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歌は人を励まし、慰め、人を繋ぐ ~ミュージカル「SUNNY」を観て

全地よ、主に向かって喜びの叫びをあげよ。
歓声をあげ、喜び歌い、ほめ歌え。
琴に合わせてほめ歌え
琴に合わせ、楽の音に合わせて。
ラッパを吹き、角笛を響かせて
王なる主の御前に喜びの叫びをあげよ。

とどろけ、海とそこに満ちるもの
世界とそこに住むものよ。
潮よ、手を打ち鳴らし
山々よ、共に喜び歌え
主を迎えて。
旧約聖書 詩編98編4‐9節a (新共同訳)

こんにちは、くどちんです。キリスト教主義学校で聖書科教員をしている、牧師です。

ようやく期末考査が終わり、1学期の締めくくりの時期を迎えています。いや、教員にはまだ採点や成績処理の業務が残ってるんですけどね……。ぐぅ。
まあそうは言っても日々の授業は無くなるので少し時間的な融通がきくもので、喜び勇んでこちらのミュージカルを観に行って来ました。

出演している「瀬奈じゅん」さんは私が宝塚歌劇を観るようになってから、一番最初に好きになって応援していた元ジェンヌさん。卒業後もずっとご活躍で、SNSなんかから垣間見えるその生き方もとても素敵で。
今なお「瀬奈じゅん」について語り出すと、「もう私、一生この人のこと好きなんだわ……」と思わず涙ぐむくらい、大好きな俳優さんです。(愛がいちいち重いオタク)

「SUNNY」というこの作品は、2011年の韓国映画がオリジナルです。それが日本で2018年にリメイクされました。
私は海外修学旅行引率中の飛行機内でこの日本版を観て、一人黙ってはらはらと涙をこぼしておりました。(隣に座っていた教員は気付いていて、後で「先生、めっちゃ泣いてましたね……」って言われた(笑))

高校時代を共に過ごした仲良しグループ「サニー」。バラバラになってしまってから20年以上の歳月を経て、メンバーたちはそれぞれ問題を抱えた大人の女性になっています。専業主婦になっていた「サニー」の元メンバーは、かつてのリーダーと再会しますが、その元リーダーの体はすでに末期がんに冒されていました。「死ぬ前にもう一度だけみんなに会いたい」という彼女の願いを実現するため、メンバー探しが始まります。

オリジナルの韓国版はこの高校時代を80年代に設定していて、韓国ならではの民主化運動下の学生たちと絡めたりしながら描いています。
日本版映画はこれを90年代に設定、「安室ちゃん」「ルーズソックス」「コギャル文化」といった表象を使ってポップにリメイクしていました。

日本版から先に観た私。その後韓国版も観て違いを考察したりしながら楽しんでいたのですが、この度なんと日本で世界初のミュージカル化。しかも瀬奈じゅん出演! 観ないわけにはいかなかったのです。

今回のミュージカルでは、日本版映画ともまた違ったアレンジがされており、高校時代は80年代の設定。「聖子ちゃんカット」「ロングスカートのヤンキーセーラー服」などに、それがうまく表されていました。

この作品は「青春当時のポップス音楽」を多用することで「あの頃」を思い起こさせ、同世代同士の一体感や、懐かしさ、今は失ってしまったものへの切ない愁いを味わわせるものになっています。
日本版映画の90年代は、私にとってまさにドンピシャ高校時代。だからこそ思わず涙するほど懐かしかったんですね。
そんな私にとってミュージカル版は「リアルタイムで知っている曲、知っている文化」ではなかったのですが、幕間休憩でふと観客席を見渡すと、私より一世代上の方たちが大半を占めていて、みんなきらきらした目で「懐かしいね!」「あの歌が好きだったわ~」などと語り合っておられる様子でした。
「ああ、やっぱり歌というのはこうやって人の心をぐっと引き寄せる、引き戻すところがあるんだな~」としみじみ感じ入りました。

冒頭に挙げた聖書箇所は、「詩編」と呼ばれる部分からの引用です。
詩編は今で言う「讃美歌の歌詞集」みたいなもので、詩であり、歌です。そしてやはりその詩句の中には「歌う」ということ、それも「共に歌う」ということが数多く織り込まれています。
何百年も、もっと言えば何千年も、人は歌うことを通して喜びを分かち合い、悲しみを慰め合い、痛みを担い合って来たのだなぁと思います。

私の所属するキリスト教主義学校で言えば、クリスチャンでない生徒さんであっても、讃美歌が思い出の一部となることがあります。
私は自分自身キリスト教主義学校の出身でもありますが、卒業生であるかつての仲間たちは、「SUNNY」同様あの頃よく歌っていた讃美歌を通じて懐かしさや当時の思いを分かち合うことができます。
私が今出会っている生徒さんたちの中にも、いくつかの讃美歌を人生の友として、卒業後にも懐かしく思い出し、口ずさみ、時にそれを励ましや慰めとしてくれる人がいればいいなぁと思います。


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