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東京のつらい場所 Part2 新宿

もりたが恋愛絡み・男絡みで手痛い思いをした場所を実際に巡りながら、つらい思い出を振り返っていく企画「東京のつらい場所」。最初に巡る街は新宿。花園神社からラブホ街へと抜けたあと、“飯田橋の彼”とのデートでよく行ったという東京都庁の展望台へ向かいます。
(2017年11月23日収録)

花園神社の思い出

もりた(以下M):花園神社って商売繁盛もあるけど、縁結びの場所じゃん。当時付き合ってた人は「ずっと一緒にいられますように」って願ってたけど、私は普通に「仕事に良縁がありますように」って願ってた記憶がある。

Ryota(以下R):もうそこの時点で思いの齟齬があったってことだ。

M:そう。あれは夜の結構いい時間だったんだよ。23時半とかかな。一緒にお酒飲んで、そのまま「あ、花園神社だ」って言って、寄った記憶があるから。夜はさ、カップルが多くていい感じの雰囲気なんだよなぁ。ほろ酔いな感じで歩いて「いい感じ、楽しい~」ってなって。でも、大体もりたが「いい感じ」って思うときはいい感じじゃないんだけどね。

R:死亡フラグなんだ、「国に帰ったら恋人と結婚するんだ…」的な。

M:そうそう(笑)! 「たぶんあとで喧嘩別れして終わるんだろうなぁ。 みつを」みたいな。

R:「人間だもの」か(笑)! そっかぁ、それはもう基本的に、幸せになれないな。

M:うん、そういう星のもとに生まれてるからね…。あー、酉の市仕様になってる。ここで参拝したんだよ。

R:で、恋人は「長続きしますように」ってお願いして。

M:相手は「また一緒に来れるといいな、と思って」ってはにかみながら言うんだけど、「まぁ、私はなに願ったか言わないけどね」って答えて(笑)。で、自分は、心の中で神様に「これからも努力をして参りますので、どうか仕事の方で良縁がありますように、お力添えいただきたいなと思ってます」って、丁寧なお願いをして帰っていくっていう。

R:まぁ、お願いごとを人に言っちゃう時点で、相手の底が知れるな(笑)。

M:そうそう。

R:なんだか、そいつのこと考えたらすげぇ悲しい気分になっちゃった。すごくピュアじゃないですか。

M:「僕は一緒にいたくて…」っていうから「ふーん」って。…人の心が無さすぎるんだよなぁ、私(笑)。

R:相手は年下だったの?

M:年上か同じくらいかな。でも、2、3個くらいしか変わらなかったと思う。まぁ、誰と来たかはっきり思い出せない時点でお察しって感じだけど。

R:そこはそんなに覚えてないんだ。

M:「誰かと来たなー」っていう。

R:じゃあ、そんなにつらくないんだ。「そんなこともあったな」くらいの。

M:花園神社に関しては完全にそういう思い出、ってだけだよね。

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ラブホテル街に突入

R:で、次はどっちに行くの?

M:こっち、ラブホ街の方でしょ? そしたらこのまま思い出のラブホテル行けるな。…この前、ここは入った。

R:タイムリーだな(笑)。

M:このラブホ街はね、罪深いところがいっぱいあるからね…。この辺はいろんな人といろんなホテル行ってるから、大体入ったことあるんだよなー。

R:制覇してるんだ(笑)。

M:ぼぼ制覇してるはず。

R:あ、新宿能舞台もあるけど…。

M:能舞台は行ってない(笑)。でも、このラブホは行ったことある、ここも来たことあるでしょ…。ここも確実に来たでしょ…。

R:3コンボ決まってるよ(笑)。

M:ここも来たことあるでしょ、そう考えたらほぼ来たことあるな。ここもあるでしょ、そこもあるでしょ、その奥もあるでしょ。ここは来たことない…あ、あるわ。

R:あるんかい! もうこの辺は常連なの?

M:この辺りは私の城だから。

R:城なの(笑)。

M:私の友達で「ラブホとハプニングバーは俺にとってのディズニーランド」って言ってる人がいて、そいつには勝てねぇなと思ったよ(笑)。

R:ははは(笑)。

M:ここはね、同じビルなんだけど2つのラブホに分かれてて、どっちも行ったことあるね〜。

R:(爆笑)。行ったことあるところばっかりじゃん!

