明日を願うためのゲーム『夏空のモノローグ』

真っ青な空と、白い入道雲。
忙しなく過ぎる通り雨と、その後にかかる小さな虹。
夕暮れに鳴く蝉と、否応なしに浮かんでくる汗。
じっとりと張りつく制服を着て、蜃気楼で揺らぐ風景の中で思う。

「この時が永遠に続けばいい」

そんなことを、誰もが思い描いたあの夏の日。
7月29日。
とある高校のとある科学部が廃部になる日。
最後の活動として行われた真夜中の天体観測。
大きなツリーがそびえ立つ、その広場で。
彼らは、歌を聞く。
まるでクジラが鳴いているような悲しくも優しい歌を。
真っ白な謎のツリーが奏でる歌を。
それをきっかけに、彼らは繰り返す。

7月29日を。

何度でも何度でも。
終わらない夏を、進まない今日を、生き始める。
科学部の活動は続く。
ループし続ける1日の謎を解くために。
青春は7月29日に停滞する。

ループを知っているのは、世界中で彼らだけ。

科学部の部長である、天才。
副部長を務める、心優しい青年。
一途に恋をする、ムードメーカー。
読書を愛する、毒舌少年。
顧問を任される、鷹揚な先生。
1年間分の記憶しか持たない少女。
そして、科学部でも学生でもない謎の青年。

たったの7人だけ。

彼らの活動の結果、
明日が訪れれば、科学部は廃部となる。
今日が続けば、科学部は存続する。

永遠を望んだあの夏が終わってしまう。
それでも、明日を望むんですか?

明日が来ることで、
幸せになれるかもわからないのに。
不幸になると、決まっているかもしれないのに。

それでも、ループを終わらせるんですか?

 

 そんなことを問い掛けてくるゲームが、私の大好きな『夏空のモノローグ』という作品です。

 ジャンルは一言で言ってしまえば、乙女ゲームになります。
 科学部の紅一点となって、部活動を楽しみながら恋をするゲームです。
 でも、私はこのゲームを女性だけに勧めたいわけではありません。性別はいっそどうでもいいです。私は、「明日がいい日だと思えない人」にこのゲームを勧めたいと思っています。

 悲しいこと、辛いことがあった時、「明日なんて来なければいいのに」なんて思ったことはありませんか?
 目の前が真っ暗になるような不幸は、きっと誰の身にだって降りかかります。どうしようもない運命に翻弄されて泣きたくなる時だってあります。

 私がこのゲームを初めて遊んだ時もそうでした。
 就活の真っ最中で、自己分析がなんだ、自己PRがなんだ、面接がなんだ、お祈りメールがなんだとそんな状態で、落ち込むことも、明日が見えなくて辛く感じたこともありました。
 そんな私の背中を押してくれたのが、このゲームでした。

 「明日」というものは、誰しもが毎日向き合わざるを得ないものだと思います。見ない振りばかりはしていられない。どんなに辛くてもまたどんなに楽しくても「明日」はやってくる。

 その「明日」を生き抜くための力をくれるのがこの作品です。

 作品に登場するほとんどの人は、「明日」を望んでいません。7月29日のループが終わってしまえば、不幸が訪れることを知っているからです。自分の居場所であった科学部が廃部になることを知っているからです。
 そんな彼らが明日を望むまでの物語です。
 どこか懐かしい気持ちさえするあの夏。
 蝉の声がして、空が青くて、湿気がうざくて、たまに雨が降って、夕暮れがちょっと奇麗な、ある日。
 そんなどこにでもありそうな夏の1日を、是非体験してほしいです。
 そして、あなたに、「明日はきっといい日だから」という呪文が届けられることを願っています。

★冒頭無料なスマホ版のダウンロードはこちらよりどうぞ
→iPhoneの方はこちら
→Androidの方はこちら

 ちなみにPCからアクセスされてる方はこちらで冒頭が気軽に遊べます! 是非是非。→体験版

作品情報
『夏空のモノローグ』は、2010年7月29日にPS2で発売され、その後PSPに移植、そして2017年5月30日からiPhoneとAndroidで配信が開始されました。スマホ版での追加エピソードもあるので、よければお手持ちのスマホで遊んでいただければと思います。
 冒頭のループが始まる直前までは無料で体験できます。ひとまず雰囲気を味わってもらえると嬉しい限りです。
 続きは全てまとめて2800円になります。

公式による簡易的なストーリーやキャラ説明をお求めの方はこちらへ
公式サイトスマホ版

キャラクターやCGなど詳細情報をお求めの方はこちらへ
公式サイトPSP版


筆者紹介
朝胡(あさひさ Twitter:@asahisa22)
乙女ゲームと日本文学を愛する高身長の女。オトメイトをメインに40本以上の乙女ゲームをクリア済み。日本文学は古今和歌集や平家物語が好き。

この記事が参加している募集

コンテンツ会議

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?