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とくお組第8回公演 マンモス(2006年9月29日)

□登場人物

フタバスズキ 篠崎友
トリケラ 北川仁
ティラノ 堀田尋史
ステゴ 鈴木規史
タイムパトロールまもる 徳尾浩司
タイムパトロールまさる 岡野勇

□設定

・ 時代背景
2010年ぐらいに核戦争などで世界はすべてが崩壊し、そこから2000年あまり経った東京。原始時代のような大自然に戻っている。

・ 基本舞台
舞台は“洞窟内部”。狩人になりきれない男たちが集められた合宿施設としての洞窟である。上手に外へ繋がる出口が一つあり、正面には大小3本のハシゴが掛かっている。そのハシゴの先は、穴に通じていて部屋になっている。部屋の中は見えなくて良い。下手の壁にタイムホールがあり、使わないときは隠れている。スクリーンが床に閉じてあり普段は床と同化している。映像を使うシーンはスクリーンを起こして使用する。壁は適度に湿っている。岩と泥の間の質感が好ましい。

・ 人間関係
トリケラ(北川)は、他のフタバ(篠崎)、ティラノ(堀田)、ステゴ(鈴木)のことを遠い過去(原始時代)の人間だと思っている。フタバはエース狩人としてこの合宿施設に講師として招かれる。理論家であるティラノ、工作や絵画が得意なステゴ、過去からやってきたトリケラは狩りを学ぶ立場にある。プテラノはタイム法の取り締まりをするために追ってやってくるが、誰が過去からやってきた人間か分かっていない。プテラノは時折、プラキオに指示を仰いでいる。一方でトリケラはプテラノがタイムパトロールの人間であることに気づく。

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第一場 戦争の終わり

西暦2010年。見知らぬ国Aと見知らぬ国Bとの間で核戦争が勃発しており、核を持たないA国は敗戦が濃厚。A国の国王(北川)は洞窟に逃げこみ、側近の3人(A篠崎、B鈴木、C堀田で、顔にはそれぞれお面を被っている)とともに、カメラの前で全面降伏を宣言する場面である。

○爆撃音が定期的に流れている
●明転

Cはカメラを回している。国王は舞台中央に座り、国民に終戦宣言を行うところである。AとBは国王の両端に立っている。二人とも刀を腰につけている。国王は台詞の途中から謝罪の涙を流す。

C、「3、2、1・・・」と指で合図をする。

国王 え・・・。12時を回りました。・・・アレキ・サンドロメダです。突然のことで申し訳ないんですが、今回、私の方から国民の皆様にいくつか謝りたいことがありますので、聞いていただきたいと思います。1点目は、意外にも敵は強かったということです。これはわが国の調査において、当初、敵は核を持っていないとの認識だったのですが、結果から言えば、しっかり持っていたという、誤算。これにより、都心部にお住まいの皆様には多大な被害が発生してしまったことを、まずは素直に謝りたいと思います。・・・2点目は、この戦争が激化していく中で、私だけ安全な場所に疎開したことです。・・・命が惜しかったのでしょう。・・・命が惜しかった。

このあたりからアレキサンドロメダ、号泣しはじめる。

ここは緑豊かな自然に囲まれ、空気のおいしい村でした。この村に来て、私は、自分らしさ、・・・らしい自分を取り戻せた気がします。ところがこの地も日に日に空爆の頻度が増え、今では一歩も外に出られない状況になってしまいました。・・・・・・すみません、すぐに戻って、また指揮を執ろうと思って、・・・勝利に導こうと・・・(思って)いたのですが・・・ほんとうに格好・・格好・・・格好悪い・・・すみません・・・すみません。・・・(泣き止んで毅然とし)ごめんなさい。・・・今までわが国の勝利を信じ、戦ってくれた国民の皆様、本当にごめんなさい。国民に告ぐ。わが国は本日を以って全面降伏し、戦争の終結を宣言する。戦争の終結を宣言する。以上。

○連続してひどい空爆
●空爆によって光が途絶えたりする(?)
■舞台が揺れ(揺れているように見え)、岩が少し崩れ落ちたり砂のようなもの
が穴から出てきたりする。国王、驚きその場で立ち上がる。

国王 ああああ・・・とりあえず、ここを逃げよう。

Cはカメラをしまい、AとBは先陣を切って逃げようとするがBが先に戻ってくる。敵がたくさんいる、ダメダメ!というマイム。

国王 なになに、なんでなんで。出ろよ。

○銃撃10連発
A、銃撃を食らう。間一髪セーフで戻ってくる。C、出迎えてあげる。

国王 わわわわ危ないな!!降伏してるんだから白旗あげろよ、白旗、白旗あるでしょ!?

