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フォトグラファー。 偽史、フェイクロア、創られた伝統といった背景を持つ場所や存在を、現…

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フォトグラファー。 偽史、フェイクロア、創られた伝統といった背景を持つ場所や存在を、現実と妄想が交差する「特異点」を捉え、アーカイブズ学的な視点で撮影している。

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『平安神宮/平安遷都紀念橖』-近代国家が創造した伝統的モニュメント

偽史、フェイクロア、創られた伝統といった背景を持つ場所や存在を、現実と妄想が交差する「特異点」と捉え撮影する記事。今回は 京都府京都市左京区にある『平安神宮』と『平安遷都紀念橖』を取り上げる。 『平安神宮』とは明治に創建された、平安遷都1100年を記念する神社 『平安神宮』とは、1895年に平安遷都1100年を記念した「平安遷都千百年紀念祭」に際して創建された。祭神は、遷都を行った桓武天皇と、生涯を平安京内で暮らし崩御した孝明天皇である。 『平安神宮』が建つ前の京都市街

    • 『伝説の森 モーゼパーク』-町おこしの資源となった聖者が眠る地

      偽史、フェイクロア、創られた伝統といった背景を持つ場所や存在を、現実と妄想が交差する「特異点」と捉え撮影する記事。今回は石川県羽咋郡宝達志水町河原にある『伝説の森 モーゼパーク』を取り上げる。 『伝説の森 モーゼパーク』とは聖者モーゼが葬られたという伝説が残る場所 『伝説の森 モーゼパーク』とは、古代イスラエルの指導者、モーゼが葬られたとされる宝達山の三ツ子塚古墳群を整備した公園である(入場無料)。 モーゼは神から、奴隷として虐げられていたユダヤ人を、エジプトから脱出し

      • 『太郎稲荷神社』-熱狂的な信仰を集めた名もなき神

        偽史、フェイクロア、創られた伝統といった背景を持つ場所や存在を、現実と妄想が交差する「特異点」と捉え撮影する記事。今回は番外編として、東京都台東区にある『太郎稲荷神社』を取り上げる。 『太郎稲荷神社』とは江戸時代に、病除け・病気平癒の神としてブームとなった神社 『太郎稲荷神社』とは、東京都台東区入谷にある神社。浅草田圃(浅草新吉原にあった水田地帯)にあった、九州・柳川藩立花家の下屋敷の鎮守として、国元から勧請された。 ここは江戸時代、疫病に対する除けや平癒を祈願する場所と

        • 『はりつけ松跡』-創作の悲話が伝承する跡地と地域振興

          偽史、フェイクロア、創られた伝統といった背景を持つ場所や存在を、現実と妄想が交差する「特異点」と捉え撮影する記事。今回は、兵庫県丹波篠山市にある『はりつけ松跡』を取り上げる。 『はりつけ松跡』とは明智光秀の母親が殺された場所 『はりつけ松跡』とは、戦国武将・明智光秀の母親、牧が殺害されたという場所。兵庫県丹波篠山市の高城山の山中にある。ここは、室町~戦国時代にかけて築かれた「八上城」が存在した場所で、波多野氏が本拠地としていた。 波多野氏の降伏条件として人質となったお牧

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        『平安神宮/平安遷都紀念橖』-近代国家が創造した伝統的モニュメント

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          『円満山少菩提寺四至封疆之絵図』-まちづくりの核となった偽の絵図

          偽史、フェイクロア、創られた伝統といった背景を持つ場所や存在を、現実と妄想が交差する「特異点」と捉え撮影する記事。今回は、滋賀県湖南市にある『円満山少菩提寺四至封疆之絵図』を取り上げる。 『円満山少菩提寺四至封疆之絵図』とは中世にあった少菩提寺の姿を描いた絵図 『円満山少菩提寺四至封疆之絵図』とは、室町時代、近江国甲賀郡菩提寺村(現在の滋賀県湖南市菩提寺)にあった少菩提寺とその周辺を描いた絵図である。 少菩提寺とは、菩提寺村にそびえる菩提寺山にあった山岳寺院で、中世に栄

          『円満山少菩提寺四至封疆之絵図』-まちづくりの核となった偽の絵図

          『伝王仁墓』-偽文書が紡いだ伝承と日韓交流

          偽史、フェイクロア、創られた伝統といった背景を持つ場所や存在を、現実と妄想が交差する「特異点」と捉え撮影する記事。今回は、大阪府枚方市にある『伝王仁墓』を取り上げる。 『伝王仁墓』について王仁とは 王仁(わに)とは、4世紀末から5世紀初め、応神天皇の時代に朝鮮半島の百済から、日本へ『論語』や『千字文』をもたらしたとされる人物。『古事記』『日本書紀』『続日本紀』といった史記に、王仁に関する記述はあるが実在したかは疑問視されている。加えて、『千字文』は4世紀には存在しないとさ

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          『伝 阿弖流為 母禮之塚』-由緒不詳の首塚に生まれた虚構の伝承

          偽史、フェイクロア、創られた伝統といった背景を持つ場所や存在を、現実と妄想が交差する「特異点」と捉え撮影する記事。今回は、大阪府枚方市にある『伝 阿弖流為 母禮之塚』(通称アテルイの首塚)を取り上げる。 阿弖流為(アテルイ)と母禮(モレ)アテルイとは、8世紀末から9世紀初頭に、陸奥国胆沢(現在の岩手県奥州市)で活動した蝦夷(えみし)の族長である。モレとは、アテルイと同時期に蝦夷の族長の一人であったとみられている。 蝦夷とは、本州東部や以北に居住し、政治的・文化的に、大和朝廷

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          『継体天皇樟葉宮跡伝承地』 -創作された伝承地という特異点

          『継体天皇樟葉宮跡伝承地』とは『継体天皇樟葉宮跡伝承地』とは、大阪府枚方市にある交野天神社の境内にある、末社貴船神社が鎮座する小丘周辺のことを指す。ここは、継体天皇が即位した樟葉宮跡の伝承地として、大阪府指定史跡にもなっている。以下は、枚方市ホームページの引用である(2024/1/18現在)。 交野天神社について 交野天神社は、京阪電車「樟葉駅」から徒歩20分程度の距離にある神社である。閑静な住宅街の中に突如現れる原生林に覆われた境内一画は、そのコントラストからどこか非

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          「創られた伝統」として見る初詣

          「日本の伝統」の正体2023年末、興味深い書籍に出会った。藤井青銅氏の著書、『「日本の伝統」の正体』である。この本によると、我々が伝統だと認識している日本の文化の中には、意外と新しい時代に創られた伝統があるようだ。 その中で目を引いたのが、「初詣」という文化が確立されたのは、明治時代以降であること。 初詣以前は何だったのか 初詣には、その起源となる「年籠り」、「初縁日」、「恵方詣り」といった「初詣に似た伝統」が江戸時代以前からあった。 鉄道の開通とその宣伝・集客広告

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