M:だから、ほとんど行ってるんだって! 行ってない方が少ないんじゃないかな。…あれ、こっちじゃないか。

R:あ、迷子になってる? 思い出のラブホテルに行けないって、企画倒れ感すごいぞ。もう潰れちゃったとかではないよね?

M:ないない、この前の週末に確認してるから。

R:ロケハン済みかよ(笑)。もりたが迷ったら、俺わかんないんだからね!

M:頑張るからちょっと待って! 確か、この辺なんだよな~。…あ、あそこのホテルはね、アメニティの割にはいいライターをくれる。

R:ラブホ情報がいっぱい入ってくるな(笑)。

M:ラブホのライター集めるの趣味だからさ。

R:そうなの? いっぱい集めてる?

M:いっぱいあるよ。

R:今度見せてよ。そのライター見ながら、ラブホの思い出語ってもらおう。

M:いいよ、「ここはね~、〇〇と行ったんだけど…」って話そう(笑)。

あの時ちゃんと答えていれば

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M:…あ、あった。このホテルだ。ここは行きつけでしたね。ここで、相手に大学の卒業制作を読んでもらって、「前よりすごくよくなった!」って言われたの。「ありがとう、すごく嬉しい!」って言ったら、向こうがぎゅって抱き着いてきたから、「あー、そろそろねんごろな時間ですかね」と思ってたら、お腹ら辺に抱き着いた状態で顔を上げてこっちをパッと見てくるから、「どうしたの?」って聞いたら、「いや、前よりも本当に好きだな、と思って」って言われて…。そこで聞けばよかったんだよね。「それって私のこと? 卒制のこと?」って。でもその時は、下手に聞いて関係がこじれちゃうのがすごく嫌だったから、「そっか、じゃあ、前はそんなに好きじゃなかったんだね」って答えたの。相手には「そんなことないよ、好きだよ」って言われたんだけど、お互い「何のことが好きなのか」を明確に言及しなかったことにより、結局付き合わなかったっていう、思い出の地がこのラブホ。

R:じゃあ、あそこで卒制読んでもらってたの?

M:うん、ホテルの中で。そのあとに「前より好きだなと思って」って言われて…、今思えば「パードゥン?」とか言ってやればよかったよね(笑)。

R:でもまだ、話としてはライトだな。

M:うん、超ライト(笑)!

R:その時、相手は大学の同期とか?

M:友達の友達だった。結局付き合ったりとか、そういうことにはならなかったね。その時にちゃんと気持ちを確かめていれば、何かあったかもしれないけど。…顔がすげぇ好きだったんだよなぁ。

R:やっぱりポイントは顔なんですか(笑)?

M:そんなことはないけど、その人は顔と体つきが本当に好みだったんだよね。で、その当時はその人が割と綾野剛に寄せてたから、「あ、好き!」って。なんだかんだ人は見た目が9割ですから。それで向こうの方からホテルとか誘われたりしたらさ、ねぇ!?

R:そりゃ行っちゃいますよねぇ(笑)! その相手とはどのくらい会ってたの?

M:月1とかかな。

R:その最後が卒業制作見てもらった日なのか。

M:いや、そのあとも何回か会ったよ。

R:そっか。そのあとも会うことはあったけど、関係がどうなるかはあの時の答え方次第だったなって思ってるんだ。

M:あの時に答えてたらちゃんと付き合ってたのかもしれないよね。向こうもずるいからそれを見越して言ってた感じがする。

R:こっちの反応を伺ってたんだ。

M:そうそう。だからあえてそういう、どっちにも取れるような、ぼかした言い方にしたんでしょ。

マルイで待ち合わせ

M:その人との待ち合わせによく使ってたのがマルイだったんだ。夜8時くらいの閉まりそうなマルイで、「今日来てくれるのかな、どうなのかな」ってそわそわしながら待ってた気がする。割と遅刻してくる人だったんだよね。

R:相手に遅刻されるパターン多いなぁ。すっぽかされてるなぁ、もりた。

M:すっぽかされのもりた(笑)。

R:つらいわぁ(笑)。

M:その人は顔も好みだったし、普通に会いたいな、って思って連絡して会ってたから。

R:基本もりたの方から連絡するの?