A、B、C、一瞬相談して、Cのカバンに白旗が入っていることに気づく。穴の中に置かれたカバンの中を探し始める。

国王 (外に向かって)全面降伏ですよ!!全面降、全面!!

○銃撃5連発

国王 あ・あ・あ・あ・あ!!!
(外に向かって)当たってたまるかバカヤロウ!!

B、C、フランスの国旗を持ってくる。

国王 待て待て待て!!これじゃなにかわかんないだろうが、真っ白いのがあるだろう、真っ白いのが!!

B、C、国王に謝ってカバンに戻る。A、なぜか外にすごい勢いではけて行く。

国王 おい待て、どうした!?・・・どうした!?

○ドーン

A あああーー!!
国王 なにしてんのーー!!?

○銃撃3連発

国王 ちょやめ、ちょっとやめ!!!
やめろーー!!!!

○銃撃3連発

BとC、フランスの国旗を折って、白の部分だけを見せる。

国王 だ、ちっせーって、ばか!!!もっとおま、大きいのがあんだろって!!
おい、待てって!!待てって!!!

Bは国旗を持って出て行く。
○ドーン

B あああーー!!
国王 ほらああ、もうう!!!
(Cに)いいから動くな、動くなよ!!?

国王、白旗を見つけに下手側へ移動する。

○連続してひどい空爆
●空爆によって光が途絶えたりする(?)
■舞台が揺れ(揺れているように見え)、岩が少し崩れ落ちたり砂のようなもの
が穴から出てきたりする。白旗が出てくる。

国王 ああああ、ほら、あるじゃないかよ、ちょっと待て、お前盾になれ、
盾に!!待てって!!待てよおい!!こら!!

C、国王よりも先に洞窟を出て行く。
○銃撃5連発

C あああーー!!
国王 だから待てって!!降参!!降参!!!

国王、白旗を掲げながら出て行こうとする。
○銃弾3連発

国王 降参だって言ってんだろうが!!降参だよ、降参!!うわああ!!

○連続してひどい空爆
●空爆によって光が途絶えたりする(?)
■舞台が揺れ(揺れているように見え)、岩が少し崩れ落ちたり砂のようなもの
が穴から出てきたりする。タイムホールをふさいでいた岩がポロリと落ちる。

○ボワン(タイムホールが開く音)
●タイムホールの中から光。

国王 ・・・・・・え?

国王、タイムホールに近づく。

国王 ・・・・・・やだ、なにこれ。見たことあるよ?え、こっち行ったら物語が始まるんでしょ。こっち行ったら物語終わっちゃうよね・・・。そんなの小学生でも分かるよ?

国王、タイムホールに入ろうか、外に出ようか迷ってうろちょろする。

○連続してひどい空爆
●空爆によって光が途絶えたりする(?)
○オープニングテーマ

国王 ああああ、わかったわかった。わかったよ!!

国王、タイムホールに入っていく。
●徐々に暗転
北川、床のスクリーンを上げてからはける。
□オープニング映像

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第二場 狩りのできない男たち


西暦4010年。TOUKYOU。タイムホールは岩でフタがされている。
フタバ、スクリーンを黒板代わりにして講義をしている。黒板にはマンモスの絵が描かれている。生徒はティラノ、ステゴ、トリケラである。石版を持ってノートを取っている。

