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実務経験年数(日数)にこだわらず、実力ある介護従事者には受験資格を与える制度があっても良いと思う

本記事は一部ざっくりと説明するに留めているので、詳しくは資格系のサイトを参照いただくとともに、間違いがあればご指摘いただければ幸いです。


■ 受験資格としての「実務経験」


介護の仕事において、介護福祉士やケアマネージャーなどの資格取得を目指している方々は多いと思う。資格はスキルアップかつキャリアップとして分かりやすい道筋だろう。

介護未経験かつ無資格の場合、介護職員初任者研修を修了→実務者研修を修了→介護福祉士→ケアマネージャーという流れとなる。(いきなり実務者研修でも可)

無資格からケアマネージャーの資格を取得するまでには、最短でも8年間は必要になると言われている。なぜかと言うと、介護福祉士とケアマネージャーの受験資格には実務経験が必要だからだ。具体的には、介護福祉士は実務経験3年(540日以上)、ケアマネージャーは実務経験5年(900日以上)を要する。

ここで注意が必要なのは、ケアマネージャーは介護福祉士の資格を有してから5年であり、それ以前の実務経験はカウントされない。

なお、医療福祉系の実務経験や取得済みの資格によっては、上記の資格取得までの受講内容の一部が免除されることもある。


■ なぜ実務経験は必要なのか?


今年は法人内で資格取得を促進するため、旧ヘルパー2級や無資格の新人職員から意欲的な者を選抜し、事業所で受講費を負担して実務者研修を受講する取り組みをした。

まだ全員が修了していないので受講した感想などはこれからだが、すでに3年以上の実務経験を有している者もいるので、来年は介護福祉士を目指すように支援していく予定だ。

このような取り組みもあって、改めて介護福祉士やケアマネージャーの受験資格を眺めているうちに、ふと「なぜ3年とか5年の実務経験が必要なのか?」という疑問が湧いた。

まぁ、これらの難関な資格を受験するからには、それなりのキャリアがあってしかるべしという意味なのは頭では理解できる。
また、高齢者という人生の相手に対して質の高い介護やケアプランを作成するとなると、色々な経験を積んでおく必要はあるだろう。

しかし、実務経験が必要な理由や、介護福祉士は3年以上、そしてケアマネージャーは介護福祉士を取得後から5年以上という実務経験の年数の根拠を探してみたが未だに見つけることはできていない。
(このあたりをご存知の方がいれば、無知な私に是非ご教授願います)


■ 実務経験の穴


そもそも、実務経験の年数に対しは別な疑問がある。

介護福祉士は3年以上として540日以上、ケアマネージャーは介護福祉士の取得後5年以上として900日以上となっており、それを実務経験証明書をもって証明する。

少し前にこれを書いていて思ったことは「へ~、勤務"日数"でいいんだ」ということである。勤務時間ではなく勤務日数でいいのだ。

何を言いたいのかと言うと、その日介護業務にかかった時間が8時間だろうが1時間だろうが、介護業務に従事したら1日としてカウントで良いという話になる。
1日8時間勤務した者と、1日1時間勤務した者では、介護福祉士を受験するにあたり同じ3年間(540日以上)の実務経験と見なせるのだろうか?

もちろん、時間はあくまでも量であり質ではない。8時間ダラダラ勤務している者と、1時間みっちり自己学習も踏まえて高齢者介護に従事した者では、当然ながら後者のほうが質は高いと言える。

いずれにせよ、「あなたは介護福祉士を受験する資格があるのか?」と問われるにあたって「1日1時間で計540日間の実務があります」という人と「1日8時間で計540日間の実務があります」と言うのとでは、後者のほうが受験資格があるように思える。

しかし、それでも1日は1日だ。このように、日数だけで受験資格とするのは客観的な評価と言えない「穴」ではないかと思う。


■ 超高齢化社会に向かっているのに悠長すぎる


介護福祉士もケアマネージャーも受験者および合格者は毎年一定数いるようだが、そこまで辿り着くのに最短でも8年というのは長すぎると思う。

こう言っては何だが、介護従事したのが20~30歳台でもない限り、8年も経てば肉体も理解力も衰えてしまう。また、その間に社会も変わるし、下手したら介護業界を離れてしまう人だっているかもしれない。

質の高い介護人材の育成という観点から8年というのが妥当かどうかは分からないが、超高齢化社会に向かっているのに悠長すぎではないか?

確かに、1人の高齢者に対して質の高い介護を提供できるようになることや、人生の一部となるケアプランを作成できるほどのスキルを確立するには時間もかかるし基礎学力も経験も必要なのは分かる。

しかし、教育だって年々進化している。有料ではあるがオンライン学習やセミナーだって充実しているし、動画配信などを活用して独学でスキルを伸ばせる時代だ。

実践に勝る修行はないと言うが、実務経験3年とか5年とか言うのは、まるで「現場での経験がすべて」と言っているようで時代錯誤のように思える。


■ 資格取得後に全く勉強しなくても国家資格?


そもそも資格取得の重要なことは、資格を活用することである。
それは資格をとったことを自慢するという意味ではなく、資格を取得したことによって新しいキャリアを踏み出したり、資格取得の過程で得られた知識や経験を現場で活かすことにある。

しかし、資格を取得した後に勉強しなくなる介護従事者は多い。

10年前に介護福祉士を取得して何も勉強してこなかったベテラン介護士と、介護福祉士を今年取得した若手の介護士とでは、後者のほうが優秀だとハッキリ言える。
前者は資格取得をした時点の法制度などの知識はあるが、現行の知識がほとんどないことに呆れることすらある。

馬鹿にするつもりはないが、このような実態からも現場での実務経験が長いことに、どこまで価値があるのかと首を傾げてしまう。

ぜひ、介護福祉士やケアマネージャーの資格を保有しているならば、今の自分がその資格を持っていると胸を張って言えるかを確認してほしい。

ケアマネージャーは更新制とは言え、せめて年1回はテキストを購入して問題が解けるかを確認することを推奨する。それもまた実務経験であり、自身の質の維持・向上にもつながる。


■ 実務経験の定義を見直してはどうか?


ここまで受験資格と実務経験への疑問について考察してきた。

その提案というほどでもないが、受験資格の年数を短縮化する制度もあって良いのではないかと思う。
実際、実務経験(勤務日数)が少なくても人一倍勉強して知識を有していたり、積極的に介助を行って技術を高めている介護従事者はいる。何なら、自己研鑽をしないベテラン介護士を追い抜いている若手もいる。

そのような人たちこそチャンスを与えてほしい。義務教育のように年齢と学級を上げるのではなく、何から知らの試験によって実力があると分かれば飛び級で介護福祉士やケアマネージャーを受験できても良いはずだ。

あまり受験資格たる実務経験が長いと、途中で資格取得のモチベーションが下がってしまいかねない。また、上記でもお伝えしたように、せっかく実力のある介護従事者なのに、下手したら介護業界を離れてしまう可能性だってある。

国も資格取得を啓発するならば、資格のあり方そのものをアップデートする時期ではないだろうか?


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。


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