M:向こうからも場合もあったけど、基本は私からが多かったね。私が先にマルイに着いてて、1階の催事会場で待ってる。相手は新宿三丁目駅から来るんだよね。「今降りた」って連絡だけ先にあるんだけど、「なかなか来ないなぁー」って。「来ないけど、待ってるぞー」って気持ちで、ずっと。

R:なんかそこは普通だね。

M:普通の女子感あった頃だったね。マルイの上の喫煙所で、待ってる間にタバコ吸ってたこともあったな。それ、別件な気もするけど。

R:じゃあ色んな人との思い出が混在してるんだ。

M:新宿は人と会うことが多いから、特定の誰かとの思い出の場所って感じじゃないよね。何度も来てるし、自分が行くところって大体決まってるじゃん。バルト9とか新宿TOHOシネマとかだけど。

R:来る回数が多い分、そんなにつらくないってことか。そう考えるとトラウマレベル最高値の場所が飯田橋って絶妙だな。そんなに待ち合わせで使わないけど、割と開けてもいるし全然住める場所だし。新宿みたいに歓楽街っぽい感じでもないしね。

M:そうだね(笑)。よし、じゃあこのまま、地下道通って都庁に向かおう。

デートの締めに都庁へ

R:展望台は誰と行ったの?

M:飯田橋の彼とよく登ってたんだよね。私も都庁の展望台が元々好きで、バカと煙は高いところが好きと言いますが…。

R:なんか落語のマクラみたいなの始まったけど(笑)。

M:それでいい感じにデートして、登ったね。その人と何回も登ってる。どこか別のところで遊んで、そろそろ帰るっていうちょっと前に、「時間的にいい感じだから、都庁登って、そのあとバイバイしようか」って、よく行った記憶がありますねー。都庁は地下街通って行けるから雨でも濡れなくていいんだよね。割と手軽に遊びに行きやすくて。

R:じゃあいい思い出だったのがつらくなってるパターンだ。

M:そのパターンですよ。でも、今年入ってからも1回か2回は登ってるのかな。母親を連れてってあげて。母は娘にそんなつらい思い出があるとは知らず「すごいねー、東京だねー」みたいに言ってたけど。さぁ着いたよ、都庁。

R:おー、俺、登ったことないからどこから入るのか全然わかんないな。彼氏と行ってたコースから入ってくださいよ。

M:えっとね、この辺で手を繋ぎながらねー。

R:(笑)。

M:冬に行ったときは「寒い! 風冷たい!」みたいなことを言いながら手を繋いでて、でもそれでも冷えてくるじゃん。そしたら私の右手がね、彼の左のポケットにお招きされるわけですよ。

R:あー、BUMP OF CHICKENの「スノースマイル」的な。

M:そういう感じになるわけ。で、向こうが照れ笑いするのに合わせて私も笑うっていう…。いい話かよ…。ほら、展望室の案内が出てきたよ。

R:あの並んでる列、展望台行く人かな?

M:たぶんエレベーターを待ってるんじゃないかな。…めっちゃ並んでる。(看板を見て)今日30分待ちだって。

R:どうする?

M:時間大丈夫だけど。とりあえず並ぶか。

R:前にもりたが来たときはこんな感じではなかった?

M:20分待たされたことないね。今日は観光客多そうだからなぁ。

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飯田橋の彼との思い出

R:じゃあ、列に並んでる間に、飯田橋の彼との一番いい思い出聞こうかな(笑)。

M:えーっと、日常的な話だと、付き合って一週間後くらいに、「あのさぁ、指輪しよっか」って言われて、ポンと指輪買ってもらって、しかもお互い左手の薬指にはめてて。

R:浮かれてるな(笑)。

M:その時まだ19歳だから許して(笑)。いわゆるペアリングで、石もついてなくて、結婚指輪に近い感じのシンプルなリングタイプのやつね。向こうの指輪には私の名前が彫ってあって、私のには向こうの名前が入ってるっていう。それをずっとつけてたんだけど、ある時、彼から「今日さ、ついに『結婚したんですか?』って聞かれちゃって、一瞬、どう答えたらいいかわかんなかったんだよねー」って、ちょっと照れた感じで言われた時に、「あー、私この人のこと、めっちゃ好きだ」って思った気がする。

R:その指輪は、今は…?

M:塩まいてね、ガチャガチャのカプセルの中に封印されていると思う(笑)。

R:えー(笑)。封印されているけど一応ある?

