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失敗は評価されるべき。新しきを作るために。


失敗しないことを求められる問題

世の中の仕事人が悩むことの一つに、「失敗のことを考えると新しいチャレンジができない」というものがあります。
新しい事業を作って!新しい製品を作って!新しい取り組みをして!と上司や組織に求められるんだけど、同時に失敗しないようにかなり検討や承認を繰り返さないと進めることができないというものです。新規事業開発部門とかイノベーション推進部門とか先行デザイン部門とかそういった名称に所属されている方には結構多い悩みじゃないかなと思います。

昨夜、knots-creativeのトークイベントにゲストとして参加してきました。イベントのテーマは「craft communication -  手を動かすことの意味と価値」。

ゲストは私とスマイルズの野崎社長。参加いただいた方との対話を主軸としたイベントでした。スマイルズはご存知の方も多いと思いますが、PASS THE BATON や100本のスプーン、文喫などの新業態を続々と展開しているビジネスクリエイションカンパニーです。現在は分社しましたがSOUP STOCK TOKYOでも有名ですね。

イベントのテーマとは違うのですが、関連性のある話題として失敗についての対話が私には印象的だったので、それについて書いてみます。

来場いただいた方たちとの対話の中で「何か新しいチャレンジをしようとしても、手を動かして作る前の許可を得たりするプロセスで心が折れてしまう」という話があって、ずっと色々な企業内である課題感だなぁと思いました。それは単純化すると「失敗に対する価値観の違い」から起こるコミュニケーション問題だと考えています。

失敗したらお金が無駄になるじゃないか。失敗したら誰が責任とるの?失敗しない保証はあるの?新しいことを始めるための承認プロセスではよく聞く言葉でしょう。
こういった会話からわかるように、ほとんどのシーンで失敗はマイナスとしか見られていないんですね。
そんな失敗や挑戦に対しての個人的なキャリアリスクが大きい環境ではほとんどの人が挑戦できなくなるのは当然です。誰もが失敗して怒られたり、詰められてりするの嫌なので。


最前列からの風景(平松葉月さん撮影)

昨夜一緒に登壇した野崎さんと私が同意見だったのが、やってはいけないことと考えられている「失敗」を、価値あるもの、評価されるものと位置付けることで、新しいチャレンジや可能性を開くことができるという考え方でした。

私は、さまざまなクライアントと一緒に日々「新しいこと」に挑戦し、デザイン案を作ったり、プロトタイプを作ったりしてますが、正直全てがうまくいくわけではありません。むしろ結構失敗もしています。クライアント内で反発にあって先に進まないこともあれば、試作品が期待された水準まで作り上げられなかったり、作って販売したり公開したものの、ユーザーに満足してもらえない場合もあります。これらの失敗は試行錯誤の結果であり意味のある成果物なので、単純に失敗をダメとするカルチャーに対しての私の意見はプロジェクトを始める前にしっかりとお話しするようにしています。

成功の保証は無理

まず成功を保証しないこと。うまくいくかどうかは保証できません、それでも承諾いただけるのであれば協力させていただくという旨をしっかりお伝えします。
何か新しいことをやるというのはうまくいくための手順が全くわからないわけです。もちろん絶対にやるべきではないこととか、明らかに良い手法などは部分的に過去の経験から利用できる引き出しはたくさんあるのですが、諸条件が全く同じでもない限り成功は保証できませんし、プロジェクト期間内でどこまで辿り着くのかも全くわかりません。もちろん、すでにある製品ジャンルでプロダクトデザインをするだけなどであればお約束しやすいことも多いし、失敗確率はかなり低いですが、今日で全く新しいチャレンジ要素が入っていない新製品デザインプロジェクトというのはかなり少ないと思います。結果的にたくさんチャレンジをして失敗して失敗からの学びを修正してデザインを研ぎ澄ませていくという方法にせざるを得ません。そんな見立てのプロジェクトに成功なんて絶対保証できないわけです。もちろん成功までの努力は精一杯しますが、それで失敗確率がどのくらい下がるかなんて断言するのは予知能力者でもない限り無理だと考えています。