○マンモスの足音が定期的に小さく聞こえている。ドン・・・ドン・・・ドン・・・。
●明転

フタバ だ、なんって言ったらいいんだろうな。結局どれだけ、ガッといけるかってことだと思うんだよね。なんっつーか、自分の中であがってくるこう、エモーショナルな感じっていうのを、思いっきりバーンとぶつけた後、(どうなるかっていう)
ティラノ ごめんごめん、・・・だからそのガッていうのが具体的にどういうことなのかっていう(のを知りたくて)
フタバ いや、具体的にとかじゃなくて、ガッていうのはさ、見て分かるでしょ?その(ガッと同じしぐさ)・・・ガッ・・・敵に向かうハート?
ティラノ だからそのハートっていうのが、結局のところ、どういう風に成功に結びつくのかっていう分析を・・・
フタバ ちがうちがう、
ティラノ 知りたいんであって、
フタバ ちがうちがう、そんな難しい話じゃなくて、やれよって。やってみろよって話なわけ。そりゃお前らちょっと賢いのかもしんない。でも石版と木炭でごちょごちょやったとこで倒せるのかっていったらでき(てないわけでしょ?)
ティラノ いや、僕らそういうことを言ってる(んじゃなくて)
フタバ 聞けって。言い訳するまえにさ、自分の欠点直していこうよ。おれはそれでできてるんだからさ。そこを習いたいわけじゃん。君らはぐずぐず言ってるだけで何にもできてないわけでしょ?だったらもう動いてみろよって。それだけ、おれからすれば。
ステゴ ごめんなさい。ちょっと。
フタバ なに。
ステゴ 確かにまあ、敵が現れたときに躊躇するっていうのは危険だと思うし、思い切って向かっていくのはそりゃ、僕らも基本だと思うんですよ。
フタバ だからまずそれをやれよって。
ステゴ いや、その基本があったとしても、その先のテクニックとか、どうやって
フタバ テクニックとかないって、気持ちがあったら、あとは刺すだけ。
|ティラノ ほらほら
|ステゴ そこそこ、その刺す動作とかがあるわけじゃないですか。そこで相手がそこでどうやって切り返してくるとかぁ、
ティラノ そうそう。
フタバ いや、それは・・・経験でしょ?(マンモスを刺す動作をする)
|ティラノいやいや
|ステゴ いやいや
ティラノ そのテクニック的な部分を、詳しく教えてもらわないといくら命があって(も足りないっていうか。)
フタバ 違う違う、違うって。
ステゴ やっぱココ(腕)が違うんだって。
フタバ 聞けよ。・・・テクニックを教えたらできるのかっていったらそうじゃないでしょ?まず気持ちが足りないって言ってるんだからさ。
ティラノ あの、正直・・・僕らは気持ちじゃなくてテクニックだと思ってて・・・
フタバ 違う(って)
ティラノ 違わないって。フタバくんは、自分の使ってるテクニックを分析できてないだけだと思うんだよ。
ステゴ 気持ちで倒してると思い込んでる。
ティラノ そうそう。
フタバ 気持ちだよ。気持ちがなかったら倒せるわけないだろ!?・・・ちょっとぐずぐず言うのもいい加減にしてくんないかな!??
ステゴ まあまあまあ・・・。
ティラノ まあまあまあ・・・。

ティラノとステゴ、フタバを落ち着かせる。

ティラノ まあ・・・全然できてないのに反抗して申し訳ないけど。
フタバ ・・・君らさ、自分たちがどんだけ格好悪いか分かってんの?悔しくないのかよ、女子に馬鹿にされてさ。女子に馬鹿にされてんだぞ、お前ら。

ティラノとステゴ、黙り込む。

ティラノ 悔しいっていうか、まあ、そうだろうなって感じはするけど。
フタバ それさ、悔しいって思わないとだめなんじゃないの?だから変われないんじゃないの?
ティラノ ・・・精神論ですか。
フタバ ああ!?
ティラノ いや、あの、僕らは、その僕らなりのマンモスの狩り方があると思ってるんですよ。その気持ちとかじゃなくて。逆に気持ちゼロで勝てるような(方法を・・・)
フタバ 甘いって、甘いって甘いって甘いって!!!

フタバ、スクリーンを床に倒して伏せる。

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