M:実家だけど。

R:塩まいたんだ。

M:清めたほうがいいかなと思って。

R:そこまでに陥った経緯が飯田橋で明らかになるわけだな(笑)。

M:そうだねー。指輪も2つあるから。最初からずっとつけてたのともう一個、「一年経ったからアップデートしますか」って言われて、そっちはもうちょっとペアリングっぽい感じの、ちょっとだけねじれが入ってるような指輪をしてたね。

R:それも塩まいた?

M:二つとも塩まいてガチャガチャに入ってる。

R:当時、彼氏は学生?

M:社会人やってから大学に通い直してた人で、6歳くらい上かな。

R:その飯田橋の彼に対して、今のもりたの気持ちはどんな感じなの?

M:よりを戻せるんなら正直戻したいよね。納得しないで別れちゃったから。好きだったんだよなぁ、

R:好きだったなぁってなってるその気持ちで今から展望台へ近づいてるけど(笑)。どの辺が好きだったの?

M:趣味はすごい合ったよ。考え方も一緒だったし。そこが好きだったんだよなぁ。相手の背が低くてさ、付き合ってる時に、その身長差が気になっちゃって。私、ヒール高い靴が好きなんだけど、履くと相手の身長を越しちゃうから、気を遣って履いてなかったんだよ。健気じゃん私。

R:いい感じで気持ちがふつふつ来てるね(笑)。

M:ふつふつだよー。

R:若干、表情が張り付いた笑顔になってるけど大丈夫?(笑)

M:好きだったんだよねぇ…。いま気になる人とか、昔好きだった人が全員来て、誰とでも結婚できるよって言われたらたぶん、その人と結婚するんじゃないかな。と、思ってしまうくらいには好きだったよ。実際に会ったら違うのかもしれないけど。

展望台に到着! 

M:…着いてしまったよ。

R:大丈夫?

M:全然大丈夫なんだけど…つらさはあるよね(笑)。よっしゃ、夜景見るかー。気合いいれるぞー!

R:(笑)。どこがよく見てた辺り?

M:どっちかな、この辺とか。

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R:あー、きれい。

M:東京だなって感じがする。つらい場所が一望できるね(笑)。ここら辺でよく見てた気がするなぁ。

R:この夜景はヤバいな。

M:超エモくない?

R:エモい。

M:都庁の展望台は意外と知られてないエモいスポットだよ。あ、あそこにあるのはスカイツリーか。飯田橋の彼とよくここに登ってた頃は、スカイツリーがまだできてなかったんだよね。スカイツリーが完成してすぐの時に行ったんだけど、すごい混んでたから「10年後に登ろうね」って約束した。

R:でも、10年後を待たずして別れちゃったんだ。

M:うん、「10年後なんて嘘だったじゃん」って。「じゃあ10年後に連絡すれば会ってくれるの? 会ってくれないでしょ」って思って…。あ、ついでに下の喫煙所でタバコ吸っていい? 喫煙所、人が全然いないんだけど、そこからでもちゃんと夜景が見えるんだよ。

R:(2人で喫煙所に入り)あ、本当だ、結構夜景、きれいに見えるね。

M:懐かしいなー。

悪夢を見た朝は

R:今日は企画の一回目で、新宿を回ったけどどうだった?

M:やっぱり飯田橋の彼は強い。あいつ強すぎ。

R:精神的につらいところあった?

M:あるでしょ…。鉛を抱えてる気分で「うっ」ってなる。「あっ、好き」って。でも、「じゃあ、もう一回付き合うの?」って言われたら、うーん、実際は違うかもしれないけど、良かった思い出は美化されていくじゃん。今だったらもうちょっと色々言えると思うし。あの頃は絶対、あの人に怒れなかったから。時々、彼が「ごめん」とか謝ってくる夢を見るんだけど、そのときも怒れない。自分では夢だってわかってるから、何を言ってもいいはずなのに、顔を見ると言えなくなっちゃう。

R:その夢はよく見るの?

