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デザインに詰まったら、みたいな話

ここに書かれているのは、私が経験する中で見い出した考え方というだけで何の科学的根拠もない、参考にするのもほどほどにといった内容ですので、読むなら読むで色々と察しつつ心してお読みください

若手デザイナーから、デザインに詰まった際に見るサイトで何か良いのあります? という質問が出ることがあります。

そこに他のデザイナーが何人かいると、dribbble.com等のクールデザイン見本市みたいなサイトや、グッドなデザインを集めたサイトとか、最新デザイントレンド紹介のサイトとか、そういうイケてるデザインが集まっているサイトが例に挙げられたりします。

「デザインに詰まったら」のGoogle検索結果

私はというと、特にサイトを挙げられず「詰まったら他の何かのデザインを見るよりも、そのプロジェクトの要件を深堀りした方が良いんじゃない? 」とか言ってしまい、煙たがられるのがせいぜい。

なぜサイトを挙げられないのか。そもそも私がイケてるデザインばかりを集めたサイトを日常的に見ないし探していないというのはありますが、デザインに詰まっている時ほどそういう所を見たり、他のイケてるデザインを探したりはしないからです。

では、デザインに詰まった際に何を見るのか

先に書いたように、詰まったら要件をさらに深堀りするというのが基本ですが、打開する閃きを求めるために他の何かのデザインを見るとしたら、むしろイケてないデザインの物。

イケてるように見えるデザインって、そのイケてるっぽさを感じる事ができても、かなりの観察力や洞察力、深い知識が無いとその奥にある機能的に良くできた部分、真にイケてる部分にはなかなか気付けません。(イケてるっぽくても真にイケてるわけではない場合も結構あります)

でも、イケてないデザインのイケてなさ、機能的にイケてない事になってるってのは、気付きやすい。とにかく色々引っかかるので。イケてないデザインは、見ているだけで色々な改善のアイデアが浮かんで来ます。ここ、こうしたら良いんじゃない?こう変えたらいいんじゃない?と。

で、イケてないデザインを集めてるサイトって良いのが全然無いので、これと言って挙げるサイトが無いということに。

さて、もうちょっと踏み込んで何でそんな事をするのか。デザインに詰まっているとはどういう事かを書いてみます。

デザインに詰まっているとはどういう事か

デザインは目的を達成するための手段です。デザインに詰まっているというのは、目的を達成するためにどうしたらよいのか考えあぐねているという事になります。

なぜなのか。

まず、目的、達成への障害、取り巻く状況、ユーザー等の関係者のニーズ、環境、状況、そういった物を把握しきれていない。故に、どんなアプローチを取れば良いのか見いだせていないというケースが考えられます

要件を掴み切れていない事になるので、繰り返しになりますが、要件を深堀りした方が良いんじゃない?ってことになります。

次に考えられるのは、要件は掴んでいるが目的を達成するアプローチが思いつかないというケース。

原因として考えられるのは、ザックリ言うと以下の2つ。

1. 技術や知識が足りない
2. 調子が悪い

1の「技術や知識が足りない」についてですが、これは野球のピッチャーでいうと持ち球、球種が少ないみたいな話。シーズン前の準備期間が十分にある状況なら新しい球種を色々試してみて体得するのも良いでしょう。

しかし、練習を積んでおらず実戦で投げた経験も無いフォークボールを、試合直前になってガイドブックやYouTubeで仕入れて、見よう見まねで実戦に投入するのは結構無茶です。いわゆる付け焼刃おっとり刀で駆けつけるようなもの。

2の「調子が悪い」はそのまんま。

今、自身が持っている技術や知識を十分に発揮できない状態なのでは?ということ。実はこの「調子」って見逃されがちなんですが、結構重要。自身の頭を含めた身体(からだ)を仕事をする為の道具と考え、その道具の状態を整えるのはとても大事。

このハサミ、切れないなぁ…と思ったら、他の新しい道具を探すよりもまずハサミの状態を確認して、錆があれば錆を落とし、刃こぼれしていれば砥ぎ、接合部に油を挿した方が良いんでは?って事です。

で?

前半に書いたデザインに詰まった際にイケてるサイトを見るというのは、上で書いた1の 「技術や知識が足りない」の対策として、練習を積んでおらず実戦で投げた経験も無いフォークボールを試合直前になってガイドブックやYouTubeで調べるようなもので、切羽詰まった仕事の現場でやらない方が良いかな、と。それは日常的にトレーニングとしてやってもらいたいところ。

そんで、前半に書いたデザインに詰まった際にイケてないデザインの物を見るというのは、実は2の 「調子が悪い」の対策になっていて、デザインする道具としての自分の身体をスムーズに動くようにするためのアクションになります。(アイデアが出てくるというパーツの滑りを良くするみたいな)

何かを見に行くという点ではどちらも同じように見えますが、前者はアイデアの源泉をもらいに行き後者はアイデアが出てきやすい状態を作りに行くという事になります。

1の 「技術や知識が足りない」の対策は、日々やった方がよいトレーニングの類のものです。色々と仕入れ、実際にやってみて、どんな感じになるのかを知り、更にトライして自身のスキルとして身に付けるというのを、トレーニングとして日常の習慣になるようにしましょう。

ネタを仕入れて技術や知識の幅を広げるのは日常的にいざ切羽詰まったら道具である自身を整えるという考え方です。

プロジェクト進行中にデザインに詰まったら、イケてないデザインの物を見るなど、道具としての自分の身体をスムーズに動くようになる事をしてはどうでしょうか?

(他にもやり方があると思いますので、良かったらご自身の道具としての身体を整えて動きが良くなるベストな状態に持って行くやり方を探してみてください。イケてるデザインを見て動きが良くなるのであればそれもアリです。)

オマケ**

と、これだけだとあんまりなので、詰まって困った時の対処の仕方を他にも。

まず、新しい事を探すのではなく、今、自身が持っている技術や知識を洗い直し、全部試してみる。

脳内シミュレーションで、これやっても駄目だなと選別しちゃって、やらずに他に行くのではなく全部やってみる引き出しの少なさを嘆くよりも、今ある引き出しを使い倒す。あのアレとコレを組合せて考えたら?とか。そうしたらそれもまた引き出しを増やす事になりますし。

で、作ることで自分の外に出したら、それらを並べて他者視点で見比べて良さそうな方向性を探す。

それでもピンと来ず見えて来なければ、そのモヤモヤも書き出して自分の外に出し、これまた他者視点で見直す。

それでも見えて来なければ、書き出したモヤモヤを添えて先輩など他人に見てもらうなど相談する。

脳内シミュレーションって自分で思っている以上に解像度が低く、作ってみたらそこまで考えられていなかったなというのはよくあるのではないでしょうか?

なので脳内シミュレーションで終わらせるのではなく、とにかく自分の外に出し、見直すことで見えてくるものは結構あります。

もしこのやり方をしたことが無いのであれば、これも一度やってみる事をお勧めします。

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