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Climate Techと政府が連携してできること

FoundXの対談の中で、Climate Techと政府の連携はミッシングピースの一つという指摘があったので、両者が連携することで、どのような制度改革が可能か、ざっとたたき台としてメモしておきたいと思います。

1 排出権取引(J-クレジット)市場を個人投資家向けに開放

カリフォルニアでは、個人も投資主体として、排出権取引市場に参加することが可能です。そして、環境団体や気候変動のアクティビストが、企業の気候変動対策を促すために、排出権の取引価格吊り上げを狙って市場に参加したりもしていますし、個人の排出権可視化アプリを提供する会社が、個人が排出権を購入するのを支援するWEBサービスを展開したりもしています。

他方、日本においては、投機マネーの流入を防ぐために、J-クレジットの購入主体は法人に限られており、個人は転売等を目的として購入したり、自ら償却できないようになっています。

この点、気候変動対策への個人としての参加の促進や、排出量の吸収や削減を通じて排出権を創出する企業に対して、更なるインセンティブを付与する観点からも、排出権市場の個人向け開放を検討すべきではないでしょうか。これにより新たな事業機会の創出や、削減排出にも繋げることができると思います。

2 NFTを活用した再エネ配当事業を金商法上の特例扱いとする

アメリカやイギリスでは街の人がお金を出し合って、風力発電施設や太陽光発電施設を建設し、そこから生み出される電力や収益をお金を出した人でシェアするということが多く行われています。

しかしながら、日本においては、これをやるためには、法人を作り、その法人がファンド運営主体としての許可を取得する必要があり、許可の取得には資金要件や、金融業の経験者要件等のハードルがあります。このような背景もあり、コミュニティーソーラー事業は、日本においては、海外のものほど広くは展開されていません。

これに関連して、例えば、配当機能を持たせたNFTを発行して再エネ施設の原資を集め、再エネ施設からの収益をNFTの保有者に還元するという事業も考えられます。しかしながら、日本でこれをやろうとすると、上記の金商法上の規制等がネックになり、上記NFTプロジェクトの発行主体がファンドとしての免許を取得したり、同NFTが二項有価証券に該当しないかの法的検討を行なったりする必要が出てきます。

株式等に投資して資産運用を行うファンドの運用とは異なり、再エネ施設の運用は、適地さえ選んで施設を建設すれば、気象状況の影響はあれど安定的に電力供給が可能です。これは、マクロ経済政策、国際情勢、投機的な資金の動きに価格が左右される株式等の運用とは、質的に異なる部分があります。NFT等の新技術を活用した再エネ事業に取り組みやすい環境をつくるためにも、金商法上の特例の創設や、規制のサンドボックス制度の活用を検討していくべきだと思います。

3 Scope3算定排出量開示の義務化

カリフォルニアでは、先日、Scope3算定排出量の開示義務化の法案が提案され、否決されました。今回は、否決されていますが、サプライチェーン全体での排出量可視化に対する世界的なニーズの高まりを踏まえると、現状の算定報告公表制度を改正して、この分野の開示義務付けにいち早く対応することも検討していくべきだと思います。

日本でも、脱炭素SaaSのスタートアップがこの分野の事業を牽引しています。これらも含めた企業の声を集めつつ、法改正の検討を進めていくことは、長期的には、日本の製造地としての優位性の確保や、Climate Tech領域の新たな事業機会の創出に資すると思います。

4 製品ごとの温室効果ガス排出量の表示義務付け

食品を買うとき、カロリーなどは表示が義務付けられていますが、温室効果ガス排出量の表示は義務付けされていません。

他方、グリーンフィンテックの領域に目を向ければ、決済と連動して、買い物ごとの温室効果ガス排出量の可視化を実現しているスタートアップも多く存在します。これらのスタートアップと連携しながら、製品ごとの排出量計測のガイドラインを定め、製品ごとの排出量の可視化を進め、長年削減が進んでいない、個人由来排出量の削減を進める方法も検討を法制化も視野に進めていくことが重要だと思います。

5 電気自動車所有者向けの個人タクシー免許の要件緩和

副業としてのライドシェアはもっと促進されて良いと思います。また、使う車がエコカーであれば、自動車由来排出量の削減にも繋がります。

ガソリン車は2035年以降禁止される予定ですが、その実現までまだ10年以上あリます。1.5度目標の切迫性や、イギリスでは2030年以降のガソリン車販売禁止を決定していること等を踏まえると、自動車由来排出量の削減はもっと前倒しで検討を進めていくべきだと思います。

例えば、エコカーで通勤を行う個人を対象に、その個人が、通退勤中や休日に副業としてウーバー的な事業を行う場合には、個人タクシー免許の資金要件を満たしたことにする、資金計画の提出を不要とする等、規制緩和を検討しても良いのではないかと思います。

さらに、今まで、職業ドライバーとして働いたことがあるかの要件は不問とすることも検討すべきだと思います。特に、公共交通機関の撤退等が進む地方都市等では、特区の枠組みを活用して、地域限定で規制緩和を行うことも検討しても良いのではないかと思います。

タクシー免許保持者と通常のドライバーの事故率に差異がないという話も聞いたことがあリますし、個人の所得機会の拡充と温室効果ガスの排出削減に資する同分野の検討をもっと進めても良いはずだと思います。

以上、ざっと今考えていることをまとめてみました。これからも、Climate Techの動向について情報を収集し、政策の観点からどのようなタイアップが可能か、検討を深めていきたいと思います。

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