M:この半年位は見てないかな。でも年に一回以上は絶対見る。そのときは「私、いま、本当にしんどいんだな」って思うよ。

R:しんどい時期に、それに引っ張られてつらい夢を見ちゃうんだ。

M:なんでそんな夢見るんだろうと思うけど…。あの人に対しては怒れないんだろうね。東京駅で3時間遅刻したときも怒れなかった。さすがに「寒いし、つらいよ」って文句は言ったけど、それ以上はなかったな。

R:そこで怒れたら何か違ったのかな。

M:違ったかもね。夢の中でも怒ろうとするんだけど怒れないんだよ。相手が「本当にごめん、あのとき誕生日も祝えなかったし」とか泣きながら謝ってくるんだけど、私が傷ついてることは全然わかってないなって感じる。でも怒れなくて、「いいよ」って言っちゃう。夢の中で「あのときのあれってさ…」って切り出しても、相手に「そんなのあったっけ?」って言われるし。「そういうところも本当に好きじゃなかった。嫌いだった。あのとき、ああいうことされて本当に傷ついたし、覚えてないかもしれないけど、この何年もつらかったし、あなたのせいで行けなくなった場所もいっぱいあるし、なんでそんな風にあなたばっかり幸せになるの?」って言いたいんだよ、本当は。夢なんだから、相手がどう思うかとか考えなくてもいいし、私がスッキリするだけだから、言えばいいのに、言えないんだよね。絶対言えない。でも意を決して、文句を言おうとしたり、「夢だってわかってるけど、私は本当に好きだったよ」とか、何かけりをつけようとするところで大体目が覚めるんだけど、まぁダバダバ泣いてるんだよね。泣きながら目覚めて、朝から過呼吸になって。「やっぱり夢だったし、今回も何も言えなかったし、しんどいな」って思いながら朝を迎えて、泣いてるとメイクできないから頑張って泣き止んで、目を冷やして、メイクして、なんでもない顔で会社に行って、「おはようございまーす」って。会社の人に「もりたちゃん、最近どうなの、彼氏とかできた?」とか言われたら、「全然っすねー、早く綾野剛と結婚させてくださいよー」っておどけて見せて、そういうので無駄に心にダメージを食らい、帰ってお酒とか飲んで…。で、またその夢を見たらどうしようって思って寝るのが怖くなるから、不眠の時期に入るっていう。結構ハードだよね、そう考えると。

R:めちゃくちゃハードだなぁ。

M:で、相手にもう一回会ったら終わるかなと思ってたんだよね。そしたら仕事関係のセミナーで、たまたま去年会ったんだよ。そのときは「やっぱりあの人好きじゃないな」って思った。しゃべり方も傲慢だし、「俺はすごい」って考えてる感じとかを見ていると別れて正解だったって思ったんだけど、それも一瞬だったよね。

R:そのときは自分に言い聞かせてみたけど。

M:いや、言い聞かせたっていうか、本当に思ったんだよね。やっぱり、あのまま付き合っても幸せになれなかったって。

R:実際に会うと嫌なところも見えるんだけど、思い出として残ってる部分があまりにも好きだったから…。

M:そう、その場でも会ったのは一瞬だったし。

R:じゃあ本当に、良かったころのイメージの問題なんだな。

M:それを越える何かがあればいいのかもしれないけど、激情にかられるような年齢でも無いしさ。「どうなってもいい!」とかならないし、仕事も大切だし。そこまで来ちゃうと人を好きになることも怖いし。だから付き合っても「きっと別れるんだろうな」って思う。「別れるじゃん、さよならじゃん」って。そう思っちゃう。

R:心配になってくる話だな(笑)。

M:でもさ、生きてるから平気だよ。生きてればどうにでもなる。

R:死にたくはならない?

M:ううん、なる(笑)。

R:(笑)。

M:しょっちゅう死にたくなるけど、でも、死んでもどうにもならないじゃん。生きてればどうにかなるから。意外と強い女だよ(笑)。弱いなりに強いからね、そういう傷を隠すために、また別の傷を作っちゃうんだろうね。

R:虫さされのかゆみを誤魔化すために他の場所をつねるように。

M:それに近いかもしれない。

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傷つく前に、傷ついちゃえ

M:(都庁を離れ、新宿駅へ向かいながら)女子高生短歌で、彼に対する私のスタンスを言い当ててるなって思った短歌があって。「幸せになれるだろうないつかまた会うとき君が不幸だったら」っていう短歌を見て(エリ・著「女子高生短歌!」)、「そういうことなんですよ!」と思った。

R:相手が不幸だったらいいなと思うの?

