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祖父のハグの話【エッセイ】


金麦とピザでいい気分になりながら、TVerで探偵ナイトスクープを観ました。

昔はやんちゃしてたけど、今は一生懸命なパパから、そういえば自分の両親とハグなんて全然してないなと思ったので、してみたいけど照れくさい!手伝って欲しいです、とのご依頼です。増田アナのあの感じ真似したくなります。
二葉探偵と男性は、男性の両親に会いに行く前に街でたくさんの成人した親子にハグをさせました。みんなとても良い顔してました。男性はみんなの姿に励まされ、両親ととても熱いハグができました。本当によかった。

笑いながら観ていましたが、私には思い当たる節がいくつかありました。この前情緒不安定な母にしたハグ、父方の祖母が亡くなった時、火葬直前に思わず父の背中を支えにいったこと、そして祖父が認知症初期のころ、中1の私に突然抱きついてきたこと。

祖父のハグはあれからずっと特別でした。
十二分に優しく、たくさん甘やかしてくれた祖父ではありましたが、なんとなく少しだけ怖くて、不思議な存在だったので、煙草の距離をいつも保っていました。それは祖父の威厳だったのかもしれません。私が小学校高学年ぐらいから徐々にボケ始めていたので、その距離は、だんだん威厳とは別のものへと変わっていっていたのだと思います。
そしてある日、習い事のついでに週に1,2回は祖父母の家に母と行っていた頃。祖父が私をみるなり泣きながら抱きついてきたのです。まるで何十年も会ってなかったかのような祖父のリアクションと、いつもと違うという恐怖に私は固まってしまいました。そんな私の顔を見てか、祖母と母は「何してるの!!」と私から祖父を引き剥がしました。剥がされた瞬間から、今もずっと、私の後悔は続いています。「別によかったのに。」「なんで嫌そうな顔をしてしまったんだろう。」「抱きしめ返してあげればよかった。」大人になった今、当時の人生経験の乏しさが、悔しくてなりません。
中学2年の6月、祖父は亡くなりました。母に「触ってあげたら?」みたいなことを言われ、遠慮がちに、遠慮がちなくせに、ツルツルピカピカのおでこを触りました。痩せていて骨が近くてひんやりしていました。冷たい玉のようでした。抱きしめられた時の腕の温かさと、ぴちゃりと冷たい玉のおでこ、とてもよく覚えている感触です。

祖父のことはナイトスクープを見なくとも、よく思い出していることですが、それでいうと大好きな祖母と電話はしょっちゅうするくせに、ハグなんてほとんどしたことないなとは、ナイトスクープのおかげで思い出したことです。危なかった。また同じ後悔をするかもしれなかった。今度帰ったらハグしよう。

この後悔、いや、祖父のハグは、私への愛情と一緒に、私が誰かを愛し、自分から抱きしめてあげることを教えてくれたのだと思います。だから、別にたいして仲の良い家族でなくとも、照れを伏せて自ら動けたんだなとも思ったり。もしかしたら祖父に何かを託されていたのかもしれません。老いていく両親をみていると、そんなような気もします。

これからも祖父に教えてもらったことを、忘れないように。失って初めて気づくことを限りなく減らせるように。

探偵ナイトスクープ、いい番組すぎる!

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