失敗は前進であり、コストを払うべき対象である

一方で成功の保証はできませんが、失敗をたくさんやることは約束できます。失敗というのは漢字で敗けると書くのが良くないなと思うのですが、負けじゃないんですよね。むしろ「うまくいかないやり方の発見」であり「敗ける戦術の発見」であるわけです。こうしたら市場での勝負に敗けるというセオリーを知れることはすごく価値がありますよね。失敗だらけのプロジェクトをやったからこそ、次のチャレンジの成功確率が格段に上がっていくわけです。それは充分にコストを払う価値のある行為であって、プロジェクトが全体的に失敗が多かったとしても、その失敗には予算やフィーを払う価値があるのです。もちろんうまくいかなかった要因の振り返りは大切です。その振り返りは次期の取り組みを計画する大きな指針となり得ます。

失敗は成功するまで続ければ失敗じゃなくなる

世の中の研究開発全てがそうだと思うのですが、あの素材とあの素材を混ぜてみる、うまくいかない、じゃあこれを混ぜてみよう、さらにあの加工とこの加工を試してみよう…といった感じで無数の試行を積み上げています。そしてそれぞれの試行が失敗するからこそ次の試行をする、この失敗の積み重ねを成功するまで続けることこそが研究であり、開発であり、これはビジネスでもデザインでもキャリアでも一緒です。もちろん失敗を続けるためには時間やお金の制限はあるので、その中でいかに成功と呼べる状態まで持っていくかが勝負ではありますが、どんなにうまくいった過去事例でも必ず失敗はしているはずなので、イノベーションや新規事業をマネジメントする組織や経営陣、上司は、一度や二度の失敗を叱責せず、大失敗の確率を減らせたという捉え方をできるようになることで新しいチャレンジの成功確率が上げていけるというロジックが成り立つでしょう

確実な失敗は一つ

注意すべき例外もあります。失敗は失敗じゃないとは言いつつも、確実にプロジェクトを止めに入るべき失敗というのはあります。前述したお金や時間の問題で続けられないという場合ももちろんありますが、最も致命的な失敗は「やる気のない人のアサイン」です。やる気がある人、気持ちが入っていて執着がある人が続ける失敗は意味のある失敗になり得ますが、やらされているだけ、しょうがなくやっている、成功しようという気概が薄い人がリーダーになっている場合の失敗は、成功確率を上げられるような失敗にならないことが多いです。なので、ここの塩梅は客観的に見て「普通に考えてちゃんと考えてないな」くらいの余程のレベルだと思うので、この場合は失敗を肯定せずに厳しく方針転換を促すべきでしょう。

失敗は必ずするものだと考えて手を動かせ

昨夜のイベントで野崎さんがお話ししていて面白かったのが「やるか、やらないか」じゃない、うちは「やるか、やるか」なんです、という話。テレアポ100件はしんどいけど、テレアポ一件は楽でしょ?やらない理由を少なくしてとにかくやる。KPIや目標値を下げまくってでもやるようにしたら、物事は動き出す。そもそもやらないという選択肢はない。失敗している人と何もしてない人だったら失敗してる人を評価する、というお話にはすごく共感と納得しました。失敗も動いた成果と考えれば答えの出ない会議をずっと続けるループも無くなるし、とりあえずしょぼくてもいいから手を動かしてなんらかの叩き台を作り続るというのは必ずプロジェクトを前に進めます。失敗は必ずするものだと考えて手を動かせというのが昨夜のイベントで出た一つの総意かもしれません。

Craft Communication

昨夜のイベントの題にもなった、クラフトコミュニケーションというのは「手を動かして何かを作りながら議論や企画を進めていく」という意味を込めて、事前の食事会の時に提案させてもらった言葉です。拙くても、しょぼくても、叩き台を作っては失敗や成功を一緒に仕事する仲間に見せていく、そんな仕事の進め方がいいよねと思っているからです。新しい物事をデザインするために、とにかく手を動かそう!そしてそこで生まれたさまざまな失敗はナイストライとして評価しよう!という価値観が広まるといろんなところで、今よりももっと新しいチャレンジに挑戦できる人が増えるかもしれません。


失敗の話ばっかしましたがもちろん成功と評価いただいた仕事もたくさんしています!
常時プロジェクトの相談お待ちしております!

そして、このnoteのヘッダーにしたグラレコはknots creativeのタカタさん作です!当日のエッセンスが詰まっています。


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