M:「私がこんなにつらい思いをしてるのに、なんでお前は彼女をつくって、普通に幸せに暮らしてるの!? なんで私だけつらい気持ちにならなきゃいけないの!?」ってすごく思う。でも、他人の不幸を願っているうちは自分も幸せになれないし、それ以上に、やっぱり好きだったから幸せにはなってほしいんだよね。「嫌なやつ!」って思ってたけど、結局嫌いになれないから。だって好きだったんだもん。でもさ、みんな、相手のことを考えずに、勝手に傷つけるじゃん。そういうとき、ちょっとだけ、「だったら私も傷つけてもいいや」って思っちゃったんだよね。

R:「お前らがその気なら私もやるぞ」っていうことか。

M:「私もそっち側の人間として生きてやるよ」って思ったんだけど…。でも結果、勝手に傷つく癖は抜けないからつらいよね。

R:こっちは傷ついてるんだから、傷つける側にも回れないと割に合わねぇってことでしょ?

M:そうそう。でも、人に優しくありたいとは思うんだよね。本当は誰も傷つけたくない。どんなに傷ついたって、それは私の痛みとして全部自分で受け入れるけど、私は人にされて嫌なことはなるべくしたくないって思う。今、結構やっちゃってるけど(笑)。でも、本当は自分の不用意な発言で傷つけるのも嫌だ。

R:「お前らが私を傷つけるなら、こっちもお前らも傷つけてやる」ということで感情のバランスをとる方法もあるけど、それを率先して選びたくないわけだよね。でも、そうなってくると、それ以外の方法で、勝手に傷ついている自分とうまく折り合いをつける納得の仕方が見つかってないって感じかな?

M:だから「傷つく前に、傷ついちゃえ」って思っちゃうんだよ。思わぬところで傷つくから、余計に痛いわけじゃん。紙で手を切ってさ、気付いてないときは痛くないけど、気付いたときってめっちゃ痛いじゃん。人からもらう痛みってそういうもんだと思うんだよ。で、気になっちゃうから余計に触って傷口開いちゃったりもするし。だから、自分の予想外の痛みよりは、コントロールできる範疇で先に傷ついちゃった方が、つらくないんじゃないかって思ってる。

R:ある意味、もりたが傷つきに行ってるのは自己防衛なんだ。自分から予想できる力加減の傷つき方をしておくっていう。

M:そうしてちょっとダウナーに入ってからリカバリーした方が、まだ最終的には傷が浅いかな、みたいな感じ。だから今も自分起因じゃないところでつらいことがいっぱいあるからさ、この企画に乗っかっておいて、多少古傷をさわっておけばいいんじゃない? ってところもある(笑)。体調悪いときでも「風邪ひいた」って思うより「二日酔いなんです、これ!」って考えた方が、「治せる!」って思いこめるじゃん。それぐらいのニュアンスなのかな。

R:あー、なんかすげぇ、もりたが分かった気がする。

M:えー(笑)。こんなんでわかるの?

R:いや、「なんで自分からそんなに傷つきに行くの?」と思ってたけど、それはわかった。自衛なんだね。

M:そうだよ。

R:今日は、なるほどって思うことがいっぱいあったな。いやー…東京はつらい場所ですなぁ。

M:東京はつらい場所だよー。

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R:あー、もうこの辺はクリスマスムードだ。

M:やめてくれよ、今年もシングルベルだよ。

R:シングルヘル。

M:どうせ納期前で死んでるよー。

R:俺は常時ヘルだから。

M:わかる。地獄だよね。そろそろクリスマスディナーとかで過ごす素敵な年がほしいなー。

R:やっぱりそういうこと、やりたい?

M:したくない? 様式美として。

R:まぁねー。

M:でも、別にいいかなー。家でファミチキ食べるから(笑)。


インタビュイー
もりた(Twitter:@minic410)
逆流性胃腸炎気味なのにビールと煙草中毒なOL。
クーチェキでは「情事の後は、必ず金マル。」を連載中。
インディーズ小説「あなたは砂場でマルボロを」「許してよ、ダーリン」がKindleをはじめ各種電子書店にて発売中です。

インタビュアー・記事構成
Ryota(Twitter:@Funatoku_ryota)
クーチェキの企画・運営・編集をやっています。

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