無題

すべてが情報になる。The Perfect Cosmos

皆さん、こんにちは。久保家です。

久保家のリビングにはホワイトボードがありまして、毎朝、そこに夫が考えたことを描いて、朝ごはんを食べながら夫婦でディスカッションをしているのですが、その内容をコンテンツとしてまとめてみようというのが、今回の試みです。

本日のテーマは「宇宙を支配するものによる時代区分」です。いま、ケヴィン・ケリーの「TECHNIUM テクノロジーはどこへ向かうのか?」を読んでいるのですが、これは難しい本ですね。無学な夫の頭では、なかなか理解できそうないのですが、ぶつかり稽古だと思って格闘しています。

ちなみに、タイトルの「すべてが情報になる」は、森博嗣さん「すべてがFになる」のパロディです(笑)ミステリーの名作ですので、ぜひ読んでみてください。

○すべてが情報になる

夫はネットワークエンジニアが本業なので、テクノロジー関係の本をよく読みます。この業界にいると必ず登場するのが、2005年に天才レイ・カーツワイルさんが書かれた『The Singularity Is Near:When Humans Transcend Biology』という本です。その本に「宇宙は覚醒する」という言葉が出てくるのですね。

レイ・カーツワイルさんによると、「特異点を迎えた結果、人間の脳という生命身体的起源を持つ知性と、人間が生み出したテクノロジー的起源を持つ知性と宇宙空間に広がる物質とエネルギーに飽和するようになる。知性は、コンピューティングの最適なレベルを提供するために、物質とエネルギーを再構成して、その起源である地球を離れて宇宙へ、外へと向かっていくことで、この状態が実現されることになる。」ということだそうです。

宇宙自体が知性体となり、そのすべてが秩序となり、情報となる。それが情報パターンの進化における最終段階の第6段階であるといい、それが特異点と宇宙の双方にとっての最終的な宿命なのだと。

夫:「・・・。?????????????????????????…」

さっぱりわからん。恐ろしくわからん。わからないことが何かすらわからん。絶望感を味わって、本をそっと閉じました。ごめんなさい。レイ・カーツワイルさん。

とりあえず、「すべてが情報になる」の決めゼリフだけ覚えておこう。
この話題に触れられたら、決めゼリフで相手を混乱させ、そのスキに逃げよう、そう心に決めました(笑)

○生命の本質は、秩序をつくること

ホワイトボードをご覧ください。先日、ケヴィン・ケリーの「TECHNIUM」を読んでいましたら、「宇宙を支配するものによる時代区分」という図が出てきました。これを見て夫は「ビビビッ」ときました。これは決めゼリフの「すべてが情報になる」ではないですか。真意がわかるかどうかは別として、これならイメージしやすい。

この図は、宇宙を支配している力が、ビックバン以降変化していることを表したものです。時間は対数で表示されていますので、表示単位は指数的に大きくなります。時間の発生した初期の数ナノ秒が、今の十億年と同じ長さに
なっていることに注意してください。

ビッグバン直後の宇宙の始まりの時期には、エネルギーが存在を支配していました。その頃には、あるのはエネルギーの放射だけで、宇宙はただの輝きでした。宇宙が拡張して徐々に冷えてくると物質がエネルギーに取って代わりました。物質は塊となって不均一に散らばっていましたが、それが結晶化すると重力が発生し、空間ができ始めました。

そして、生命が発生することで、情報が影響力を発揮し始めました。この生命と呼ばれる情報の過程が、数十億年前に地球の大気を制御し始めました。さらに、いまでは「テクニウム」という、もう一つの情報過程が新たな征服を開始していると言うのですね。「テクニウム」とは、ハードウェアの範疇を超え、ソフトウェアや法律、哲学的概念も含む抽象的な言葉です。より多くのテクノロジーの発明や自己増強を生み出す、生成的な衝動も含むメタフィジカルな概念です。

物質世界の強固な制約が生み出したのは、石、氷、ガス雲といった非常に力学的形態のみでしたが、宇宙が拡張して、同時にポテンシャルエネルギーが増加すると、情報、エクソトロピー、自己組織化といった、新しい非物質的なベクトルが生まれたというわけです。

「エントロピー」という言葉がありますね。荒廃、カオス、無秩序を表す言葉です。エントロピーは、宇宙のあらゆる場所で例外のない唯一の物理法則なのですね。宇宙にあるすべての物は、坂を滑り落ちて、熱平衡と最大エントロピーという究極の「均等さ」に向かっていきます。

例えば、熱いお湯と冷たい水を混ぜると、ぬるくなりますよね。お湯と冷水なら違いはわかりますが、混ざってしまうと「違い」がわからなくなりますよね。これが「カオス」になるということです。差異がわからなくなるのがカオスです。現在社会がカオスというのは、要するに、複雑になりすぎて、差異がわからなくなったからなんですね。みんな同じに見える、のっぺら坊に見える。

エントロピーのせいで、高速に動くものは遅くなるし、秩序は結局カオスになり、どんな差異や個性も固有性を失ってしまいます。このエントロピーの力に逆らって、差異を維持しようということで、自然の光景が生まれます。差異をつくることは、生命の本質です。

生命の場合、最終的にはカオスになる、要するに死んで自然に戻るのですが、生きている間は、分解と合成を繰り返しながら、エントロピーの坂を駆け上がり続けます。これが福岡新一先生の「動的平衡」のモデルです。つまり、生きるとは、秩序をつくることです。

○情報化とは、デジタル化した多様化

エントロピーに対する逆の流れを「エクソトロピー」と呼びます。エクソトロピーは、波動でも粒子でもなく、純粋なエネルギーでも超自然の奇跡でもなく、「情報」によく似た、非物質の流れです。秩序の増加です。

ここで「情報」の登場です。決めゼリフ「すべては情報になる」の情報です。情報とは、(1)ビットの集まり、(2)意味のある信号 という意味があります。ややこしいのですが、エントロピーが上がる際には、ビットが増えて信号が減ります。つまり、「情報」とは差異を作り出すビットの信号になります。

ここが夫の「ビビビッ」ときたポイントです。「情報化」とは、デジタル化した「多様化」のことだったのです。単にビットにするのではなくて、その本質は、差異をつくることにあったのです。確かに、言葉は言葉を生みます。新しいことはビットとして生まれる。「コピペ」ばかりして、文字をつくることをしなかったから、今まで気がつかなかったのですね(笑)

もう一度図を見てください。この数十億年にわたるエクソトロピーは、安定した分子、太陽系、惑星の大気、生命、知性、そしてテクニウムへと増加していきます。それは秩序を持った「情報」の積み重ねとして表現できるのです。

最近のテクノロジーの傾向は「非物質化」です。硬くて重いアトムの世界から、手に触れられないデザイン、柔軟性、イノベーション、スマートさへの転換が進んでいます。テクノロジーが支配的なのは、その出自が人間の知性に由来するからというより、銀河、惑星、生命、知性を存在させることになったのと同じ、「自己組織化」という起源を持っているからなのです。

頭から煙が出てきましたので、本日はここまでとします(笑)
いかがだったでしょうか。皆さん(妻)はどう思われますか。

○本日のおすすめ本

テクニウム――テクノロジーはどこへ向かうのか
ケヴィン・ケリー (著), 服部 桂 (翻訳)
単行本: 456ページ
出版社: みすず書房 (2014/6/20)


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