見出し画像

07|出会い


Admired Person | 2019

Title|Admired Person
Date Created | 2019
Art Supplies|木版画
Size| 297 × 210mm

Concept|
雷に打たれたような衝撃が走った。今まで見たどんなものよりもカッコよく、小さな作品でさえも大きなオーラを感じた。自分の中に存在する白黒の概念が覆された。あぁ…こんな人になりたい。

Explanation|
この作品は皆さんが一度は通るであろう木版画で制作した作品です。
ーーーーここから技法の説明です。ーーーーー
木版画とは、木材に彫刻刀と言われる刃物で面を削り、凹凸を作ります。その凹凸にインクのついたローラーでインクを付着させていきます。すると、凸の部分にだけインクが乗り、凹の部分にはなにも乗らないようになります。その上に、インクを吸収しやすい和紙を乗せて、バレンと言われる手のひらサイズの円盤になった板で、和紙の上から圧力をかけながら擦ります。すると、凸の部分のみが、和紙に転写され作品となります。
ーーーーーここまで技法の説明。ーーーーー

この作品を制作する前に、私はある作家の展覧会を見に行っていました。それは、画家、版画家、デザイナーとして19世紀後半〜20世紀前半に活躍した「サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ」と呼ばれる作家の展覧会でした。私はメスキータの作品を見た時衝撃が走りました。なぜならば、数多くの作品があったが、そのほとんどが木版画の作品だったからです。私の中で木版画とは、ぬらりくらり、人間を柔らかく表現するもの、または「もちもちの木」のように角張ったものというイメージでした。しかしメスキータの作品は一線を凌駕していました。木版画で見たことのない細かな線。白黒の表現だからこそ確立された影の使い方。本当に彫刻刀で成し得たことなのか不思議なほど繊細な作品だったのです。ちょうどコロナ期間ということもあり、観覧時間は1時間しかありませんでした。正直私にとって1時間で見ることなど不可能でした。それほどに没頭し、木版画の魅力に取り憑かれたのです。その展覧会を見てからこの作品を制作するまではとても早かったと思います。そう、この作品名 / Admired Personとは、
日本語訳すると、『 憧れの人 』という意味になります。私は正直展覧会を見に行ってもそこまでの衝撃やワクワク感を見出すことなど無いに等しかったのです。そんな中、大学に来た展覧会のチラシ。私は絶対に行きたいと思いました。ちなみにそのチラシもまだ持っています。それほどにも私を魅了したメスキータに私は憧れてしまったのです。その後、メスキータの展覧会の情報は私の耳には入ってきませんでした。今でも見に行きたいと思っているそんな私にとって特別な作家です。そんなメスキータに思いを馳せた作品。そのつぶらな瞳の先。顔面を真っ二つに切断されたような衝撃。その荒々しい彫刻刀の使い方から、私はメスキータとは次元の違いを感じる。そんな自分の葛藤や、憧れから産まれた作品なのです。
話は変わりますが、世の中には様々な作家様がいます。その方々には、本の中や直接出会った方、映像、音楽で出会った方。出会う場面は人それぞれだですが、私はどんな形であろうと出会えたことを深く噛み締める必要があると思います。自分の人生において必要でなくてもその人にとっては必要な要素に自分がなっているかもしれない。それは亡くなった後でも続いていくのです。私はメスキータに出会えたことがきっかけで、人と人との繋がりを重視するようになりました。それはまさしくも運命と呼べるほどの衝撃だったのでしょう。人混みや、ざわついた店内、満員電車。私は大っ嫌いです。それでもそこには自分が大事にしたい人がいるかもしれない。もしかすると違うどこかで出会う人なのかもしれない。そう思うと社会や人に対して少し優しくなれる気がします。まぁ、ただの綺麗事に過ぎないかもしれませんが、生きる上で他人とは絶対的必要な要素になります。1人はみんなの為にみんなは1人のために…という訳ではありませんが、きっと人間はそうやって進化してきたのだと思います。現代ではそう進化する必要はなく、誰かが自分を助けてくれる時代だからこそ、自分を大切にしてくれる人を大切にしたい。という感情に変化しているのだと思います。皆様はそんな生き方を変えてくれるような運命的な出会いはありますか?
きっとその運命は自分1人だけでは出会えていないものだと思いますよ。
私にとっての運命の出会いは『 憧れの人 』それは人でもあり「 作品 」という形でもあったのです。
それでは、また。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?