行った親友も大学で知り合った人で、昨年会社を辞し今年からフリーランスとなる。
三流総合レジャー大学卒などと自分たちを揶揄することもあるけれど、これだけしっかり働く人々がいるんだ、上等上等。
私も共に働くことを楽しもうと思う。
翌日、家族でハイキングに行くため駅のスーパーで子どもらとお弁当を選んでいたら、知らないおばちゃんに「奥さん、奥さん」と声をかけられた。
「あんな、パンあげるわ。子どもらがものすごかわいいやんか。私子どもに目がないねん。これな、さっきここで買ったやつ。うちの娘が働いてるとこの1番ええやつやし。もろて」とパスコの国産小麦5枚切りを手渡された。
えー!ええのん?そんなん悪いわー
いやっ娘さんパスコで働いてはるん?えぇとこやんかー。すごいやんー
うち子どもらパン大好きやしうれしいわーほんまええのー?あんたらもほら、お礼しいや!
とありがたくパンを受け取った。
おばちゃんは「またパスコのパン買うてな!」と去っていった。
知らない人から突然パンをもらう。
私は初めての経験だったが、似たようなことは割と高頻度でおきている。
これが大阪ですねんマジで。
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